第5部 不戦のとりで<上> 特高のキリスト教弾圧-東京新聞(2013年8月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013082402000163.html
http://megalodon.jp/2013-0825-1217-04/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013082402000163.html

宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に初めてキリスト教を伝えた地とされる、鹿児島県伊集院町(現日置市)で育った。一九三〇年、町で最初のキリスト教会を麦野七右衛門(しちえもん)牧師が開き、踊さんの父末治(すえはる)さんは最初の信徒になった。

特別高等警察特高)の警察官は、踊さんの印鑑店兼自宅に、客を装って訪れた。天皇批判をしたり、スパイをかくまったりしていないかを疑っていた。家の中での会話も盗聴されるおそれがあり、家族は声をひそめて話した。

毎週日曜の礼拝も見張られた。麦野牧師が平和の大切さを説こうとすると「中止!」と叫んで説教を止めた。

日本国憲法は二〇条で「信教の自由」を保障している。しかし、戦前の大日本帝国憲法下では「安寧秩序を妨げず及臣民たるの義務に背かざる限に於(おい)て」との限定付きだった。天皇を中心とする国家神道を、国民の求心力として利用しながら、政府は戦争へ突入していく。天皇以外を神と信じるキリスト教は弾圧の対象だった。