読者から1000万円 本紙「新貧乏物語」登場の佐藤さんら感謝 - 東京新聞(2016年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016052402000127.html
http://megalodon.jp/2016-0524-0916-55/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016052402000127.html

現代の貧困や格差と向き合うため連載中の「新貧乏物語」に対し、読者から現金一千万円が届き、本紙は二十三日、困窮家庭の子ども支援に取り組む公益財団法人「あすのば」(東京都港区)に全額を寄付した。現金の差出人名は「平等」となっていた。小河光治(おがわこうじ)代表理事(51)と、連載に実名で登場した佐藤寛太さん(23)は「思ってもない支援にびっくりした」と驚きながら、「困窮家庭の子どもが自立していくための後押しにしたい」と今後の活動に役立てる考えを語った。 
佐藤さんは、奨学金が多額の借金となり、若者らの負担になっている現状を描いた連載の第一弾「悲しき奨学金」に登場。自身も約一千万円の返還を背負う境遇で、「社会に出るスタートラインは平等であってほしかった」と心境を吐露した。
今回の寄付について「最初は信じられない思いだったが、新聞を通じ、ちゃんと若者の現実や思いを受け止めてくれた人がいるのだと感じ、本当にうれしかった」と感謝。読者からの反響は自身の会員制交流サイト「フェイスブック」などを通じてもあったといい、「経済事情で進学を断念した人からも励ましの言葉をもらった」と笑顔を見せた。
幼くして父親を亡くし、現在は「あすのば」で募金活動などに参加する佐藤さん。多額の寄付に対し「中途半端な使い方はできない」と思いを強くし、使い道について小河さんや他のメンバーらと議論を重ねたという。
結果、寄付の半分を、入学・卒業予定の小中高校生を対象に実施している「あすのば入学・新生活応援給付金」の来春分に活用。残りを「(仮称)被災地子ども応援給付金」として、熊本地震で打撃を受けた貧困家庭に届けることが決まった。
小河さんは「貧困家庭の子どもは、自分だけが貧しく苦しい思いをしているという孤独感にもさいなまれている。寄付を通じ、そんな子たちに、きみのことを思ってくれる人がいるよと伝えたい」と期待を膨らませた。
奨学金問題の深刻化を巡っては、政府が現在、返済不要の給付型を導入する検討を進めている。
佐藤さんは「ごく一部の成績優秀者やエリートを対象とした給付なら、あまり意味がない。本当に困窮する子どもが学び、その力で貧困の連鎖を断てるような制度にしてほしい」と要望した。
小河さんは「給付型には賛成だが、現在返済をしている人への支援強化や有利子貸与を無利子にしていくなどの取り組みも必要だ」と指摘。「高卒で社会に出る若者たちへの就労支援なども含め、若い世代の後押しをバランス良く進めてほしい」と話した。

◆あすのば支援金振込先 (1)郵便振替 00160・1・323820(2)ゆうちょ銀行 記号10150 番号92557901(3)みずほ銀行 赤坂支店(普)2271149。名義はいずれも「一般財団法人あすのば」。あすのばは一般財団法人から公益財団法人に変わったが、振込先名義は現在も「一般財団法人」としている。