里親制度 担い手のサポートを - 東京新聞(2016年6月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060902000139.html
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親と一緒に暮らせない子を家庭に迎える里親制度は広がるのか。改正児童福祉法は子どもが施設での集団生活ではなく、一人一人が家庭の中で育てられることを求めている。担い手を支えたい。
先の国会で成立した改正児童福祉法は、親と一緒に暮らせない子どもが、家庭と同じような環境で育てられることを求めている。これまでは、乳児院児童養護施設に預けられることが大半だったが、これからは里親などへの委託を優先する。とくに就学前の場合は原則として「家庭養育」にすると明記された。
戦後から続く施設収容を中心にした児童福祉政策の転換といえるが、背景には増え続ける虐待がある。親の暴力や育児放棄にあった子どもは心身の発達に問題を抱える場合が少なくない。集団で生活する施設では一人一人の問題に目を向けることは難しい。小さい子の場合は、とくに愛着形成のためにも家庭で育つことが望ましいという考え方もある。
改正法では、実親との法的関係を残して親になる里親だけでなく、実親との関係を戸籍上抹消する特別養子縁組についても広がるよう制度改正に取り組むとした。
問題は里親をどう増やすかにある。原則十八歳まで養育する里親は現在、児童相談所の面接などを経て全国に約一万人が登録。児相から委託された約五千四百人を育てているが、担い手は経済力のある夫婦などに限られている。
以前は専業主婦に限られていた里親になる条件は、いまは主流になった共働き夫婦も認められるようになった。もっと担い手を増やすには、育休制度の幅広い適用も求められるだろう。
里親には事前研修だけでなく事後の支援が大切になる。子どもは生い立ちに問題を抱え、家庭に迎えた後に子育てに悩むことが少なくない。児童相談所には里親への相談業務が加わったが、専任職員を置いて専門的アドバイスを得られるようにしたい。
どの子も基本的に家庭的な環境で育てられるのが一般的な欧米と違い、日本は里親に預けられる子の割合が15%しかない。
政府は保護の必要な子の受け皿として、里親、小規模のグループホーム、施設で三分の一ずつとして、里親委託率を十数年後に三割とする目標を掲げる。もっと加速させられないか。NPOなどと協力しながら里親への委託率を上げている静岡市や福岡市などにも学び、担い手のすそ野を広げたい。