被災と子ども 心開ける場をつくろう - 朝日新聞(2016年4月30日)

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いらいらする。黙りこむ。指しゃぶりをする。眠れない。
「また大きな地震が来たらどうしよう」と涙目で訴える。
熊本県を中心に続く地震で、心に傷を受けた子どもたちの様子が報告されている。
大人が災害への対応に追われるなか、子どものストレスは見過ごされがちだ。一人ひとりに目を配り、支える必要がある。
子どもは、気持ちや体験を言葉でうまく伝えられない。しかも反応は一人ひとり違う。
頑張る大人を見て、気持ちを出すのを我慢したり、無理に笑顔を見せたりする子もいる。
まずは安心させ、様子をしっかり見る。話をよく聞き、「大変だったね」「こわかったね」と受けとめる――。
そんな姿勢が、周りの大人には欠かせないと専門家は言う。
大きな災害の後は「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)が心配される。後になって、つらい体験を繰り返し思い出したり、集中できなかったりする。
文部科学省東日本大震災翌年の2012年、被災地の保護者を対象に調べた結果では、幼稚園児の20%、小学生の18%、中学生の12%にPTSDを疑われる症状が見られた。
こうした事態をできるだけ防ぐには、子どもが心を開放でき、ストレスを発散できる時間と場所が重要である。
例えば、国際的な子ども支援団体の一員の「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は、熊本県益城町の避難所5カ所に「こどもひろば」を開設している。
主に四つから14歳の子どもを受け入れ、集まった子どもたちでお絵かきや紙芝居、ボール遊びなど遊び方を決めていく。
子どもの居場所をつくり、同じ世代の子が一緒に遊ぶことを通じて日常を取り戻せるようにするのが狙いだ。
熊本県西原村にある村立にしはら保育園は、子どもたちに園庭を開放している。
避難所になった学校の校庭が駐車場として使われるなか、子どもが思いきり体を動かせる場を、と考えたという。
被災地では連休明けの再開を目指し、準備を進めている学校が多い。学校のスタートは、子どもが日常を取り戻すためにも重要だが、心の傷がすぐに癒えるわけではない。
阪神大震災後の兵庫県教委の調査では、心のケアが必要と判断された小中学生数がピークを迎えたのは震災3年後だった。
保護者や教員だけでなく、地域や支援団体も含め、さまざまな目で子どもを見守り続けることが欠かせない。