男性の育児休暇 国会議員こそ率先して - 毎日新聞(2015年12月26日)

http://mainichi.jp/articles/20151226/ddm/005/070/066000c
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自民党の宮崎謙介衆院議員(34)が育児休暇を取るという。国会には出産休暇についての規則はあるが、育休はなく、男性議員の育休は初めてだ。党内外の重鎮からは批判的な意見が聞かれるが、子育て支援少子化対策は安倍政権の重要政策だ。男性議員の育休を応援したい。
宮崎議員は自民党金子恵美衆院議員(37)と結婚し来年2月に初めての子どもが生まれる予定だ。出産後は妻の金子議員が約3カ月間、宮崎議員が1〜2カ月間の育休を取るという。宮崎議員は本会議の度に欠席届を出すことになる。
「議員は被雇用者と違う。1票によって採決結果が違う時にどう扱うかという問題もある」と苦言を呈するのは谷垣禎一幹事長だ。二階俊博総務会長は「(宮崎議員は)予算委員会に属している。そんなことまで持ち込まないでほしい。みんなに迷惑を掛けないように」と手厳しい。
確かに、育児休業法は同一の雇用主に一定の期間雇用されている労働者について定めた制度である。国会議員は「選挙で国民から選ばれた非常勤」(山口那津男公明党代表)であり、欠席の間は代替が利かない特別な存在だ。不逮捕特権などの権利を与えられ国会議員としての活動を保障されているのもそのためだ。
それでは子どもを産みたいと思っている女性は国会議員になれないのか。小渕優子衆院議員は出産の時に98日間休みを取った。実質的な育児休暇だが、それほど議論にはならなかった。宮崎議員が育休を取らなければ、妻の金子議員がその分も休むのだろうが、母親としての育休は批判されるだろうか。
少子化対策や女性の活躍は今の社会にとって重要な課題だが、出産を機に離職する女性は多く、出生率も改善の兆しがない。男性が育児に参加せず、職場でも子育てしながら働く女性を排除する空気が強いことなどが原因だ。
男性の国会議員には育児を直接体験できる貴重な機会であり、社会の空気を変える効果もあるはずだ。多様な価値観を持った議員の存在は国民にとっても有益ではないか。
地方議会では育休の規則を持つところがあり、男性首長の育休も相次いでいる。海外では国会議員が育児で休む間は上位の落選者が代理議員を務める国もある。現職大臣が半年間育休を取った例もある。日本の国会も何らかの育休ルールが必要だ。
日本の男性の育休取得率は2・3%で、2020年までに13%という政府の目標には遠く及ばない。せっかくの機会だ。育休を取る宮崎議員には自分の子育てにとどまらず、国会議員として男性の育休を社会全体に広げる活動を期待したい。