(いま読む日本国憲法)(18)女性の地位向上目指す - 東京新聞(2016年7月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016072102000211.html
http://megalodon.jp/2016-0722-0905-07/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016072102000211.html


結婚の自由や、夫婦の平等を定めた条文です。
憲法下では、厳格な家制度や男尊女卑思想があり、相思相愛でも親の許しがなければ結婚できなかったり、「男性は外で働き、女性は家を守る」といった性差による役割分担を押しつけられたりしました。
憲法は一三条で個人の尊重、一四条で法の下の平等を定めていますが、旧憲法下への反省から、特に二四条で結婚や家族について定めたわけです。
この条文を起草したのは米国人女性ベアテ・シロタ・ゴードンさん。少女時代を日本で過ごし、慣習を熟知していた人で、新憲法で日本女性の地位向上を図ろうとしたのです。
ちなみに、二四条を巡っては、婚姻が「両性」の合意のみに基づくという表現から、同性婚を認めていないという説があります。しかし、この条文はあくまで結婚の自由を定めたものであり、すべての人が自分らしく生きられる社会をつくる憲法の理念に照らしても、同性婚は禁じていないという解釈も有力です。
一方、自民党改憲草案は「家族は、互いに助け合わなければならない」という義務規定を追加しました。聞き心地の良い言葉ですが、本来、多様でいいはずの家族のあり方について、国家が枠をはめようとしているようにも映ります。
草案のQ&Aは「昨今、家族の絆が薄くなっていることに鑑みて」この項を新設したと説明。「家族の形について国が介入しようとするものではない」などと強調しています。しかし、家族の助け合い義務を根拠に、国が担うべき介護や困窮者支援などへの公的扶助を家族に押しつけることにならないかと、疑問視する声も出ています。


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「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文についての解説を随時掲載しています。天皇生前退位を巡る最近の動きを受けて二条と五条を取り上げましたが、元の順番に戻ります。

読むための日本国憲法

読むための日本国憲法

自民党改憲草案の関連表記
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。