2007年5月24日午前 参議院法務委員会厚生労働委員会連合審査会

厚生労働委員会委員から質問がなされた。


下田敦子(民主党)議員は、少年法の見直しに当たり、児童福祉サイドから総合的な検討と福祉的アプローチを充実させるべくとして、質問をした。

非行児童の多くは両親から温かい愛情を持って養育されるという経験が少なく、長期間にわたって虐待を受けていたケースも見られる。このような家庭環境に恵まれない児童に対する処遇に先立っては、何よりもその子ども自身が一人の人間として大人から大切にされたという経験が必要。この経験を実感することで初めて、自分が犯した行為を心から反省し、自立の心が芽生えるのだと思う。児童自立支援施設は、入所児童の生育歴や家庭環境等を十分に調査、確認の上で、一人一人に合った自立支援計画を策定し、福祉的な観点からできるだけ温かい家庭の雰囲気の中で、職員が親代わりになって子どもの気持ちの立て直しを支援している。長年、児童福祉の現場にあった私の仕事仲間が、専門家の意見として、今回の少年法「改正」案は、最近における児童、少年における非行、犯罪の低年齢化及び凶悪化を理由として唐突に提出された感が否定できず、その趣旨は厳罰化と警察の介入権限の強化にあるように思われる、とのコメントがあった。厳罰化では子どもを救えない。育つ者の芽もつまんでしまう。厚生労働省では、どようなスタンスで臨んでいるか、これからどうされていくのか、と質問した。

 柳沢厚生労働大臣は、事実解明に対する社会の要請というものが強まっている。また、加害少年の立ち直りの視点の観点からも、調査を充実した形で行うということが必要。さらに、個々の加害少年にとって、処遇の選択肢を置いて、最適の処遇を求めることが必要ではないかと、これまでの法務委員会での厚生労働省側の意見を踏襲。

下田議員は、少年院は学校教育に準じた教育しか実施されておらず、義務教育の質が保障されていないのでは質問。

長勢法務大臣は、少年院では、義務教育の履修を必要とする者を対象とした処遇コースを設置。教員免許を有する職員や外部講師により学習指導要領に準拠して教科教育を行っていると説明。「改正」法案が成立したら、文部科学省とも連携し、小学生に対する教育上の留意点についてもよく研究し、年少の少年の処遇にふさわしい教育体制を充実させるよう万全を期す、と回答した。

下田議員は、少年の犯罪の凶悪重大化の背景には、一方では明らかに精神疾患を疑わざるを得ないような、今までにないような別世界に陥ってしまった犯罪が起きている。小中高の学校現場、児童自立支援施設、少年院における心理士、精神保健福祉士等の配置状況はいかがかと質問。

それに対し、政府参考人が説明した。が、下田議員は、数字だけ挙げても、その専門性等に疑いがあるのでは、と質した。また、有害情報等についても、通達は出すが実効性はない。これらを含め、私たちの責任である。それを犯罪の結果だけを見て厳罰化していくということはおかしい。現在の心理学では、子どもの成長にとって最も必要なものは、自己肯定感である。自分をそのまま受け入れてくれる養育者との人間関係を通してのみ可能になると言われる。こうした人間関係を育む援助、治療モデルを構築した処遇の体系が必要である。犯罪を犯してしまった凶悪事件の少年については、殊更に大変な忍耐力と環境とセッティングされたものがなければならず、すべてこれを厳罰化していけば直るだろうというのはとんでもない。非行を犯してしまった子どもを厳罰化していくという以前に、社会全体で子どもの非行を予防していかなければならない。そのための地域社会が必要である。しかし、PSWやソーシャルワーカーという専門職が起用されていない。児童相談所児童自立支援施設のスタッフの充実も訴えた。

最後に、下田議員は、少年法「改正」に当って法制審議会少年法部会になぜ、福祉・医療関係者が入っていないのか大変疑問である、と訴えた。

山本保(公明党)議員は以下のように質問をし意見を述べた。
 
私は児童福祉の側からも、少年院が今までやってきたことは効果的であると思っている。
1900(明治33)年に感化法ができた。これは、そのまた100年前のペスタロッチの理念が全世界的に広まってできてきた施設。この理念はすばらしいが、現実的にはなかなか大変であったということで、明治後半から大正期に新しい少年法を作ろうという議論がなされる。そのときに、当時の内務省と司法省の間で大変な論争になり、「愛情なのか高い塀が大事なのか」という有名な論争があった。結論は、戦後の児童福祉法体制と新しい少年法体制になり、個々の子どもの状況に応じて選択をしていこういう体制が基本になった。だから、今回の案が厳罰化であるという議論はおかしい、として、「改正」を導く質問をした。

そして、山本議員は、「子どものときからやり直しをする」という方法は効果的ではない、行動療法的な、社会的自立、職業、家庭をつくるという具体的な対応が重要とし、触法少年の少年院の対応について質問した。

法務省矯正局長は、低年齢であるということを考慮して、男性教官、女性教官、そして精神科医、カウンセラーというチームを作って、家族的な雰囲気の中で少年の心情の安定を図ることをまず前提とする。教育プログラムは、小学生を対象とする新たな処遇コースを設立する。その中で、一人一人の少年の年齢、心身の発達の程度に応じた教科教育・生活指導、特に生活指導に力を入れる。低年齢であるために、保護者との接触、交流が大事であるので、これまで以上に、例えば保護者が泊まり込んで行う面会や食事を一緒にしながら行う面会、少年と保護者が一緒に参加するファミリーカウンセリング等のプログラムを充実をさせ、子どもと保護者の接触の機会を増大させようと計画していると回答した。

山本議員は、もう一つ大事なことは、子どもの家族であるが、少年司法の下では家族に対する支援というのは少し弱かった。今回の「改正」ではどのようなものかと質問。

法務省刑事局長は、2000年「改正」で、家庭裁判所が審判や調査の過程において保護者に対する訓戒や指導を行うことができる旨の規定が設けられた。今回の「改正」においても少年院及び保護観察所の長について保護者に対して指導、助言を行うことができる旨の明文の規定を置いている。今回の「改正」により、保護者に対する働き掛けがより積極的に行えるようになると認識していると答弁した。

次いで山本議員は、今度は小学生段階の子どもが入るので、学校に帰ることになると思う。少年院の場合、当然短期処遇というか、6か月なり、又はもっと短い処遇が基本になるから(注.全くの認識不足である。少年院に入れるほどであれば、長期化するのは必須である)、元の学校へ帰すという前提で計画がないといけない。このシステムは、と質問した。

法務省矯正局長は、保護者が就学猶予・免除を申し出て市町村の教育委員会がこれを認めた場合には、その子どもと少年院に入院する前の在籍校との在籍関係がなくなる。その場合、少年院では小学校及び中学校で必要とする教科について教科教育を行った上で少年院長がその修了者に対して修了の事実を証する証明書を発行する。この証明書は小中学校の卒業証書と同一の効力を有する。他方、就学義務の猶予又は免除がなされていない場合、当該児童生徒の在籍関係が存続しているということになる。この場合、当該子どもの進級あるいは卒業の認定については、少年院の方で行った教科教育の実施状況等を学校に連絡をして、在籍校の校長が児童生徒の平素の成績を評価してこれを行うことになる。今後、文部科学省とも協議をしながら綿密な連絡体制が取れるように努めていくと答弁した。
 
それに対し、山本議員は、猶予・免除というのは親が申し出ることになっているので、申し出なければ猶予・免除にはならない。ここはそろそろ考えた方がいい。14歳というのが取り払われるとなれば、法律的にも当然その小学校段階の子どもが学校へ帰るということが想定される。一度文部科学省ともきちんと協議をされて、学校教育法という一番法律の大本なのだから、きちんと整理をされた方がいいという意見を述べた。
また、「発達障害」の子どもの処遇について、文部科学省特別支援教育の中で「発達障害」に対する支援が始まったところ。文部科学省は6%という。少年院の中にもそういう子どもが入ってくる。これをどうするかと質問した。法務省矯正局長は、宇治少年院と広島少年院を中心にして、「発達障害」の子どもたちに対し様々な試みをしているし、今後も努めるとした。
 
最後に山本議員は、児童福祉的な対応が必要か少年院における矯正教育が必要かの最終的判断は家裁の裁判官。その専門性を、福祉も少年院も効果的な処遇なり方針をきっちりさせてしていかないと、野党側からも言われるような危惧、一面的に厳しい警察的な方法をするのではという危惧がある。今後機会があったら最高裁判所も呼び、審判をするときの基準というものをしっかり作ってほしいということをお願いしようと思う(注.裁判の独立にかかわる問題を忘れている)。また、厚生労働大臣においては、少年院でも社会福祉士を登用すべきだという意見を述べた。

小池晃日本共産党)議員は、今まで児童相談所における触法事件、特に重大事案について対応に問題があったのかと質疑したが、法務省刑事局長は、従前同様、触法少年の行為については、刑事訴訟法に基づく捜査ができないとの理解から捜索等の法律に基づく強制処分を行うことができず、任意で行う調査についても、法律上の根拠が明確でないため、円滑な調査に困難が伴って事案の解明が十分にできない場合があったと繰り返し、児童相談所の対応に問題があったのではないとした。

そこで小池議員は、現行法は、触法事件については児童相談所が中心となって対応するということを予定している。重大事件であっても児童福祉的な対応が必要だと児童相談所が判断すれば、家裁に送致することなく処分を決めることができる。以前から、重大な触法事件でも児童相談所の範囲で対応したという例は見られるが、問題は起こっていない。ところが、今回の改正では、触法事件について警察が捜査を行い、特に重大事件においては家庭裁判所全件送致を法律上の原則とするという。これでは、福祉的対応を基本とする児童相談所の領域が後退するのではと追及した。

長勢法務大臣は、児童相談所が福祉的な対応を中心とする組織であるということはそのとおりだが、家庭裁判所による児童相談所送致や保護処分などの福祉的措置も、事案の真相の解明がなされることによって初めて適切に行われる。警察の調査はこのような少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行われるもので、従来から行われてきた警察の調査について法的根拠を明確にするため整備するもので、従来の法制度を変更するものではない。したがって、本法案により触法少年に対する福祉的な対応を後退させるということにはならないと、原則送致に対して質問しているにも関わらず、逃げた。

小池議員は、少年が抱える問題を、事実関係だけでなくて背景なども含めてしっかり把握をして対応を行っていく児童相談所の役割は非常に重要だし、その調査力・対応力は一層強化すべきだと思う。こんな形で警察の調査権限付与によって警察ばかり肥大化していけば、本来強化すべきである児童相談所の対応力・調査力が逆に弱体化する大変な懸念を持つと言い、児童相談所が実際に対応できる体制になっているかを厚労省に質問。

政府参考人厚生労働省)は、児童虐待を含めた養護相談件数につき、2005年度が1995年度に比し約2.5倍、非行相談件数は(同比較)約1.1倍という増加傾向を説明。児童相談所の職員数では、(同比較)1.3倍の増員と説明した。児童虐待を含めてこの対応件数が大幅に増加する中で、非行の相談や障害相談などへの対応を迅速に行っていくためには、児童相談所の体制、とりわけその職員の充実強化が重要な課題であるとした。そして、児童虐待が増加する中で、都市部を中心に一時保護施設が定員超過状態になっていることを受け対応を図っているところ。一時保護施設によっては、被虐待児と非行の児童が同室で保護される「混合処遇」という問題も発見された。対応として、二つの仕切りをして、一時保護所の環境整備、環境改善予算を設定した。定員を超過状態にある一時保護所については、一時保護施設等の緊急整備計画を定め、遅くとも2009年度までにこういった一時保護施設の定員不足状態を解消するという措置を講じようとしている。一時保護所のプライバシー問題については、外部から一時保護所の居室等の内部をうかがうことができないような窓ガラスに工夫、部外者が敷地内に立ち入ることができないよう警備を強化する等の努力をしていると説明した。

小池議員の「触法少年の処遇という児童自立支援施設での職員は高い専門性が要求されるが、経験なくてもいい人が配置されている、適切な運営という点で改善の余地があるのでは」との質問に、政府参考人厚生労働省)は、2007年4月から児童福祉施設の最低基準を改正して、必要な研修を義務付けるなど児童自立支援施設の施設長の任用要件の厳格化を図ったとし、更に、柳沢厚生労働大臣は、少年非行の問題は、政府としても全体的な取組むべきであり、社会全体で取り組むべき重要な課題だと認識をしている。厚労省では児童福祉の観点からこの問題に積極的に取り組んでいるところ。児童相談所の人的・物的体制の強化はそのとおり必要である。非行の加害者である子どもたちが、実は虐待の被害者としての経験を持っているという事案が多く存在している。昨今、児童虐待防止対策の充実を図っているが、非行防止という観点からも、これらの取組を積極的に推進していくことが重要と答弁した。
 
こうした答弁に対し、小池議員は、指摘した様々な課題があるが、そういう中でも改善の方向で進んでいる。困難な中でも、14歳以下の事件について児童相談所などが努力して対応してきたという実績はある。国立武蔵野学院前院長の徳地昭男氏が参考人質疑でも述べたように、受け入れた殺人6人、傷害致死3人は、非常に大変だったが、再び非行に走って家裁に通告・送致することはなかった。鍵がかかる強制措置をとれないような国立以外の施設でも、例えば小学4年生が2年生の子どもを突き落として殺害するという佐世保事件と同様の事件が1979年に起こっているが、これは児童相談所で都立の教護院(現・児童自立支援施設)に入所させてきちんと対応している。法務省は、少年院でも男女の担任制など家庭的な雰囲気を大切にした指導をしていくとということは、発達段階の少年にとって児童自立支援施設で行ってきたような家庭的な雰囲気の中での育て直しが必要だと考えているということではないか、と追及した。

法務省矯正局長は、再非行防止のための教育と並んで、育て直しのための教育というのは重要な柱であると答弁したので、小池議員は、集団的規律を重視する少年院では幾ら努力しても家族のような環境を用意したり、精神科医との協力の下で育て直しを行う児童自立支援施設と同等の機能を果たすことは難しい。触法少年を立ち直らせて再び罪を犯させないが根本である。だからこそ育て直しや虐待の解決などの育成環境の整備が重要。個々の対応がが必要だからこそ、全件を原則送致するというやり方が重大な問題だと述べた。

福島みずほ社民党)議員は、先日の拷問禁止委員会の日本政府への勧告から入った。刑務所の処遇の改善など評価されたところはあるが、日本の問題についてかなり厳しく勧告が出ている。代用監獄の廃止と捜査の可視化、国際基準に適合するよう警察拘禁期間の上限を設定すること、特に国際基準に適合するよう警察拘禁期間の上限を設定すること、代用監獄の廃止という勧告を、どう改善されるのか警察に答えを求めた。

政府参考人警察庁)は、拷問禁止委員会の審査において、日本政府代表団からは、警察の留置施設においては捜査と留置が分離され被留置者の人権に配慮した処遇がなされていることや、警察捜査の在り方等について説明したが、拷問禁止委員会からこのような指摘がなされたということは残念なこと。この意見については、今後その内容を十分に検討し適切に対処したいとした。国連機関からは、これまで何度も代用監獄廃止意見が出ているが、日本政府はいつも同じ説明をし、廃止の気配すらない。またもや同じ回答であった。
 
次いで、福島議員は、少年法「改正」法案に入り、"おおむね"ということは法律として変であり、"おおむね"で処遇を決めるのは法の下の平等に反するのではないかと追及した。

それに対し、法務省刑事局長は、"おおむね"という文言については、現行の少年院法においても、初等少年院は心身に故障のない14歳以上おおむね16歳未満の者を収容する等々の文言を用いている。それぞれの対象少年にふさわしい処遇をするという観点から定められることであるので、法の下の平等の観点から問題があるとは認識していないと回答した。

福島議員は、拷問禁止委員会からも捜査の可視化については基本的に勧告が出ている。はっきりと弁護人の選任権があるということの告知をすべき。不利益な処遇につながる可能性があるからという最高裁判例もある。子どもはどうしても誘導に従いやすいということは常に指摘をされ、冤罪を生むと言われている。まず弁護人の選任権についてきちっと告知をすべきであるし、捜査の可視化についてもビデオテープ等で録音などをして冤罪をなくすべきと追及した。

法務省刑事局長は、従前同様、触法少年の調査手続は刑事手続ではない、刑事事件でも身柄を拘束された場合に弁護人選任権の告知をすることになっているのが、触法少年については身柄の拘束がない、付添人選任権の告知を法律上、捜査側の義務あるいは少年の側の権利として定めることについては相当ではない、と繰り返した。可視化の問題についても、従前同様、捜査をする側からすると、そのような器具が入っているとざっくばらんに色々な話を聞く、心を打ち明けてもらうことについて支障がある、この点につき慎重に引き続き議論をさせていただきたい、と繰り返した。

福島議員は、子どもは知識がない、だからこそ家族や子どもに権利の告知をする必要がある、より強くケアをする必要がある。法律に書くのが不適当という意見は理解できないが、法律に載せないにしても、ガイドラインやマニュアルできっちり明示するのかと質した。法務省刑事局長は、これまでの審議の中でも、警察当局から、今回のこの法案が成立した場合には、それを踏まえてマニュアル・警察のルールを新しくしていくという趣旨の答弁をしていると述べた。

さらに福島議員は、14歳未満の触法少年のケアは、これからも引き続き児童相談所児童自立支援施設のラインが中心に担うということでよろしいですね、と厚生労働省に確認。柳沢厚生労働大臣は、(14歳未満)触法少年についてはこれまでの児童相談所等のケアが今後とも基本となるものと考えている。ただ、少年院の収容年齢の引下げについては、個々の子どもに最適な処遇を選択させるという選択肢を広げるという意味で意義が見いだせる、と法務委員会でなされた厚生労働省意見を繰り返した。

これに対し、福島議員は、児童自立支援施設の収容率、定員充足率は39.3%(2002年)だが、少年院は満員。厚生労働省児童自立支援施設で頑張ってほしい。そして、何が必要なのか。児童自立支援でケアをするのが難しい子どもがいるとすれば何を改善すればいいのか。施設側の人数・設備・ケアの内容などについて、もし厚生労働省からの意見があれば教えてほしいと質した。
政府参考人厚生労働省)は、児童自立支援施設はこれまでも重大な触法事案少年や「発達障害」等のある子どもの立ち直りや社会的自立に向けて成果を上げてきた。今後更に適切な支援を行うという見地から、職員等の任用要件を更に厳格化、医療機関との連携を強化、職員の専門性を高めるための研修、先駆的な取組事例を研究、こういうことを積極的に進め、児童自立支援施設の機能の充実強化、援助技術の向上を図っていきたいと説明。さらに、児童自立支援施設に入所する子どもの6割に虐待経験があったと報告されているが、こうした子どもついては愛着関係の形成が重要。できる限り家庭的な環境の中で、職員との個別的な関係を重視したきめ細かなケアを提供していくということが必要。専門的なケアが必要な子どもに対しては、個別に施設に配置されている医師や心理療法担当職員によるカウンセリング、心理療法等のケアを必要に応じて実施しているが、虐待経験をこうした家族的な環境の中で乗り越えて自立させるように努めているところであると述べた。   

福島議員の、「スタッフへの教育はどのように行っているのか」という質問に、新任施設長研修を始め、多様な研修を行っている。その他、施設職員の専門研修として、スーパーバイザー研修、中堅職員の研修、自立支援専門員の研修、その他各種の研修を行ってその資質の向上に努めていると回答した。


福島議員は、最後に次のようにまとめた。
 
施設の現場は頑張っていて、色々な努力をしている。今回の少年法「改正」は、児童自立支援施設でやれないというところから改正してくれという話ではなくて、凶悪な小学生も少年院に送るべきだという、子どもに対する厳罰化の方向から出ていることが極めて問題だ。少年院でも現場の職員が物すごく苦労して頑張っていることも知っている。ただ、同時に、やはり子どもは大変可塑性に富む。そして、実際私たちは、加害者の子どもも、一皮むけば、物すごい被害の中で苦しんで生きてきて、どうやっていいか分からないという生育歴などを考えるところ大である。とすれば、小学生の子どもを少年院に送り込むことが果たしていいのか。本当に現場から出た少年法の改正なのか。現場からどうしても自立支援施設で手に負えないからやってくれという話ではなくて、"子どもはけしからぬ"という話から出ているのではないか。だから、厚生労働省は頑張ってほしい。子どものために私たちは応援したい。子どもが大きくなってもう一回犯罪を繰り返さないように、子どもたちを応援したい。政府案は、我が国の少年非行防止施策の基本理念を、福祉・医療・教育による援助・支援型から、警察中心の取締り・監視型へと転換させるものではないか。そこには例えば付添人の権利の告知もない。冤罪が起きるのではないか、本当にいいのか極めて問題がある「改正」案である。