もんじゅの延命にこだわるな - 日本経済新聞(2016年5月31日)

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO02991410R30C16A5EA1000/
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高速増殖炉もんじゅの開発の進め方を検討していた文部科学省有識者会合が報告をまとめた。いまは日本原子力研究開発機構が運営しているが、ずさんな安全管理が続き、原子力規制委員会が運営主体の見直しを勧告していた。
有識者会合の報告は具体的な運営主体を示さず、産業界や学界など外部の専門家が経営に参加するなど、新組織の要件を示すにとどまった。もんじゅの存続を前提とした内容である。
もんじゅで問われているのは運営主体の問題だけではない。そもそも高速増殖炉は日本にとって必要なのか。長期的な研究開発をどう進め、もんじゅをどう位置づけるかである。残念ながら有識者会合ではそうした議論は聞けなかった。
報告を受け馳浩文科相は「速やかに新組織を決める」と述べた。いまいちど、もんじゅの存廃まで立ち返って判断すべきだ。その際、他省庁や産業界など幅広い層の意見を聞くことも求めたい。
高速増殖炉は発電しながらプルトニウムなどを増やすことができ、計画当初は「夢の原子炉」とされた。だがいまは状況が大きく変わり、将来展望を欠いている。
ひとつは実用化が見通せないことだ。もんじゅは1995年に事故を起こして以降、本格的に稼働していない。炉の冷却にナトリウムを使う技術は難しいうえ、建設費も通常の原発より高くなる。
電力自由化が進み、電力会社同士の競争が厳しくなるなか、もんじゅの後を継ぐ実用的な炉を誰が建設するかも不透明だ。
日本は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを国内外で48トン持ち、海外からは核兵器の原料になるとの懸念がある。まずはプルトニウムを通常の原発で燃やす計画が着実に進むよう、政府と電力会社が全力をあげるべきだ。
フランスなどは高速増殖炉の実用化を急がず、研究開発に地道に取り組んでいる。日本ももんじゅの延命にとらわれず、長期的な研究計画を立て直すときだ。