辺野古訴訟 疑問残る最高裁の姿勢 - 毎日新聞(2016年12月14日)

http://mainichi.jp/articles/20161214/ddm/005/070/048000c
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沖縄県からの問いかけに正面から向き合っているだろうか。疑問が残る対応と言わざるを得ない。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる国と沖縄県の訴訟で、最高裁が、高裁判決の結論を見直すのに必要な弁論を開かずに、20日に判決を言い渡すと指定した。これに伴い、県側の敗訴が確定する見通しになった。
裁判は、辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志(おながたけし)知事に対し、取り消しを撤回するよう求めた是正指示に従わないのは違法だとして国が訴えたものだ。福岡高裁那覇支部の判決は、国の主張を全面的に認め、知事の対応を違法とした。
1999年の地方自治法改正により、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へ転換した。今度の上告審判決は、国と地方の関係変化の後、両者の争いについて最高裁が示す初の判断となる。
最高裁は、知事が国の是正指示に従わないことが違法か否かについて、国の主張に沿った判断を示すとみられる。一方、県が、辺野古新基地建設の強行は地方自治を保障した憲法に反すると主張していることについては、審理しない見通しだ。
だが、外交・安全保障政策を所管する国と、民意を支えに移設に反対する県が全面的に争うこの問題を解決するには、最高裁憲法にまで踏み込んで判断を示すべきではないだろうか。外交・安全保障政策は、常に地方自治に優先するとは限らないからだ。
高裁那覇支部は、辺野古新基地は、規模が普天間の半分以下であることなどから、自治権侵害にはあたらず、地方自治を保障した憲法92条に反するとはいえないと判断した。
これに対し、県側は、面積が小さくなるから自治権侵害にあたらないという高裁判決の論理は、沖縄の基地被害を無視するものであり、憲法解釈が間違っていると訴えている。
また、県側は、根拠法を制定せずに新基地を建設するのは、国会を「唯一の立法機関」とした憲法41条に反するとも主張している。
95年に米軍用地の強制使用に必要な代理署名をめぐり、国が当時の大田昌秀沖縄県知事を訴えた代理署名訴訟では、最高裁大法廷で審理が行われた。そこで大田氏は、沖縄の歴史、基地の実態、憲法との関係などについて意見陳述をした。
裁判所法10条は、最高裁違憲審査権を行使するときは、先例がある場合を除いて、大法廷で裁判しなければならないと定めている。
今回、最高裁が弁論も大法廷の審理もしないというのは、代理署名訴訟と比べてみても、腰が引けた印象を受ける。