原子力機構 廃炉、70年間で1.9兆円 もんじゅなど79施設 - 毎日新聞(2018年12月27日)

https://mainichi.jp/articles/20181227/ddm/001/040/138000c
http://archive.today/2018.12.27-050526/https://mainichi.jp/articles/20181227/ddm/001/040/138000c


国立研究開発法人・日本原子力研究開発機構は26日、所有する89施設の9割に当たる79施設を今後70年間で廃炉・廃止するとし、費用は約1兆9000億円に上るとする試算を公表した。ただし完了までに必要な施設維持費などが含まれておらず、国民負担となる廃炉関連費用がさらに膨れあがることは確実だ。
機構は日本の原子力研究で中心的な役割を担っており、廃炉対象施設があるのは青森、茨城、福井、岡山の4県。計画では約70年間で老朽化した施設を廃炉にする。

東電元幹部3被告に禁錮5年求刑 強制起訴公判 - 毎日新聞(2018年12月26日)

https://mainichi.jp/articles/20181226/k00/00m/040/109000c
http://archive.today/2018.12.26-100254/https://mainichi.jp/articles/20181226/k00/00m/040/109000c

東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人に対する東京地裁(永渕健一裁判長)の論告公判で、検察官役指定弁護士は26日、勝俣恒久元会長(78)、武黒一郎元副社長(72)、武藤栄元副社長(68)の3被告にいずれも禁錮5年を求刑した。
3被告は、第1原発に大津波が襲来して事故が発生する可能性を予見できたのに対策を怠り、2011年3月の東日本大震災で事故を招き、福島県大熊町の双葉病院から長時間の避難を余儀なくされた入院患者ら44人を死亡させるなどしたとして起訴され、昨年6月の初公判でいずれも起訴内容を否認している。【蒔田備憲、柳楽未来】

大阪強殺、2人死刑執行 山下法相初 年15人、公表後最多並ぶ - 東京新聞(2018年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000256.html
https://megalodon.jp/2018-1227-1442-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000256.html


法務省は二十七日、一九八八年に大阪市投資顧問会社「コスモ・リサーチ」の社長ら二人を殺害し、一億円を奪ったとして強盗殺人罪などに問われた元暴力団幹部岡本(旧姓河村)啓三(60)、元投資顧問業末森博也(67)の両死刑囚=いずれも大阪拘置所=の刑を同日午前に執行したと発表した。十月に就任した山下貴司法相が執行を命じたのは初めて。岡本死刑囚は再審請求中だった。
死刑執行は、オウム真理教元代表麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=ら七人が七月六日に、残る幹部六人が同二十六日に執行されて以来となる。今年の執行人数は十五人で、法務省が執行の公表を始めた九八年以降、最多だった二〇〇八年に並んだ。
これで第二次安倍政権での執行は計三十六人。刑事施設に収容されている確定死刑囚は百九人になった。
山下法相は二十七日の臨時記者会見で、「誠に身勝手な理由から被害者の尊い命を奪った極めて残忍な事案。法の峻厳(しゅんげん)さと正面から向き合い、慎重な上にも慎重な検討を加えて刑の執行を命じた」と述べた。執行命令書には二十五日に署名したという。
確定判決などによると、岡本、末森両死刑囚は八八年一月、コスモ・リサーチ社員の渡辺裕之さん=当時(23)=に、大物相場師として知られた社長の見学和雄さん=同(43)=の自宅まで案内させ、見学さんを拉致して脅した上、一億円を奪って二人を殺害。遺体をコンクリートに詰めて、京都府内の山林に埋めた。
一審大阪地裁は九五年三月、求刑通り死刑判決を言い渡し、二審大阪高裁も支持。最高裁は上告を棄却し、二〇〇四年に死刑が確定した。

◆岡本死刑囚の弁護士「再審請求中になぜ急いだか」
岡本啓三死刑囚の弁護人だった池田直樹弁護士によると、岡本死刑囚は昨年一月、「計画的な犯行ではなかった。強盗した後に殺意が芽生えており、強盗殺人罪には当たらない」として再審請求をしていた。
池田弁護士は本紙の取材に「裁判所の判断を待つ中で、どうして急いで執行する必要があるのか理解できない。死刑判決は不当だと主張し続けてきたので、残念でならない」と話した。

<死刑を巡る議論> 最高裁はこれまでの判決で、死刑制度が憲法36条の禁じる「残虐な刑罰」に当たらないと判断している。旧民主党政権の2010年、当時の千葉景子法相は死刑を執行する一方、東京拘置所の刑場を公開。法務省内に死刑制度の在り方を検討する原則非公開の勉強会が設けられたが、12年に存廃両論を併記した報告書をまとめて終結した。内閣府が14年に実施した世論調査では、制度容認が80・3%で、廃止を求めたのは9・7%だった。

元暴力団幹部ら2人の死刑執行 - 共同通信(2018年12月27日)

https://this.kiji.is/450821211804157025
http://archive.today/2018.12.27-051642/https://this.kiji.is/450821211804157025

93年以降、1年で最多
法務省は27日、1988年に投資顧問会社社長ら2人を殺害し、強盗殺人などの罪に問われた元暴力団幹部岡本(旧姓河村)啓三死刑囚(60)と元投資顧問業末森博也死刑囚(67)=いずれも大阪拘置所=の刑を同日午前に執行したと発表した。山下貴司法相が就任後、初めて命令した。関係者によると岡本死刑囚は再審請求中だった。
オウム真理教による一連の事件で、松本智津夫元死刑囚=執行時(63)、教祖名麻原彰晃=らが7月に執行されて以来。今年の執行人数は計15人となり、一時的に中断していた死刑が再開された93年以降、最多だった2008年の15人に並んだ。

2人に死刑執行 - NHK(2018年12月27日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181227/k10011761141000.html

政府関係者によりますと、27日午前、2人の死刑囚に刑が執行されました。山下法務大臣になって死刑の執行は初めてです。
第2次安倍内閣発足以降で死刑が執行されたのは、ことし7月下旬にオウム真理教の一連の事件で死刑が確定していた6人に執行されて以来、15回目で、合わせて36人になりました。

<死刑を考える>(上) 〜オウム事件より〜 - 東京新聞(2018年12月27日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000137.html
https://megalodon.jp/2018-1227-0932-58/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000137.html

今年七月、オウム真理教の死刑囚十三人全員の刑が執行された。世界で死刑廃止の流れが進む中、大量執行は国内外に大きな衝撃を与えた。だが、国内ではその後、死刑制度の存廃を巡る大きな議論にはつながっていない。このままでいいのか。関係者を訪ね歩き、考えた。
数十年前の冬の朝、静まり返った東京拘置所の刑場。刑務官が、目隠しされた男の首に太いロープをかけた。幹部職員が手を上げたのを合図に、別室の刑務官三人が三つのレバーを同時に引く。「バーンッ」。男の体重を支えていた一メートル四方の踏み板がはじけるように開き、体が床下に消えた。
落下の反動で、ロープが振り子のように大きく揺れる。執行に立ち会っていた元刑務官の野口善国弁護士は、両手でロープを固く握り、動きを止めた。床下をのぞくと、医務官が男の胸に聴診器を当てていた。
野口弁護士は「心臓がドクン、ドクンと動いていた。今ならまだ助かると思った」と振り返る。人の命を奪った強盗殺人犯の最期。「正義の実現とはいえ、人が人を殺す現場だった」。その音と光景は、今も脳裏に焼き付いて離れない。
「この日、この時が来ました。長い道のりだったけれど…」。オウム真理教元代表麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=の刑が執行された今年七月六日、静岡県掛川市の小林房枝さん(76)が日記にこう記した。一九九四年六月の松本サリン事件で次男豊さん=当時(23)=を奪われた。
一貫して求めてきた死刑。「何の罪もない息子が殺された。死刑で責任を取らせたいと願うのは、遺族として当然です。できることなら、刑場で執行のボタンを押したいくらいだった」と死刑存続を強く願う。
同事件で長男の友視さん=当時(26)=を亡くした千葉県南房総市の伊藤洋子さん(78)も、早期の執行を望んできた。執行後は報道各社の取材に「一つの区切りがついた。ほっとした」と繰り返した。
だが、月日が過ぎ、自分にそう言い聞かせたかっただけなのかもしれない、と思うようにもなった。「死刑で息子が生き返るわけではなく、悲しみや苦しみも全く消えなかった」と、別の思いも交錯する。
八九年十一月の弁護士一家殺人事件で、同僚の坂本堤さん=当時(33)=を殺害された岡田尚弁護士はもともと、死刑反対の立場だった。しかし事件後、「安易に反対と言うのが正しいのか」と自問自答を繰り返すようになった。
当時、検事から被害者側の関係者として取り調べを受けたことがある。供述調書に押印する段階で、「当然、(求めるのは)極刑でよろしいか」と問われ、返答に詰まった。考えた末、「厳罰で」と逃げた。
「自分が人権派弁護士のファッションとして、死刑反対を唱えていただけだと感じ、ショックだった」。その後、死刑についての議論を避けるようになった。
死刑制度への態度が固まるきっかけは、皮肉にも、同僚をあやめたオウム元幹部たちの大量執行だった。岡田弁護士は「国家が十三人もの命を奪い去った。目が覚めた。執行後も心は晴れない。やはり死刑は野蛮な行為だ」と語り、こう続ける。
「事件で被害者の命が奪われたが、死刑も命を取るという意味では全く同じ。違うのは、その主体が国家だということです」 (この連載は、奥村圭吾、蜘手美鶴が担当します)

揺らぐ国際協調主義 IWC脱退 - 東京新聞(2018年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122702000148.html
https://megalodon.jp/2018-1227-0940-59/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122702000148.html

日本のIWC脱退通告は、国際舞台でこれまで日本が堅持してきた国際協調主義や国際ルールの順守といった基本方針との整合性に疑義が生じる懸念をはらむ。政府は対外的な説明に努めるが、今後の外交交渉に影響する恐れもある。 (大杉はるか)
日本は多国間会議などで国際協調を重視する姿勢を貫いてきた。十一月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、貿易を巡る米中対立の激化で首脳宣言の採択が見送られる中、安倍晋三首相は多国間の枠組みでの自由貿易推進を呼び掛けた。
中国による南シナ海への進出や、韓国最高裁の元徴用工訴訟判決などでは、日本は国際ルールの尊重を訴えて、相手国への抗議を繰り返している。だが、IWC脱退は、これまでの対応とは方向性が違うと国際的に受け取られかねない。
これに対し外務省は、IWCにオブザーバーとして残る方針を明らかにした。担当者は記者団に「IWCに背を向けるのではない。法の支配や多国間主義の尊重は変わらない」と強調。脱退すれば国際機関を通じた鯨類の保存・研究を規定する国連海洋法条約に反するとの見方にも、オブザーバーとして出席を続けることで違反しないと反論する。
日本政府としては、再開する商業捕鯨の新たな捕獲枠はIWCの算出方式に従うことや、南極海、南半球での捕獲は行わないなど、国際協調に配慮する姿勢を見せることで、関係各国に理解を求める考えだ。
外務省幹部は「感情的な反発もあり得るが、説明を尽くす」と話す一方、「これで万事安心というつもりはない」と不安ものぞかせる。

国会に説明なく、憲法軽視 IWC脱退 早大・水島朝穂教授 - 東京新聞(2018年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122702000147.html
https://megalodon.jp/2018-1227-0942-23/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122702000147.html

日本政府のIWC脱退決定について、水島朝穂早大法学学術院教授(憲法学)は、憲法の観点から問題点を指摘する。

  × × × 

国際機関への加盟の根拠となる条約の締結について、憲法七三条は、事前もしくは事後の国会承認が必要としている。その趣旨からすれば、条約や国際機関からの脱退も国政の重大な変更であり、国会での議論抜きにはあり得ない。
だが、安倍政権はIWCからの脱退について、野党や国民にきちんとした説明をしないまま、臨時国会閉会後に決めてしまった。
国際機関からの脱退を内閣が勝手に行い、国会にも説明せず、記者会見もすぐに開かない。この「聞く耳を持たない」姿勢は一貫しており、安倍政権の「国会無視」「憲法軽視」の姿勢の到達点ともいえる。
憲法六六条が定める)内閣が国会に連帯して責任を負うという意味は、国民にきちっと説明するということだ。
IWCからの一方的な脱退は、憲法九八条が掲げる「国際協調主義」を捨て去る最初の一歩になりかねないと警鐘を鳴らしたい。

IWC脱退 国際協調に影を落とす - 朝日新聞(2018年12月27日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13828801.html
http://archive.today/2018.12.27-004327/https://www.asahi.com/articles/DA3S13828801.html

結論も、そこに至る議論の過程も納得できない。
政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決めた。来年7月から、日本の領海と排他的経済水域内で、商業捕鯨を再開するという。
IWCは、鯨の保存(保護)とともに、捕鯨産業の秩序ある発展を目的としている。資源量の多寡にかかわらず捕鯨を否定する反捕鯨国の主張は、確かに条約の趣旨から逸脱している。
だが、日本は各国間で主張の相違があっても、国際協調主義や法の支配を基本において、問題の解決にあたる姿勢をとってきたはずだ。自国の主張が通らないからといって、国際条約から脱退するという判断はこれに背く。日本の外交にマイナスの影響を与えかねない。
漁業に限ってみても、資源の国際管理は重要性を増している。国際協調を軽視すると見られれば、今後の交渉での不利益につながる懸念もある。
今回の決定に伴い、日本は南極海などでの調査捕鯨を期間の途中で中止する。調査捕鯨は事実上の商業捕鯨と批判され、2014年には国際司法裁判所で「科学目的とはいえない」とされて敗訴したが、捕獲頭数を減らすなどして再開していた。
批判に耳を傾けた結果として調査捕鯨をやめ、南極海から撤退するというのであれば、対話の糸口になるだろう。だが、水産庁は「日本が商業捕鯨を再開する以上、続ける必要がなくなった」と、自国の都合を中心にした説明をしている。
その「商業捕鯨の再開」のあり方も疑問が残る。国連海洋法条約は鯨類の保存や管理について、国際機関を通じて活動すると定めている。政府は、脱退後もオブザーバーとしてIWCに参加すればこの条件を満たすと説明するが、国際的に受け入れられるだろうか。
今回の脱退決定にあたって政府は国民に開かれた議論を避けてきた。9月のIWC総会で、商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を限定的に解除するという日本提案が否決された後、政府は「あらゆるオプションを検討する」との説明を繰り返すだけだった。そのまま脱退を閣議決定し、翌日公表した。
国会での突っ込んだ議論はなく、審議会などのプロセスも経ていない。現段階でも、商業捕鯨再開後の捕獲頭数は「IWCで採択された方式により算定する」とするだけで、具体像が示されていない状況だ。
様々な論点が残るにもかかわらず、なぜ性急に脱退に突き進んだのか。説明が求められる。

(大弦小弦)「1933年に国際連盟を脱退し、日本は国際的な孤立を…2018年12月27日

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/364695
https://megalodon.jp/2018-1227-0944-36/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/364695

「1933年に国際連盟を脱退し、日本は国際的な孤立を深めていきました」と現在の中学歴史教科書は書く。次ページの見出しは「戦争につき進む日本」。孤立と軍国主義が何を招いたかが理解できる

▼自国の主張が通らないからと国際機関を抜け、対話を閉ざした結果、破滅に至った。過ちを繰り返すまいと誓って歩んだ戦後の国際協調路線ではなかったのか

▼日本の国際捕鯨委員会脱退のニュースに85年前の史実が頭をよぎった。単純に同一視できないが、自国の「正論」を押し通そうと、国際的枠組みでの合意形成を拒む姿勢は共通する

排他的経済水域内の小規模な捕鯨であれば、脱退せずに妥協できる余地があったという。ではなぜ、と理解に苦しむ。商業捕鯨の再開で鯨肉の供給増加が見込まれるが、各国の反発を買い、国全体の国際的信用を損なう恐れがある。得るものに対し、失うものが大きすぎる

▼戦後日本の国際機関からの脱退はきわめて異例という。ネット上では海洋資源の管理の議論より、脱退そのものを感情的に喜ぶ声が目立つ。改憲や軍備増強の流れの中、漁業や食文化の問題だけにとどまらない国の「転換点」だと感じる

▼「2018年の脱退を契機に日本は孤立を深め、再び…」。未来の教科書にそう書かせないため、政治の動きに関心を寄せ続ける必要がある。(田嶋正雄)

(県民投票不参加)住民の権利は奪えない - 沖縄新報(2018年12月27日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/364696
https://megalodon.jp/2018-1227-0949-19/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/364696

米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長は、来年2月24日に予定されている県民投票への不参加を表明した。
議会の判断に従って首長が不参加を表明したのは、下地敏彦・宮古島市長に続き2人目となる。
投票事務に必要な補正予算案を26日までに可決したのは、34市町村。賛成少数で否決したのは宜野湾、宮古島両市を含め7市町。ここにきて県民投票の実施に暗雲が漂い始めているのは確かだ。
否定派の中には「県民の意思は多様で、複雑だ。賛成と反対の2択に集約することはできない」という声が多い。 「県民投票条例には普天間飛行場問題の原点である危険性除去の明記がない」との指摘もある。
分かってほしいのは、県民投票は、意識調査や世論調査とはそもそも性格が異なる、という点だ。
辺野古・大浦湾を埋め立て普天間飛行場の代替施設を建設することは、将来世代をも拘束する極めて重大な政策である。
同時に、普天間飛行場の危険性除去も先延ばしが許されない急を要する課題である。
この二つの側面について議論を深め、異なる意見にも耳を傾け、さまざまな情報を冷静に吟味し、討議や学習を重ね、主体的な判断で1票を投じる−そうやって県民の意思を確認するのが、県民投票の目的である。
首長が県民投票への不参加を決めた場合、憲法地方自治法に照らして重大な疑問が生じる。

    ■    ■

県民投票条例は、地方自治法に基づく住民の直接請求を受け、県が条例案を県議会に提出し、県議会の賛成多数で成立した。
県民投票に必要な経費は県が負担、市町村は関連予算を「義務的な経費」として市町村に計上し、市町村が実際の投票事務を担う。
議会が否決した予算案を長が再議に付すのは、議会の議決に異議がある場合だ。再議が県民向けの単なるポーズであってはならない。
選挙権と、さまざまな参政権は、民主主義や地方自治を維持するのに欠かせない最も基本的な権利である。
現職の議会議員は、県民投票を争点にした選挙で当選したわけではない。議員の反対でその地域の全有権者投票権が行使できないという事態は、地方自治の基礎を土台から破壊するのに等しい。
賛成反対だけでなく、白票も棄権も意思表示の一種である。そのような意思表示さえ不可能な「県民投票実施せず」の事態は避けるべきである。

    ■    ■

県民投票に法的な拘束力はない。どのような結果になっても辺野古埋め立ての方針は変わらない、と政府はけん制する。
「基地はもともと沖縄にあったんだから、本土が嫌と言っている以上、沖縄が引き受けるべきだ。その代償としてカネをもらえばいい」
本土側に目立つそのような発想をどう考えるか。県民投票はそうした問題を真剣に考え、望ましい沖縄の将来像を考える機会でもある。

県民投票不参加 政治的思惑排して判断を - 琉球新報(2018年12月27日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-854349.html
https://megalodon.jp/2018-1227-0948-17/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-854349.html

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票について、宜野湾市の松川正則市長が投票事務を行わない意向を明らかにした。市議会が関連予算を否決したことなどを理由に挙げている。不参加を表明した首長は下地敏彦宮古島市長に続いて2人目だ。
民主主義の手続きによって選ばれた首長が、何故に民主主義の根幹である投票権を奪うのか。住民の口封じを図るのは、民主主義の自殺行為にほかならない。ぜひとも再考してほしい。
松川市長は「市議会の意思は極めて重い。今後の市政運営を考えた場合、市議会との信頼関係は不可欠であり、その意に反して事務を実施することはいたしかねる」と説明した。それでいいのか。
首長と議会は車の両輪であり、一方が誤った判断をした場合、他方が正すというのが望ましい在り方だ。やみくもに議会に同調する姿勢は住民本位とは言えない。
松川市長は、条例案などに普天間飛行場の危険性の除去についての対処法が盛り込まれていないとして「投票結果によっては同飛行場の固定化につながる懸念が極めて強い」とも述べた。果たしてそうだろうか。
市街地の真ん中にある普天間飛行場が危険であることは日米両政府の共通認識だ。2003年に同飛行場を視察した当時のラムズフェルド米国防長官が強い懸念を示したほどである。固定化させることは、協議の前提条件を土台から崩壊させる愚挙であり、断じてあってはならない。
むしろ、「辺野古移設か、普天間固定化か」という乱暴な二者択一を受け入れることが、結果的に危険性の放置につながる。新基地建設の進捗(しんちょく)次第で普天間の返還が際限なく先送りされることを認めるに等しいからだ。
投票したくてもできない人が出てくると公平性が損なわれる。有権者は、自らの投票権を放棄することまで首長や議員に判断を委ねてはいないはずだ。
新基地建設は沖縄の将来を左右する重大案件である。埋め立ての賛否を問う意義は、いくら強調してもしすぎることはない。一方で、県民投票が一部地域を除く形で実施されれば、その意義が薄れるのも事実だ。県は全市町村で漏れなく実施できるようあらゆる手だてを講じるべきだ。
戦後、米統治下にあった沖縄では1968年に現在の知事に当たる主席の公選が実施されるまで、全住民の代表を直接選ぶことさえ認められなかった。主席公選は自治権拡大闘争の最大の成果だ。
当時、沖縄以上に民主主義のありがたさを知っている地域はなかっただろう。50年たって一部の首長、議会が住民の投票権を奪おうとしている。先人はどう見るか。
事は民主主義の根本に関わる問題だ。政治的な思惑を排し、手続きを進めてほしい。

<金口木舌>あなたの今年の流行語は? - 琉球新報(2018年12月27日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-854364.html
https://megalodon.jp/2018-1227-0946-43/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-854364.html

今年の流行語大賞カーリング女子の「そだねー」。流行語から記憶がよみがえる。思いつくままに沖縄の1年を振り返ってみた
▼学校現場の言葉も多かった。「地毛証明」は、校則で染髪を禁じている県立高校の多くが生まれつき髪の色が薄い生徒に提出させていた。人権侵害との指摘もある。「生理中の水泳授業」も問題だ
▼精神障がい者を自宅の小屋などに隔離していた「私宅監置」。人権を踏みにじった戦後史の闇だ。本土から遅れて沖縄では日本復帰まで容認された。跡保存の取り組みも始まっている
▼安全な暮らしが脅かされる事態も止まらない。米軍ヘリの窓が落ちた普天間第2小では、上空のヘリ飛行に児童の避難も日常化した。米軍ヘリが伊計島読谷村渡名喜村で不時着、F15戦闘機とFA18戦闘攻撃機が沖縄周辺海域で墜落した
▼華やかな話題もあった。安室奈美恵さん引退では改めて存在の大きさに驚かされた。人気グループ「DA PUMP(ダ・パンプ)」は「U.S.A.」が大ヒットし紅白歌合戦出場へ
▼県知事選では、玉城デニー知事が掲げた「新時代沖縄」が印象的だった。政府が強行する辺野古新基地建設現場の大浦湾の軟弱地盤を表す「マヨネーズ」は流行語のようになった。一貫して人権と自治の在り方が問われた1年だった。政府の強権には「そだねー」と応じるわけにはいかない。

(政界地獄耳)皇族の考えも退けた政府 - 日刊スポーツ(2018年12月27日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812270000165.html
http://archive.today/2018.12.27-014209/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812270000165.html

近現代史研究者・辻田真佐憲の指摘によれば16年10月から14回にわたって「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が開かれたが、その中で保守系有識者の1人が「天皇は祈っているだけでよい」との趣旨の発言をしたという。伝え聞いた天皇陛下は「ヒアリングで批判をされたことがショックだった」(毎日新聞17年5月21日付)と、お心を吐露している。象徴としての「公務」を否定されたからだ。また同会議が譲位は一代限りの特別措置を前提に進められたことに対しても「一代限りでは自分のわがままと思われるのでよくない。制度化でなければならない」「自分の意志が曲げられるとは思っていなかった」(同紙)とも。

★皇族の考えや発言はこれほどまでに、ほごにされるものなのか。秋篠宮さまは先月30日の会見で皇室行事の大嘗祭(だいじょうさい)について触れ「宗教色が強いものについて国費で賄うことが適当かどうかという時に私はやはり内廷会計で行うべきと思っている。宮内庁長官などにはかなり言っているが話を聞く耳を持たなかった」と発言した。そのプランとは収穫に感謝する毎年の新嘗(にいなめ)祭が行われている、国中の神々をまつる神殿である神嘉殿のことで「大嘗宮を建てず、宮中にある神嘉殿で執り行っても儀式の心が薄れることはないだろう」と提案したものの、先の代替わりの時に議論は尽くされたとして取り合わなかった。

★21日、宮内庁は「大嘗祭」の費用が27億1900万円と、前回より4億7000万円増加すると発表した。皇居・東御苑に新造される大嘗宮の設営費関連だけで19億700万円かかる。国民の中にいたいと考える皇族に対して、政府は「公務より皇居で祈っていろ。節約などの口を出すな」ということだ。政府は国民同様、皇族の考えも退けた。(K)※敬称略