死者と生きる未来(高橋源一郎) 戦後70年――私からあなたへ、これからの日本へ - ポリタス(2015年8月18日)

http://politas.jp/features/8/article/452

バスルームの鏡に父が映り、わたしを凝視していたのである。
わたしは、一瞬、恐怖にかられ、叫び出しそうになった。
無視し、忘れようとしたわたしを恨んで、父の亡霊が出現したと思ったのだ。
だが、すぐにわたしは自分の間違いに気づいた。
そこに映っていたのは、父の亡霊などでなくわたしだった。
いつの間にか、わたしの容貌は父と酷似していた。
そのことに、うかつにも、そのときまで、わたしは気づかなかったのだ。

参考)
(戦後70年)ルソン島、伯父さんは逝った 高橋源一郎さん「慰霊の旅」寄稿 - 朝日新聞(2015年7月22日)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20150724#p9