児童福祉法改正 子の救済は待ったなし - 東京新聞(2016年3月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016032102000157.html
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児童虐待の急増に対応するため、厚生労働省有識者会議は児童相談所の機能強化を柱とする報告書をまとめた。報告を基に児童福祉法改正案を提出する。子どもを救う体制の強化は待ったなしだ。
目を覆いたくなるような子どもの虐待死事件は後を絶たない。
東京都足立区で、三歳の次男をウサギ飼育用のケージに長期にわたって閉じ込め窒息死させたとして、地裁は今月中旬、両親に実刑判決を言い渡した。
大田区では一月、暴力団員で大柄な男が、交際相手の三歳の長男を一時間半も殴る、蹴る、投げ飛ばすなどの暴行を加え死なせた。
厚労省によると児童虐待件数は増え続けており、二〇一四年度は過去最悪の八万九千件に上った。ここ十五年で件数は七・六倍になっているが、虐待対応の中心となる児童相談所(児相)の児童福祉司の人数は、二・三倍にとどまる。職員の平均受け持ち件数は年間百件を超えるともいわれており、厚労省の担当者でさえ「児相はパンク状態」と認める。
有識者会議の報告書は、児相の負担を軽減するため、児相の業務を子どもの一時保護など深刻な虐待対応に重点化。市区町村に新たな支援拠点を設け、これまで児相が担ってきた虐待通報を受けても一時保護に至らなかった子どもや、施設などから家庭に戻った子どもの支援は、市区町村が行うよう求めた。子育てに関する相談などの業務も自治体に移す。
過去の虐待死事件では、児相が関与していながらその後のフォローがなく、悲劇が防げなかったケースは多い。その反省を踏まえたものだ。
加えて、職員の専門性を高めるため、児童福祉司の研修を義務化することや、一時保護や施設への入所など法的強制力を伴う対応を強化するため、弁護士のサポート体制確立を提起した。
児童福祉司の配置基準を見直し、手厚くすることも盛り込んだ。現行は人口四万〜七万人に一人と、国際的な水準から見ても低い。大幅な拡充が必要だ。
また、現在は都道府県、政令指定都市にのみ設置が義務付けられている児相を、東京二十三区でも設置できるよう認め、設置が進んでいない人口二十万人以上の中核市にも促した。
虐待増加の背景には、貧困の拡大や家庭が地域で孤立化しているなどの問題も指摘される。児相の体制強化とともに社会全体のひずみを是正することも求められる。