[男性の育休] トップの意識改革こそ - 沖縄タイムス(2020年3月3日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542047
http://web.archive.org/web/20200303000553/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542047

総務省が全国の自治体に対し、男性職員の育児休業取得率を向上させるよう呼び掛けている。
2020年度までに官民とも13・0%にする政府目標の達成に黄信号がともっているためだ。
政府も子どもが生まれた全ての男性国家公務員が、育児休暇・休業を1カ月以上取得することを目指す方針を決めた。
国家公務員が率先することで、民間を含む国全体の取得率向上につなげる狙いがある。
男性の育児休業が注目されている。
育休は原則として子どもが1歳になるまで。休業中は最初の半年が賃金の67%、以降は50%が雇用保険などから支給される。
しかし18年度の取得率は女性の82・2%に対し、男性は6・16%(国家公務員12・4%、自治体5・6%)と低迷。先進国の中でも低さが目立っている。
国連児童基金ユニセフ)の報告書によると、日本の育休制度は諸外国に比べ充実しており、男性で1位の評価を得ている。ところが実際に取得する父親は非常に少ない。なぜなのか。
言われ続けているのは「職場の深刻な人手不足」「取得しづらい社内の雰囲気」などである。
19年生まれの赤ちゃんの数が、統計開始から初めて90万人を割り込んだという発表は「86万人ショック」と呼ばれている。
男性の育休取得が遅々として進まない現実と少子化の進行は無関係ではない。

■    ■

第1子誕生に伴い「育休」を取得した小泉進次郎環境相が、国会で「全然休みじゃない。子どもを育てる大仕事をやっている」と感想を述べ、話題となった。
現職閣僚では前例のない育休取得に賛否が分かれたが、大臣自らモデルを示したということでは、大きなインパクトと意義があったのではないか。
小泉氏が「職場で男性が育休を取れば、確実に周りに影響する」と語ったように、組織のトップが率先して行動することの波及効果は大きい。
千葉市の取得率が平均を大幅に上回る65・7%なのは、市長自らが取得して「育休は当たり前」との空気を広げたからだ。
知事が2回育休を取った三重県の男性職員の取得率は、全都道府県で最も高くなっている。

■    ■

空気を変えることと同時に取り組んでほしいのは制度の充実である。
男性が育休取得に二の足を踏む理由には、家計の問題もある。賃金の6割ほどの給付金では生活が困難と考える人が少なくないからだ。
政府内では、実質的に休業前の手取り月収とほぼ同額を受け取れるようにする引き上げ案の検討が始まっている。
安倍政権が掲げる「女性が輝く社会の実現」には、男性の家事・育児参加が欠かせない。政策実行のための新たな財源を確保し、経済的支援を強めるべきだ。