第3部 沖縄の怒り<中> 「戦争に利用許せない」-東京新聞(2013年6月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013061902000178.html
http://megalodon.jp/2013-0619-1051-36/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013061902000178.html

米兵少女暴行事件があった九五年九月二十八日、沖縄県知事(当時)の大田昌秀(88)は、積もり積もった沖縄の憤怒を一つの行動として表す。土地収用の書類に署名することを拒む反戦地主の代わりに行ってきた代理署名をやめると、県議会で明かした。「沖縄の最大の問題は土地問題」という長年の思いがあった。

村山富市首相から訴えられた大田は九六年七月十日、最高裁で意見陳述する。「憲法の理念が生かされず、基地の重圧に苦しむ県民の過去、現在の状況を検証し、若者が夢と希望を抱けるような、沖縄の未来を切りひらく判断をお願いします」。結果は敗訴。最高裁は「知事は代理署名する義務がある」と判断する。

政府は翌年、「日米安保条約上の義務を果たすことは、国家の存立に関わる重大問題」として、土地収用を容易にする米軍用地特別措置法改正案を国会に提出。日弁連は、憲法で保障された国民の財産権を侵害する恐れがあると批判したが衆参両院は圧倒的多数で可決した。
「自分のこととして考えない国会議員たちは痛くもかゆくもないだろう」。沖縄戦の多大な犠牲とひきかえに手に入れたはずの民主主義が、機能していないと感じた瞬間だった。