第5部 不戦のとりで<下>権力、国家とは何か-東京新聞(2013年8月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013082602000122.html
http://megalodon.jp/2013-0826-1139-47/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013082602000122.html

戦後、神奈川県の高校教員になった後も、化学一筋だった中嶋さんに転機が訪れたのは六〇年。当時、教員に勤務評価を持ち込む国の方針をめぐり、全国で教育委員会と教員労組の対立が激化し「勤評闘争」と呼ばれた。県教委が実施した組合幹部らの人事異動に、「ノンポリ」(政治的思想のない)の中嶋さんも巻き込まれた。活発に活動していた教員と交換の形で、自宅から遠い高校への異動を命じられた。

中嶋さんを含む七人が不当人事として県人事委員会に提訴。争いは二十年近く続いた。

権力や国家とは一体何なのか。縁のなかった人文科学の書籍にも手が伸びた。やがて、民の側から権力をしばる憲法に関心が向いた。

八五年、前文を毛筆で書くなど、憲法を作品にすることを始めた。作品を募って、展示会を始めたのは三年前。「憲法について話そうとしても人々は乗ってこない。書けば頭に残るかもしれない」。方言で憲法を書いてくる人もいれば、絵を寄せる人もいる。