男子中学生(当時13歳)に対する葛飾警察署による調査について、(1)葛飾警察署への勧告及び要望、(2)警視総監への要望を出しました。
勧告及び要望の全文は、PDFファイルをご覧ください
http://www.toben.or.jp/news/relief/2009/0629.html
(抜粋)
子どもの人権救申立事件について(要望)
当会(東京弁護士会)は、当時13歳であった男子中学生が自転車で公道を走行中に職務質問を受け、自転車について被害届がなされていたことから占有離脱物横領ないしは窃盗の容疑で触法調査の対象となった件について、当該中学生から、葛飾警察署による調査のあり方について人権救済の申立てを受けました。
四 結論
1 本件で貴署の署員が実施した申立人に対する調査活動については、その過程で触法少年の未成熟性、被暗示性等に配慮して定められた少年法、少年活動警察規則の規定、及び、これを受けて策定された2007(平成19)年10 月31 日付警察庁次長通達、警察庁生活安全局少年課の「触法調査マニュアル」の各内容に反する態様が取られていたことが認められる。
触法少年に対する調査活動が、低年齢少年の特性を充分に配慮しないままに実施された場合には、冤罪を生んだり、対象となった少年がかえって大人や社会への不信を強めて反省が不十分に終わるなどの危険性が高いことを無視してはならない。もし、このようなことが起きた場合、調査活動の実施によって、かえって子どもたちの健全な育成が阻害されるという帰結にも至りうるのである。
解説
本年(2009年)6月29日、東京弁護士会は、2008年2月23日に行われた13歳少年に対する触法調査が、少年法や「少年警察活動推進上の留意事項」等に反する態様がとられたとして、触法少年調査の留意点を周知徹底させるべきとして、警視庁葛飾警察署に勧告書(http://www.toben.or.jp/news/relief/2009/20090629_keisatsu.pdf)を、警視総監に要望書(http://www.toben.or.jp/news/relief/2009/20090629_keishityou.pdf)を出しました。
2007年少年法「改正」により、警察の調査権限が拡大。客観的合理的に判断して触法の疑いがある少年に対しても必要があるときは調査が可能となりましたが、14歳以上の少年に比べ(14歳未満の)触法少年はさらに精神的に未熟であり、被誘導性や迎合性が強く、調査においても、より慎重な配慮が求められています。
そこで「改正」少年法では、触法調査は、
- 少年の情操の保護に配慮しつつ行うものとされる
- 調査の際の質問において、強制にわたることがあってはならないと規定
- 触法調査に対する弁護士付添人の選任権を設ける
としました。
これを受けて、少年活動警察規則が改正され、警察庁次長通達(2007年10月31日)「少年警察活動推進上の留意事項」や警察庁生活安全局少年課の「触法調査マニュアル」が作成されました。
実は「改正」以前から警察は事実上触法調査をしており、今回のような問題も含め、多くの問題が指摘されています。「大阪地裁所長襲撃事件」では13歳の少年が虚偽自白をさせられ、「改正」法案審議でも大きく問題にされたところです。
上記「改正」少年法等の規定によって、実際の運用がどのようになっているか注目されるところですが、本件では、こうした調査はまだまだ多いのではないかと懸念されます。本来触法調査は児童相談所がすべきですが、少なくとも、警察においては、今回の勧告・要望が徹底されるべきなのです。