9条俳句掲載 表現はまだ梅雨空の中 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122802000155.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1018-04/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122802000155.html

憲法九条を詠んだ俳句が公民館の月報に掲載されない−。この問題は司法判断を経て、やっと掲載になる。単なる市側の事なかれ主義だったのか。今も表現の自由は曇りの中にあるのではないか。
<梅雨空に「九条守れ」の女性デモ>−。既にこんな俳句が世間で問題視される世の中になっていた。さいたま市の女性が二〇一四年に詠み、句会で優秀と認められた。慣例で月報「公民館だより」に掲載されるはずだった。
ところが、公民館側は拒否。理由は「世論を二分する内容で、掲載は公民館の公平性、中立性を害する」だった。女性は裁判に持ち込み、東京高裁は「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをし、女性の利益を侵害した」と市側に賠償を命じた。最高裁でも今月、慰謝料は減額されたが確定した。
一四年とは政府が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した年である。憲法学者から「違憲の疑い」が指摘された。誰もが危機を感じ、声を上げてよかった。その一人が俳人の故金子兜太氏だった。
九条俳句問題は、金子氏らが選者となって、本紙の読者投稿「平和の俳句」(一五〜一七年)が始まるきっかけになった。三年間に十三万句以上も寄せられた。
戦時中を知る金子氏は真っ先に「新興俳句弾圧事件」を思い出したという。例えば渡辺白泉の句が治安維持法違反になった。
<戦争が廊下の奥に立つてゐ(い)た>
この句と比べてみてほしい。九条俳句が排斥されるならば、現代もまるで暗黒時代と同様になってしまう。表現の自由憲法で保障されているはずが、役所の「公平性、中立性」の言葉で踏みつぶされるのだから…。
しかし、政治的中立性に幻惑され排除されるのは、九条俳句ばかりではない。護憲集会で公的な会場を貸さなかったり、行政主催の講演会で、護憲派ゲストを取り消したり…。不合理な動きだ。
原発や政権批判、米軍基地問題でもしかり。行政があまりに政治問題に神経質になっている。モデルのローラさんが沖縄の辺野古埋め立て反対の署名を呼び掛ける投稿をしただけで物議をかもす。なぜなのか。
自由社会でありえない横暴さがまかり通っている。公権力は政権の意向を忖度(そんたく)しているのか。それこそが問題なのに…。「戦争が廊下の奥に立っている」時代にも等しい空気が何とも息苦しい。

16万突破!世界で広がる反辺野古基地への連帯——ホワイトハウス請願署名始めたロバート梶原氏を直撃(津山恵子さん) - BUSINESS INSIDER(Dec. 27, 2018)

https://www.businessinsider.jp/post-182322

ハワイに住む日系4世のミュージシャンが始め、沖縄・辺野古の海への土砂投入停止を訴える請願署名が、驚くスピードで世界に広まっている。

「工事開始の日が近づくにつれて、不安も増す一方で、希望も失せていました。日本とアメリカの政府は、沖縄の人々と、玉城デニー県知事の声を無視したのです。でも、工事反対のデモを毎日している人々のことを考えると何もしないわけにはいかず、少しでも彼らのことを知ってもらえればと、ほとんどやけくそで始めたのです」

と、ロバート梶原氏(32)は、署名活動を始めたきっかけをBusiness Insider Japanに語った。

全米の日本領事館の前で集会

米軍普天間飛行場移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設工事はついに12月14日、土砂投入という形で強行された。

防衛省による土砂投入を海外の市民やメディアは、沖縄・辺野古問題が異なる次元に突入したととらえた。米メディアが素早く反応し、梶原氏が始めた請願には16万5000人以上が署名した(米東部時間12月25日現在)。

梶原氏が署名を始めたのは12月8日、ホワイトハウスが設ける請願サイト「We The People」を利用し、新基地の是非を問う2019年2月24日の県民投票まで、工事停止をトランプ米大統領に求めている

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Petition to save Henoko / Okinawa reaches over 3000 signatures in 2 days!

「世界には150万人のオキナワンがいます。10万の署名は簡単ではないでしょうか」(梶原氏)

この請願サイトは署名開始から30日以内に10万署名が集まれば、ホワイトハウス内で検討され、60日以内に回答が来るという制度だ。サイトはソーシャルメディアで拡散し、10日間で10万人を達成。署名を呼びかける中にはタレントのりゅうちぇるやローラも。この日、梶原氏はYouTubeでこう語っている。

「わずか10日で10万集まったということは、多くの人が沖縄をサポートしているし、多くの人が辺野古に基地を望んでいないという表れだ。強いメッセージだ」

梶原氏は母方が沖縄県中城(なかぐすく)村出身の日系4世で、子どもの頃から祖父母から沖縄の文化と歴史を聞き、自分のアイデンティティの一つと考えるようになった。辺野古にも何度も訪れ、ウチナーグチ(沖縄の方言)も話す。
梶原氏はまた、辺野古基地建設反対を訴えるため「沖縄と結束しよう」と、12月18日に各地の日本国総領事館前に集まることをYouTubeで呼びかけた。この結果、ワシントン、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ホノルルなど、全米各地で集会が開かれている。

デニー知事を歓迎したアメリカ市民
10万署名を集めたのち、梶原氏はすでに次の目標を立てている。
ホワイトハウス請願サイトで最多の署名を集めること(12月21日現在7位)
アメリカの主要メディアに取り上げてもらい、アメリカ人の署名をもっと集めることで、ホワイトハウスの理解を得やすくすること

「工事の停止は、民主主義と平和主義に基づくものです。もし人々が望まなかったら、政府はそれをするべきではないのです」

と、毎日、基地建設反対を訴えるYouTubeビデオをアップしている。
梶原氏は今、辺野古問題に関心がある人々の間で、リーダーのように見られている。署名スタートから30日の1月7日には署名を提出するため、梶原氏をワシントンのホワイトハウスに送ろうという計画も持ち上がっているという。実現すれば、辺野古問題で市民の声がアメリカ政府に直接届けられることになり、画期的だ。
防衛省による土砂投入を海外の市民やメディアは、沖縄・辺野古問題が異なる次元に突入したととらえた。沖縄タイムスによると、有力紙ワシントン・ポストは土砂投入から20分後に、AP通信の記事をサイトに掲載した。ニューヨーク・タイムズもこれに追随。
その“予兆”は11月中旬の玉城デニー沖縄県知事の訪米から始まっていたのかもしれない。玉城知事の訪米はこれまでの歴代沖縄県知事や名護市長の訪米とは驚くほど異なる歓迎を受けた。
工事の停止を訴えるため、安倍首相を何度も訪問している玉城知事は連帯を訴えるため、ニューヨークとワシントンを訪問。沖縄ゆかりの市民に、「アイ・ラブ・デニー!」と熱狂的な歓迎を受けた。
玉城知事はニューヨークの集会で市民約150人を前に、「多様性の威力と沖縄民主主義の誇り」と題したスピーチを行い、「(基地問題を)沖縄だけに解決策を問うのではなく、日米の市民が自分のこととして、とらえてもらいたい」と訴えた。

「(基地問題は)沖縄の民衆の意思に関わらず、押し付けられてしまった。日本が沖縄の問題を無視したままでは、民主主義国家ではない。そこにさらに、辺野古の基地増強という負担を強いているわけです」

「また、(ハーフという)私のような存在が、沖縄の魂でもアイデンティティでもある。この多様性を誇り、それをアメリカにも尊敬してもらいたいのです。アメリカが自国の民主主義を誇りに思うなら、それを沖縄にも実現してもらいたい」(玉城デニー沖縄県知事のスピーチより)

として、沖縄県、日米政府の3者会談を強く希望していると強調した。

アメリカ人は環境問題に敏感
集会に来ていたハーフのアリス・クリマさん(24)は、知事のスピーチを笑顔を浮かべながら聞き入り、「希望が湧いてきた」とコメントした。

「日米の民主主義を尊重するという戦略は、今まで聞いたことがなかったし、いろんな行動を起こすことで、基地問題を解決していく道につながるのでは、と思い始めた」

また、アジア・パシフィック・ジャーナル編集者のマーク・セルダン氏は、玉城知事はこれまでと異なる知事として期待できるとして、こうコメントした。

辺野古の問題をアジェンダとして当選したが、この問題を解決するために、民主主義というキーワードなど新しい言語を見つけようとしていると思う。さらに、アメリカ人は環境問題についてとても敏感です。沖縄は、太平洋戦争で『戦争のキーストーン』でしたが、今後は環境に優しく『平和のキーストーン』になると主張していけると思います。そういった新しいメッセージを期待しています」

署名活動は1月7日まで続く。梶原氏らは、オノ・ヨーコなどアメリカのセレブが署名し、アメリカ人がこの問題に関心を抱いてくれることを期待している。

「不参加自治体あっても県民投票実施」 玉城知事が表明 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000137.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1019-17/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000137.html

沖縄県の玉城(たまき)デニー知事=写真=は二十七日、県庁で記者団の取材に応じ、米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)移設の賛否を問う県民投票について、一部自治体が不参加となっても予定通り来年二月二十四日に実施する考えを明らかにした。「条例の定めた通りに執行していきたい」と語った。
県民投票をめぐっては、投開票事務に必要な予算を議会が認めなかったことなどを理由に、宮古島、宜野湾両市が不参加の意向を表明。玉城氏は「地域によって投票機会が奪われることがあってはならない」と述べ、全自治体に協力を求める方針を強調した。

◆ローラさんら発言「関心持つ機会に」
玉城氏は、沖縄出身のタレントりゅうちぇるさん、お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん、タレントのローラさんら芸能人や文化人の間で、埋め立てを県民投票まで止めるようトランプ米大統領に求める請願署名の動きが広がっていることには「参加するのは自由な自身の考えに基づくもので、どんな立場であれ参加する権利はある」と指摘した。
署名に同調する動きについて「政治的であるかどうかは捉え方によるが、なぜそのような発言がなされなければならないか、関心を持っていただく意味で大切な機会になるのではないか」と語った。

(渡嘉敷 空自無許可訓練)なし崩し使用許されぬ - 沖縄タイムス(2018年12月28日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/365171
https://megalodon.jp/2018-1228-1026-11/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/365171

航空自衛隊那覇基地渡嘉敷村に通知せず前島で訓練を実施していた問題で、同基地は26日、2000年に当時の村長から得た同島ヘリポート使用の承諾書を根拠に、ヘリポート以外の場所でも訓練を続けていたと文書で釈明した。承諾書には訓練実施の期限が書かれていなかったため、「永久承諾」があったと解釈したという。あまりに手前勝手な解釈であきれる。
承諾書について当時の村長は「覚えがない」と否定している。村も当該承諾書を探すが見つかっていない。
今回新たに00年以前にも訓練が実施されていたことが分かった。
一方、村が確認したのは1999年11月から1年間の使用に限る承諾書だけ。これによる訓練は2000年4月から実施されており、それ以前の承諾書は確認できていないという。同基地も自ら訓練の根拠とした00年の承諾書自体を公表しておらず、承諾書は、その存在すらあいまいと言わざるを得ない。
訓練を続けるにあたって同基地は毎年1度、村役場の担当者に連絡や調整を行ってきたと説明する。しかし、これについても村側は「覚えがない」と食い違う。
問題を受け同基地は過去2年間の同島での訓練内容を開示した。それによると離着陸訓練や模擬遭難者のつり上げ訓練などの災害派遣訓練を17年度に112回、18年度は12月9日までに41回実施した。
ヘリポート以外での訓練は、そもそも同基地が根拠と主張する承諾書にも触れられていない。そんな曖昧模糊(あいまいもこ)とした取り決めを基に、これまで延々と訓練を続けてきたとすれば異常事態だ。

    ■    ■

村が同基地の前島での訓練を認識し始めたのは00年ごろ。村関係者は、ヘリポート以外に、同島東側の桟橋でもヘリの離着陸訓練を目撃している。
しかし訓練に明確な根拠がないと分かったのは報道がきっかけで、村はそれまで訓練について同基地に問い合わせていなかった。
前島にはかつて集落があったが00年ごろに無人となった。
しかしその後、住民が移り住み現在は1人が住居を構える。そんな中で、根拠のない訓練を放置してきた責任は村側にもある。
問題の発覚を受け座間味秀勝村長は「前島には住民が住んでおり訓練は望ましくない。航空自衛隊には訓練を考え直してもらうよう協議したい」と訓練自粛を要請したが、住民の安全を脅かしかねない事の重大さを考えれば、根拠なき訓練ははっきりと拒否すべきだ。

    ■    ■

同基地は今回、「村との意思疎通を十分行わないまま誤解に基づいて訓練を実施してしまい、村や住民にご迷惑とご心配をかけた」と文書で陳謝。同時に、村に対し訓練再開を要請している。
だが、承諾書の有無など村側との認識のずれは残ったまま。疑問が解消されたとは言い難く、なし崩し的に訓練を再開することは許されない。同基地には説明責任の徹底を求めたい。

(大弦小弦)あれからもう5年がたつ。あまりにも物事が目まぐるしく・・・ - 沖縄タイムス(2018年12月28日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/365169
https://megalodon.jp/2018-1228-1034-42/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/365169

あれからもう5年がたつ。あまりにも物事が目まぐるしく動いてきたので、そんな歳月の積み重ねも紙面を見るまで忘れていた。仲井真弘多元知事の辺野古埋め立て承認のことだ

▼あの時、仲井真元知事が承認に至る背景として絶大な信頼を寄せたのが、安倍晋三首相の「沖縄の負担軽減に取り組む」という言葉だった。空手形ではないかと記者に問われ「最高の担保だ」と色をなしたが、同じ質問をもし今聞かれたらどう答えるか

▼約束の根幹をなす普天間飛行場の5年以内運用停止は政府が「県が辺野古反対だから」という難癖をつけ、手つかずのまま。米国の機嫌を損ねたら進むものも進まないのは当然だ、との主張もあろうが、そうなると、もはや主権国家の体をなさない

▼最近会った仲井真県政時代の県幹部はこう話していた。「そもそも公有水面埋立法は国が埋め立てようとすれば最終的に拒めない」。仮に不承認にしても、国が修正して申請を出し直せば認めざるを得ない、と

▼それは国が法令に沿って手続きを進め、承認権者の県の指摘に従うという前提があればこそ。恣意(しい)的に法解釈する安倍政権に当てはまるのか

辺野古の海は承認の約束が無視されたまま工事が続く。「いい正月を迎えられる」。こう言って仲井真元知事は判を押した。今も同じお考えだろうか。(西江昭吾)

<金口木舌>手段にされる命 - 琉球新報(2018年12月28日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-854809.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1033-45/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-854809.html

「軍隊が女性への暴力を防止するのは女性を守るためではない。性病の流行によって戦意を失わせないためだ」。9日に開かれた戦時性暴力をテーマにしたシンポジウムで「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表が語った

▼1944年に陸軍・第32軍が創設されてから沖縄で多数の慰安所が設置された。慰安所では辻遊郭の女性たちも日本兵の相手をさせられた。米軍上陸後は米兵による女性暴行事件が頻発した
▼沖縄の女性は戦前、戦後を通して軍隊による暴力の犠牲になった。さらに高里さんは、米軍基地周辺に特飲街が形成された復帰前の状況を挙げて「女性の人権と命が社会の秩序を守り、ドルを稼ぐための手段にされた」と指摘した
▼シンポジウム翌日にノルウェーノーベル平和賞の授賞式があった。受賞者は紛争下の性暴力と闘うイラク人女性ナディア・ムラドさんら2人。今年は彼女たちの活動が報じられ、世界的に戦時性暴力への関心が高まった
▼一方で沖縄では2年前にも米軍属による女性暴行殺人事件があった。軍隊による性暴力は過去の話でも外国の話でもない
▼95年の少女乱暴事件の後、県民は総決起大会で日米地位協定の見直しを求めた。しかし地位協定は改定されず、事件は起こり続ける。日本の社会は現在も女性の人権、命を「手段」にしていないだろうか。

<税を追う>米優位のFMS 防衛大綱に登場 実現は米頼み - 東京新聞(2018年12月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000130.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1021-13/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000130.html

米国の言い値で兵器を買わされているとの批判がある米政府の「対外有償軍事援助(FMS)」。政府が今月決定した新しい「防衛計画の大綱(防衛大綱)」や「中期防衛力整備計画(中期防)」に初めて、FMS取引の改善が盛り込まれた。米国製兵器の輸入が急増する中、価格が高く不透明というFMSの欠陥を無視できなくなったからだ。ただ、防衛省に秘策があるわけではない。改善は相変わらず米国頼みで、掛け声倒れで終わる可能性もある。 

 (「税を追う」取材班)

「調達の合理化を推進する」「装備品の取得や履行状況の適時適切な管理に努める」。大綱や中期防にFMSの改善が初登場したが、目新しい内容ではない。
防衛装備庁の調達部門の担当者は「大綱や中期防は防衛省の決意表明。そこに明記される意味はかなり重い」と受け止める一方、「現時点で、新たな改善策を持ち合わせているわけではない」と語る。
FMSを巡っては会計検査院から幾度となく、価格高騰の不透明さや納期の遅れが指摘されてきた。そのたびに米国に改善を求めているが、抜本的な解決には至っていない。この間、FMSによる兵器輸入額は契約ベースで、二〇一二年度の千三百八十一億円から一九年度は七千十三億円と大きく膨らんでいる。
「FMS取引が増え、日米双方でいろんな課題が共有されるようになった」。別の担当幹部は、変化の兆しを見て取る。
FMSの課題を話し合う日米のトップ級会議が、二年前に発足。今秋からは、兵器ごとの担当者会議の場で、米側に価格の内訳の提供を求めるようになった。
幹部は「まだ制約も多い。試行錯誤でやっている状態だ」と明かす。
新中期防で示された兵器購入リストには、ミサイル防衛システム「イージス・アショア」や戦闘機F35、早期警戒機E2Dなど米国の兵器がずらりと並ぶ。今後五年間でFMS取引はさらに増えそうだ。自民党国防族議員の一人は「現状の日本の技術力で作れない装備品は米国から買うしかない」とこぼす。
防衛省にとって賢い買い方ができなければ、自分の首を絞めかねない。航空自衛隊の元空将は「FMSは日本だけを相手にした制度ではなく、米国にとって最適と思われるやり方で運用する。日本との取引が優先されるとは限らない。大綱にどう書くかより、情報収集力と交渉力を強化する体制を作ることが大事だ」と指摘する。

<死刑を考える>(中) 〜囚人とその家族〜 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000173.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1022-37/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000173.html

十月二日発足の第四次安倍改造内閣の法相ポストに、オウム真理教元幹部十三人の死刑執行を命じた上川陽子氏の名前はなかった。後任の法相となったのが元検察官の山下貴司氏。就任後の記者会見で「死刑もやむを得ない」と述べていた。
東京拘置所に収監中の伊藤玲雄(れお)死刑囚(44)は翌三日、こんな手紙をしたためている。<根っからの検事畑の人種で、どうにもならないのか。逆に、エリートとしての法や権力への節度が期待できるのか><死刑行政にどの程度影響があるのかも判断がつかない>−。
あいさつもそこそこに、新法相の死刑へのスタンスを探る文言が並んでいた。手紙を受け取った大河内秀明弁護士(76)は「なんとか死刑を回避したい」という強い焦りを感じ取った。
伊藤死刑囚は二〇〇四年に東京都内で起きた架空請求詐欺グループの仲間割れ事件で、四人を殺害したとして殺人罪などに問われ、一三年に死刑が確定した。
度重なる手紙からは<一刻も早い再審請求を><危機感をもって捉えていかないと、取り返しがつかないことになる>と刑執行を何とか回避したい思いが透ける。一五年一月、請求していた恩赦も「不相当」に。今は、明日が最期かも、とおびえる生活を送る。
大河内弁護士は「本人は『自分の意志が弱く及んでしまった犯行。筆舌に尽くせないような悔恨が残り、つぐなっても、つぐないきれない』と深く反省している。それでも生きたいという思いは消せないのだろう」と心情をおもんぱかる。
だが、事件で息子を殺された東京都杉並区の無職山口斌郎(しげお)さん(75)は「命で罪を償うのは当然。生きているうちに執行してもらい、息子に報告したい」と切り捨てた。
東京拘置所には、大河内弁護士が弁護人を務める死刑囚がもう一人いる。一九八八年、横浜市鶴見区で金融業の夫婦を殺害し、現金を奪ったとされる高橋和利死刑囚(84)。「死ぬのは怖くない。でも汚名を着せられたまま死ぬのは無念」が、支援者の岩生美鈴さん(58)らへの口癖だ。
捜査段階で「ここで仮に認めても、やってないのなら裁判で無罪になる」と迫られ自白。公判では否認に転じ、今は再審請求審で争う。

<面会ありがとう。遠かったでしょう><足や緑内障の具合はどう>。妻の京子さん(84)に宛てた手紙には、相手の身を案じる言葉ばかりが並ぶ。
三十代で結婚。訳があって、京子さんのおい二人を家族同然に育て上げた。捨て犬を動物病院に連れて行ったこともあった。京子さんは「生き物の命を大切にする人。人を殺すような人間ではない」と信じる。
事件後、京子さんの周りからは人がいなくなった。同じ趣味の友だちも、お金を貸してあげた知人も。隣家から「のぞいたでしょ」と言いがかりをつけられたこともあった。
長年連れ添った夫と離れ離れになって三十年余り。「いつ執行があってもおかしくない」と覚悟しつつ、ふいに不安が強まることもある。「もしかしたら明日かも」と。

「言葉ずらし」見破って 「政府の言い換え、今も昔も」 - 東京新聞(2018年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000262.html
http://web.archive.org/web/20181227103311/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000262.html


空母の性能を満たしていても「多用途運用護衛艦」? 政府が言葉を本来の意味、用法からずらして、実態を隠すことを「言葉ずらし」と呼び「戦争中と変わらない」と主張するのは、グリム童話など昔話の研究者で筑波大名誉教授の小澤俊夫さん(88)=川崎市多摩区、写真、山本哲正撮影。新著「日本を見つめる」で、言葉ずらしを痛烈に批判、「戦争中に事実を隠した政府は日本を破滅に導いた。子どもたちのためにも権力者の言い換えに惑わされず真実を見極めたい」と語る。(山本哲正)
小澤さんは自ら編集する季刊誌「子どもと昔話」に毎回、時事評論を掲載。新著は二〇〇四〜一八年分からの三十編をまとめ、戦争中から現代まで、約二十個の言葉ずらしの例を示した。言葉の持つ意味を正確に調べて、昔話を研究・継承する立場からは「けしからんことばかり」という。
戦争中の一例が一九四一年の真珠湾攻撃だ。「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入(い)れり」とラジオから流れる臨時ニュースを小澤さんは聞いた。「こちらから攻撃を仕掛けたのに、自然に戦闘という状態に入ったんだと。台風の暴風圏に入ってしまったかのようで、主体をごまかす言葉ずらしだ」と指摘する。
四五年の「終戦」も、戦争責任を追及されないよう「敗戦」から言い換えた国指導部の「さかしい知恵」とみる。
「今も、市民に問題を直視されないようずらしている」。自衛隊が派遣された南スーダンで一六年七月に起きた政府軍と反政府勢力の戦闘に対し、安倍晋三首相が同年十月の参院予算委で「戦闘行為ではなかった」「衝突という表現を使っている」と答弁した例を挙げ、「とんでもない論法だったことは、今年明るみに出た派遣部隊の日報に『戦闘』と書かれていたことが示している」と話す。
今月公表した中期防衛力整備計画で海上自衛隊護衛艦「いずも」を改修し空母化する際の呼称を「多用途運用護衛艦」とすることにも「さっぱり分からない言葉を使い攻撃性を隠そうとする」と手厳しい。
「言葉をずらして本質を見せない技法は、政治家、高級官僚たちが経験を重ねてしっかり身につけてきた『国民操縦法』」と看破する小澤さん。「私たちも、だまされた体験を無駄にしないこと。権力側の試みを鋭く見破って日頃から話題にし、そんな国民操縦法を拒否していこう」と市民に呼び掛ける。

<おざわ・としお> 1930年、中国・長春生まれ。東北大大学院修了。東北薬科大講師、助教授を経て日本女子大教授、筑波大副学長などを歴任。グリム童話の研究に始まり、口承文芸理論を日本に紹介。日本の昔話の分析的研究も進める。2007年、ドイツのヴァルター・カーン財団が昔話などの研究に貢献した人に贈るヨーロッパ・メルヒェン賞を受賞。指揮者小澤征爾さんは弟。

(政界地獄耳)入管法、これじゃ地方自治体奴隷法だ - 日刊スポーツ(2018年12月28日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812280000109.html
http://archive.today/2018.12.28-015704/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812280000109.html

★栃木県議・松井正一が4カ月後に迫った改正入管法についての不安をブログでつづっている。「入管法改正に関する『外国人受け入れ拡大に伴う問題点』は数多く考えられています。『都市部への人材偏在』は、最低賃金や居住環境等、社会インフラ不足の郊外部に不利な状況であり、政府案では『受け入れ状況を3か月ごとに公表し、業界団体と調整』と示していますが、実効性は疑問です。『生活相談をどうするのか』では、『自治体への通訳配置や外国語での行政情報提供』とのことですが、通訳人材の確保や予算、行政情報に対する多言語化予算等はどうするのか等疑問が数多くあります」。

★同様の疑問は全国の自治体と同議会に共通する不安だろう。4月から始まるのに予算措置が追い付かない。その予算審議はこれから議会で行われるが、全くどういうものになるのかわからない。本来ならば政府が示して議会に問う入管法改正はろくな審議時間も持たず、示すプランも法務省からなく強行採決で決まった。それを政府は25日に閣議決定した。立憲民主党幹事長・福山哲郎は「外国人労働者や現場の自治体への支援もはっきりしない」とし、共産党書記局長・小池晃は「4月実施ありきで突き進んだ結果、異様な政策決定の形になった」といびつな議論を批判した。

★政府は地方の人手不足解消が急務だからと施行を急いだが、その答えは「やりますやりますやってます」でしかない。地方のためなのに地方が不安を持つのならば、制度設計に間違いや準備期間が足りないのだろう。この入管法改正は外国人労働者をあたかも奴隷のように扱う奴隷法とまでやゆされたが、これでは同法は地方自治体奴隷法でもある。(K)※敬称略

栃木県議・松井正一が4カ月後に迫った改正入管法についての不安をブログでつづっている。
「まっちゃん」日記
外国人受け入れ拡大に伴う問題点
https://blog.goo.ne.jp/matsuishoichi/e/e7d0dd7a20c5f94e8662219ca3cf70a7
入管法改正に関する「外国人受け入れ拡大に伴う問題点」は数多く考えられています。「都市部への人材偏在」は、最低賃金や居住環境等、社会インフラ不足の郊外部に不利な状況であり、政府案では「受け入れ状況を3か月ごとに公表し、業界団体と調整」と示していますが、実効性は疑問です。「生活相談をどうするのか」では、「自治体への通訳配置や外国語での行政情報提供」とのことですが、通訳人材の確保や予算、行政情報に対する多言語化予算等はどうするのか等疑問が数多くあります。政府は、来年4月から導入すると共に、向こう5年間で34万人超えの受け入れを求めており、各業種ごとの数も示しています。臨時国会で拙速に成立した入管法改正。当初からこのような問題点が多く、この法律制定によって受け入れ事務等を担う地方自治体が困惑することを指摘してきましたが、改めて政府の閣議決定した基本方針を確認し、地方自治体の対応が心配です。政府はしっかりとした方針と予算の伴った対応策を示すべきです。

大学法人統合 学生のメリット示して - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122802000154.html
https://megalodon.jp/2018-1228-1024-48/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122802000154.html

名古屋大と岐阜大が、全国で初めて大学運営法人の統合で基本合意した。他地域でも同様の協議が進む。経営効率化や教育研究機能の強化のためという。学生や受験生へのメリットも示してほしい。
全国の国立大は二〇〇四年度から「文部科学省に縛られず、教育や研究が自ら考えやすくなるように」と同省の直轄から個別の法人運営に変わった。今回は名大と岐阜大を運営するそれぞれの法人を一つにまとめる。
それが可能になる法改正が来春行われる予定。両大学は二〇年度に統合した新法人「東海国立大学機構」(仮称)を設立する考えだ。他地域では「静岡大と浜松医科大」「小樽商科大と帯広畜産大、北見工業大」「奈良教育大と奈良女子大」の三組が協議中という。
名大と岐阜大によると、統合のメリットは、運営のむだを省くこと。事務管理部門や語学などの授業を共通化し、余裕のできた教職員や財源を専門的な研究と教育に振り向ける。共同研究が盛んになれば、産・官・学の連携がより進むとみている。
規模も大きくなる。学生数は、名大一万五千八百人、岐阜大七千三百人。足すと、国立大では東京大、大阪大に次ぎ三番目に多い二万三千百人になる。名大は今春、予算面で集中支援される「指定国立大学法人」の一つに選ばれた。岐阜大との統合構想が選定の引き金になったという。
両大学はメリットだけでなく、法人統合の課題も挙げた。「意思決定の遅れや二度手間につながらないか」「共通化で教職員の負担が増さないか」「新法人設立後の混乱と混沌(こんとん)はないか」−など。
名大の松尾清一学長は「できるだけ排除する」と述べたが、具体策はこれからだ。岐阜大側には「規模の大きな名大に吸収されるのではないか」との懸念もある。岐阜大の森脇久隆学長は「少子化で地方大学を取り巻く環境は厳しくなる。統合で共同研究が増えれば、本学にはチャンスだ」と前向きに話すものの、学生や受験生、OBらに不安は残る。
大学名や現在の学部、入学定員はそのまま。入試は今まで通り別々に行われる。学生や受験生には統合の利点がよく見えない。
ノーベル賞研究者を何人も輩出した名大。地域に根ざした教育や研究を続ける岐阜大。“越県統合”の両大学は規模も学風も得意分野も異なる。改革のフロントランナーとして、学ぶ者へのメリットを分かりやすく示してほしい。

全漁連「海への放出反対」 トリチウム水、再議論要求 - 東京新聞(2018年12月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000134.html
https://megalodon.jp/2018-1228-0905-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000134.html

全国漁業協同組合連合会(全漁連)の大森敏弘常務理事が共同通信のインタビューに応じ、東京電力福島第一原発で汚染水を浄化処理した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水の処分について「海洋放出には反対だ。地上で保管を続けるべきだ」と述べた。政府や東電は海洋放出など複数の処分方法を検討しているが、全国組織の漁業者団体が反対姿勢を明確にしたことで処分方法の決定に向けた議論に影響を与えそうだ。
トリチウムの処理水については、政府の小委員会が海洋放出を含めた五つの処分方法の絞り込みに向けた検討を進め、海洋放出が有力視されている。大森氏はこれまで汚染水対策に「漁業者として協力できることは協力してきた」と強調した上で「結論ありきで強引に進めるなら、私たちとしても厳しく立ち上がらなければならない」と抗議する構えを見せた。また、今年八月にタンクに保管中の処理水で、取り除いたはずのトリチウム以外の放射性物質濃度が基準値を上回っていたことも判明。大森氏は「小委員会の議論の前提が崩れた」と指摘し、処理水を処分する選択肢に長期保管を加えた上で、議論し直すべきだと強調した。
トリチウムは人体への影響は極めて軽微とされ、通常の原発でも海に排出している。原子力規制委員会の更田豊志(ふけたとよし)委員長はタンクでの長期貯蔵が廃炉作業に影響を与えると懸念を示し、処理水を海洋放出するよう東電に求めている。
一方、福島県の漁業は試験操業が続き、本格再開に至っていない。海外では韓国や中国など二十五カ国、地域が福島県をはじめ幅広い地域の水産物や農産物の輸入の停止や規制を継続しており、風評被害が根強い現状がある。

総崩れの原発輸出 官邸・経産省の責任は重い - 毎日新聞(2018年12月25日)

https://mainichi.jp/articles/20181225/ddm/005/070/033000c
http://archive.today/2018.12.25-113237/https://mainichi.jp/articles/20181225/ddm/005/070/033000c

安倍政権が「成長戦略」の柱に据える原発輸出事業が、総崩れの様相を呈している。
東京電力福島第1原発の事故後、各国の安全基準が厳格化して建設コストが高騰したほか、反原発の意識も高まったことなどが原因だ。
輸出事業は事実上、破綻したと言わざるを得ない。原発を巡る環境が激変したにもかかわらず、輸出の旗を振り続けた経済産業省首相官邸の責任は重い。
「もう限界だ」。日立製作所の中西宏明会長が、会長を務める経団連の定例記者会見で、日立の英国での原発新設計画について、継続は困難との認識を表明した。
成長戦略にはなりえず
日立は政府と一体になって新設計画を進めてきた。英原発子会社を通じ、英中西部に原発2基を建設し、2020年代前半に運転開始するはずだった。
しかし総事業費は安全対策費の増大で当初想定の2兆円から3兆円に膨らんだ。日立は、リスク分散のため大手電力会社などに出資を求めたが、採算性が悪化したために難航している。
早期に利益を確保するため、英国政府に要請した電気の買い取り価格の引き上げも、欧州連合(EU)離脱を巡る英政界の混乱が手伝って行き詰まっている。
事業を断念した場合、現地子会社に投資している日立の損失は約3000億円に達する見込みだ。
安倍晋三首相とエルドアン大統領の親密な関係から始まったトルコへの輸出も暗礁に乗り上げている。
三菱重工業などが、黒海沿岸に中型の原発4基を建設する計画は、耐震対策費などの増加で当初2・1兆円程度と見積もられていた総事業費が5兆円規模に増大した。
両国政府による追加支援が不可欠になったが、トルコ政府と折り合えなかったとみられる。
原発輸出は、安倍政権がアベノミクスの「成長戦略」の柱として、力を入れてきた。振り付けてきたのは経産省だ。
同省は、原発を電源構成の柱のひとつと位置づけ、原子力産業の保護・育成を図ってきた。
原発事故以降は、国内での原発新増設が見込めない中で、輸出によって原子力事業の規模を維持し、同時に関連技術や人材を継承するという思惑があった。
しかし、原発事故を契機に、世界の潮流は変わっていた。
安全対策を含めた原発の建設費が大幅に増大する一方で、太陽光発電などの再生可能エネルギーは、急速な普及拡大に伴ってコストを下げている。
原発の相対的な価格競争力は低下している。もはや「安い電源」とは言えなくなっているのだ。
国際エネルギー機関(IEA)によると、17年の全世界の原発新設投資は前年の3割にとどまった。世界的なエネルギー政策の流れは脱原発、再エネ重視に向かっている。
脱依存への転換が急務
経産省の後押しを受けて米ウェスチングハウスを買収した東芝が、米国での原発事業に失敗し、巨額の負債を抱えたのは、こうした潮目を読み誤ったためと言えるだろう。
原発輸出を巡っては12年に、リトアニアで日立の建設計画が国民投票で否決され、16年にはベトナムで、計画が白紙撤回された。
インドとは、核不拡散の観点から不安視する声が出たにもかかわらず16年に、輸出を前提に日印原子力協定を結んだ。しかし、いまだに計画は具体化していない。原発輸出は、以前から行き詰まっていたと言わざるを得ない。
そもそも、日本は史上最悪レベルの原発事故をひき起こし、数十年にわたる廃炉作業の道半ばにある。原発輸出を成長戦略の柱に据えることに対しては、国民の間からも根強い批判がある。
そこで政府は、経済成長に伴って電力需要が急増する途上国に、低コストの電気を供給して貢献するという大義を掲げてきた。しかし、建設コストの高騰で、その大義も失われたわけだ。
国内には、なお多数の原発が存在し、今後は廃炉作業も本格化する。優れた技術や人材は必要だろう。
しかし、このまま原発輸出に執着していては展望は開けない。政府は、世界の潮流を見据え、速やかな脱原発に向けて原子力政策を抜本的に見直すべきだ。

スルガ銀創業家、寄付で借金返済 38億円を充てる - 朝日新聞(2018年12月28日)

https://www.asahi.com/articles/ASLDW513DLDWULFA01G.html
http://archive.today/2018.12.28-000425/https://www.asahi.com/articles/ASLDW513DLDWULFA01G.html

シェアハウス融資の不正問題を起こしたスルガ銀行静岡県沼津市)は27日、創業家のファミリー企業への寄付を借金返済に充てるなどの不正があったとする報告書を公表した。スルガ銀は不正で損失が出たとして、創業一族の岡野光喜前会長ら現旧取締役5人に計約32億4400万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こした。シェアハウス問題での賠償請求に続く追加提訴となる。
スルガ銀が設置した取締役等責任調査委員会(委員長=小沢徹夫弁護士)の報告書によると、2012〜17年に計8回にわたり計47億円が美術品購入などの名目でファミリー企業に寄付され、うち38億円が別企業を経由し、ファミリー企業のスルガ銀からの借金返済に充てられていた。寄付は岡野前会長の実弟の岡野喜之助・元副社長(故人)の主導で行われ、調査委は「銀行への返済資金などを融通することが目的だったことは明らか」と認定した。47億円分の寄付全額が損失だとした。
またファミリー企業が持つスルガ銀株について、同行からの借金の担保設定を15年に解除する際、回収すべき資金を求めず、6億円超の損害が出たという。