伊方原発 安心などどこにもない - 東京新聞(2017年7月22日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017072202000164.html
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四国電力伊方原発の運転差し止めを求める住民の訴えを、松山地裁も退けた。「不合理な点はない」という。だが現地を歩いてみればすぐ分かる。避難経路が見つからない。安心が見当たらない。
地震国日本に、原発が安住できる場所はない。中でも、伊方原発は特別な場所に立っている。
全国で展開される原発の差し止め訴訟。住民側が共通して抱く疑問は、地震の揺れの過小評価、避難の難しさ、地元同意の範囲の狭さ−の三点だ。
伊方原発は、三点すべてが特別なのだ。
発生が最も心配されている南海トラフ巨大地震の想定震源域にあり、わずか八キロ北を日本最大級の断層である中央構造線が走っている。関東から九州に至る大断層。昨年の熊本地震との連動も取りざたされた。
重大事故が起こった場合、スムーズな避難は極めて困難だ。
伊方原発は日本一細長い佐田岬半島の東の付け根に立っている。
陸路で県都松山市側に向かおうとすれば、事故を起こした原発の直前を通ることになる。放射線被ばくの恐れを押して−。
半島を横断する唯一の幹線国道は、地滑りの危険地帯を走っている。地震によって寸断される恐れも強い。半島の西で暮らす人の多くは海路で九州へ渡る以外に、文字通り道がない。海が荒れれば船も出せない。
風向き次第で放射能も海を渡ることになる。周辺自治体のみならず、海を隔てた大分、山口、広島の住民が、差し止め訴訟を起こしているのはそのためだ。
それでも三月の広島地裁に続いて今回も、「地震の揺れは過小評価されていない」「避難計画は合理的」「従って安全は十分確保されている」−と訴えた電力側の主張をうのみにしたかのように、松山地裁は、規制基準や四電の安全対策に「不合理な点はない」と、住民側の不安を退けた。
島崎邦彦・前原子力規制委員長代理が提起した「計算上、地震の揺れは過小評価されている」という問題も、まだ決着を見ていない。どこが、どうして、安全だと言えるのか。
おしなべて原発再稼働に前のめりな司法に対し、原告や支持者の間から「福島をもう忘れたか」という声が上がっていた。
何度でも繰り返す。福島の教訓を忘れたままで、原発を動かすべきではない。原発事故は二度と繰り返されるべきではない。