子どもの貧困 ひとり親手当の拡充を - 東京新聞(2015年9月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015090402000136.html
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子どもの貧困対策の一環として、政府がまとめたひとり親家庭支援策は、奨学金や低所得世帯への手当充実を検討することを盛り込んだ。「貧困の連鎖」を断つためにあらゆる手段を講じるべきだ。
子どもの貧困率は上がり続けている。二〇一二年は16・3%。六人に一人が貧困状態にある。ひとり親世帯の貧困率は54・6%。経済協力開発機構OECD)加盟の三十三カ国中、最悪だ。
ひとり親世帯の八割超が母子家庭だ。そのうち八割の世帯が働いているが、パートなど非正規雇用が五割超を占める。ひとり親で子どもがいることが、就労条件などで不利になるためだ。
母子家庭の年間の就労収入は平均百八十一万円にとどまる。手当などを含めた年間の総所得平均でも二百四十三万円。子どものいる世帯全体の四割弱しかない。
まず、子どもの生活を安定的なものにしたい。そのために低所得のひとり親家庭に支給される児童扶養手当の拡充が求められる。
児童扶養手当は親と子の二人世帯で年収百三十万円未満で月額四万二千円支給され、二人目の子がいれば五千円、三人目以降は一人あたり三千円が加算される。特に二人目以降の加算額を増やすべきだとの要望は強い。
政府の支援策は児童扶養手当について「充実を検討する」というにとどめた。財源を確保し、最優先に取り組んでほしい。
また、高校生向けの返済不要の奨学金、大学生向けの無利子奨学金を拡充することも盛り込んだ。
このほか、孤立しがちなひとり親家庭の子どものための「居場所」づくりを打ち出した。
ひとり親家庭の親は夜遅くまで働きづめというケースが少なくない。子どもは家庭で夕食もとれず、行き場を失い夜の町を出歩いたりして犯罪に巻き込まれる懸念もある。食事や学習機会を提供する場を一九年度までに年間延べ五十万人分整備する目標だ。厚生労働省は来年度予算の概算要求に居場所づくりなどの対策費二百二十三億円を計上した。
手本になるのが、東京都豊島区のNPO法人「豊島WAKUWAKUネットワーク」の取り組みだ。一食三百円で夕食を提供する「子ども食堂」などを開いている。
具体策は年末の予算編成で決まる。子どもの可能性の芽を、貧困で摘まないでほしい。経済的に苦しい家庭の子どもの生活下支えは政府の責任で取り組むべきであり、待ったなしの国民的課題だ。