秘密保護法 言わねばならないこと(45)また「数」で押すのか 作家 真山 仁氏 - 東京新聞(2015年7月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2015070302000150.html
http://megalodon.jp/2015-0706-1057-59/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2015070302000150.html

著書「売国」では特定秘密保護法を題材にした。週刊誌で連載し、昨年秋に出版された。法案があんなに早く通るとは思わず、不覚だった。法案に反対するつもりだったのに…。
秘密保護法で味をしめた政権与党は、安全保障関連法案も数の力で押し通すのだろう。国会で圧倒的多数を占めるのだから、民主主義のルールでは仕方がない。ただ、やりたい放題できる仕組みをつくった議員を選んだのは、残念ながら国民。大事なのは、次の選挙の時まで覚えていることだ。
そもそも、法律は必要性があるから作られる。なのに、秘密保護法も安保法案も具体的な必要性が示されないまま、政府が水面下で作り上げてきた。内容も極めてあいまいで、とても法律とはいえない。
安倍晋三首相は米国にいい格好をしたいだけで、実はあまり考えていないのかもしれない。だが、一度できた法律は次の政権や機密を守ろうとする人たちが、いいように使うことができる。非常に危ない。反対の声を上げないといけない。
安保法案が成立すれば、自衛隊が最前線に行かざるを得なくなる。法律という「武器」を持つことで、国際社会に「撃つ」と思わせてしまうのは損だ。近隣諸国との関係も損なう。
自衛隊は災害救助などで国民の信頼を得ている。国際社会でも、そのノウハウこそ生かすべきだ。それなら胸を張れる。けんかに加わる軍隊に生まれ変わるのは身をていして止めたい。
戦争をする気はないのに、巻き込まれても構わないですよ、と自ら手を挙げているような状態。安保法案の国会審議をしっかりウオッチしないといけない。たとえ法律ができたとしても、国民が「あの時の説明と違うじゃないか」と言えるようにするために。
<まやま・じん> 1962年、大阪府生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、2004年「ハゲタカ」でデビュー。代表作に「マグマ」「雨に泣いてる」など。

売国

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