もんじゅ もう廃炉にしてあげて - 東京新聞(2016年6月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060402000179.html
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高速増殖原型炉「もんじゅ」をどうするか。原子力規制委員会の勧告を受けた文部科学省の検討会は、受け皿を示せなかった。かつての「夢の原子炉」を、もうこれ以上、野ざらしにすべきでない。

もんじゅは悲劇の原子炉だ。
通常の原発の使用済み燃料からウランとプルトニウムを抽出し、燃料として再利用できるだけではない。さらにその燃料が理論上、消費すればするほど増殖、すなわち増える。もんじゅはこのような核燃料サイクルの要、資源小国日本にとって、まさに夢の原子炉と、もてはやされた。
もんじゅは通常の軽水炉とは違い、冷却水の代わりにナトリウムを使う。空気に触れると激しく燃える難しい物質だ。
一九九五年暮れ、発電開始からわずか四カ月足らずで、深刻なナトリウム漏れ事故が発生した。
その際当時の運営主体の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が、事故が小さく見えるように編集した現場のビデオを公開するなど、隠蔽(いんぺい)工作が次々明らかになり、激しい批判にさらされた。
信用失墜の動燃は核燃料サイクル開発機構に改組した。さらに二〇〇五年、今の日本原子力研究開発機構になった。ところがそのずさん体質、隠蔽体質は一向に改善されず、一二年には一万点近くの機器で点検漏れが見つかった。
原子力規制委員会は昨秋、不祥事を繰り返す機構には「運転を任せるべきではない」と、文科相に異例の勧告を行った。
もんじゅの燃料を抽出する青森県六ケ所村の再処理工場もトラブル続き、米国家安全保障会議(NSC)は日本の再処理事業に対する懸念を隠さない。核燃料サイクルは、すでに破綻を来している。
初臨界から二十二年、もんじゅは延べ二百数十日しか動いていない。それでも、年に二百億円もの維持費がかかる。
電力業界は運営に難色を示しており、文科省の検討会も受け皿を示せていない。人間のうそとずさんが、かつての夢の原子炉を、引き取り手のない、金食い虫の厄介者におとしめた。
実証炉に至る以前の原型炉、もんじゅは立派に役目を終えた。もう、廃炉にしてあげたい。“科学の夢”をこれ以上、さらしものにすべきでない。
廃炉には長い年月と新たな技術開発が必要だ。研究施設としては貴重な存在になる。
地元の雇用はそこで維持できるはずである。