福井中2自殺 元担任、過剰指導認める 「単なるエゴだった」 - 東京新聞(2018年10月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018101502000113.html
http://web.archive.org/web/20181015061953/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018101502000113.html

福井県池田町で昨年三月、町立池田中二年の男子生徒=当時(14)=が自殺し、町の調査委員会が「担任らの厳しい指導、叱責(しっせき)が原因」とする報告書を公表してから十五日で一年となるのを前に、当時担任だった男性が共同通信の取材に応じ、「今思えば単なる教師のエゴだった」と行き過ぎた指導があったことを初めて認めた。報告書では「(調査委の)聴取に『今まで教員をしてきて過信をしていた』と述べた」と記されている。
現在は教育現場を離れ、県の関連施設で働く元担任は十一日、約二十分にわたり取材に答えた。
生徒は昨年三月十四日朝、校舎から転落死。報告書は「担任や副担任は、生徒の性格や気持ちを理解せず、課題提出や生徒会活動の準備の遅れを理由に、担任は大声で叱責するなどし、副担任は執拗(しつよう)な指導を繰り返した」と指摘した。
「何でこういう結果になってしまったのかという自問自答の繰り返し。答えは出ていない」。生徒の自殺以来、他の指導方法があったのではと苦悩してきたという元担任。「同じような指導でうまくいった子どももいた」とする一方で、「結果がこうなったので、良いやり方だったとは思えない」と口にした。
報告書には「生徒は再三登校を嫌がり、家族に担任や副担任への不満を訴えていた。担任も対応を約束していたが、問題解決に向けた適切な行動をとらず、副担任とともに厳しい指導を繰り返した。その結果、生徒は逃げ場のない状況に追い詰められた」とも記載されている。
元担任は「報告書が正しいかはお答えできない。人の受け取り方だ」とした上で、「自分の思いが子どもに伝わっていなかったのは事実」と述べた。生徒や遺族に対しては「申し訳なくて何も言えない」と話した。
一方、生徒の母親は「(息子に)もう会えないんだという苦しさと悲しさに毎日耐えています」とつづった手記を寄せた。「一人でも多くの人が、将来ある尊い命が消えてしまったことを心にとどめていただきたい」とも訴えている。

<福井の中2男子自殺> 2017年3月14日朝、福井県池田町立池田中の校舎から、2年生の男子生徒=当時(14)=が転落死した。町の調査委員会は同年10月15日、担任らから厳しい指導を受けた精神的ストレスが原因の自殺とする報告書を公表。生徒が担任に大声で怒鳴られ、目撃した別の生徒が「(聞いている者が)身震いするぐらいだった」と証言したことなどが明らかに。福井地検は今年1月、市民団体が提出した校長や担任らに対する業務上過失致死容疑の告発状を受理。県教育委員会も校長や担任らの処分を検討している。

幼保無償化 給食のおかずは? このままだと…保育所無料、幼稚園実費 - 東京新聞(2018年10月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018101502000120.html
http://web.archive.org/web/20181015061855/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018101502000120.html


来年十月からの幼児教育・保育無償化を巡り、給食費を無償化の対象にするかどうかの議論が始まった。このまま無償化すると保育所だけ給食費の負担が減る仕組みになっており、全額実費徴収の幼稚園との間に格差が生じる。政府は給食費は無償化と切り離して実費徴収としたい考えだが、保護者や施設側から反発も予想され、難しい判断が求められる。
内閣府によると、無償化対象となる認可保育所などの子ども一人当たりの給食費は主食(ご飯など)が月三千円、副食(おかず)が月四千五百円。幼稚園は弁当持参の日もあるため園によって金額に幅があるが、全額実費で納める。保育所ではゼロ〜二歳は全額、三〜五歳は副食が保育料に組み込まれている。
来年十月から無償化の対象となる三歳以上で見ると、幼稚園に通う子は全額実費負担だが、保育所に通う子は主食のみの負担となり、不公平が生じる。
政府は五月にまとめた、認可外保育所などの無償化措置を考える検討会の報告書で、通園送迎費や給食費、行事費などは原則無償化の対象から外すべきだとの見解を示している。
今月九日に開かれた政府の子ども・子育て会議では「義務教育と同じように、基本的に自己負担でいいのではないか」「食育は教育の根幹で、実費徴収はなじまない」と、委員の間で賛否が割れた。全国私立保育園連盟の塚本秀一常務理事は「現在実費徴収していない保育所も徴収することになれば、(事務が増えるなど)現場は混乱する。未納への不安の声もある」として公費負担を求めた。
一方で、保護者の間には実費徴収になれば「どんな食材を提供しているか施設に聞きやすくなったり、調理に力を入れてくれたりするのではないか」との期待もある。

<幼児教育・保育の無償化> 2019年10月の消費税率10%への引き上げと同時に実施される。子どもの年齢によって無償化対象は異なる。3〜5歳児は所得制限を設けず、幼稚園や認可保育施設の利用を無料にする。ただし幼稚園は月2万5700円が上限。0〜2歳児の無償化は住民税非課税世帯のみ。認可外保育施設は3〜5歳児が月3万7000円(認可保育所の保育料の全国平均額)の補助で、自己負担が残る場合もある。

(筆洗)消費税率を引き上げる上に、老後のことは自分でも何とかしなさいよ - 東京新聞(2018年10月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018101602000138.html
https://megalodon.jp/2018-1016-0918-08/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018101602000138.html

落語の「真田小僧」に出てくる金ちゃんはずる賢い。こづかいをくれぬおとっつぁんにおっかさんの「秘密」を教えてやると持ちかけ、まず一銭、巻き上げる。
「おとっつぁんのいないときに白い服を着て色眼鏡をかけたキザな男が来た」「おっかさんが手を取って家に上げた」。おとっつぁんの気になるところで話を切ってはそのたびに「ここから先が聞きたきゃ、もう少し出しなよ」「ここから先を話すのは子どもとしてはとってもつらいんだ。もうちょっと…」。おとっつぁんは言われるがままにおあしを出してしまうが、結局、おっかさんのところに按摩(あんま)さんが来たというだけの話だった。
真田小僧」にしてやられている気がしてならぬ。安倍首相は十五日、消費税率を来年十月一日に現行の8%から10%へ引き上げる方針を正式に表明した。導入以来5%、8%と三度目の引き上げとなる。
「財政の危機だから」「社会保障制度を守るためだから」と言葉巧みに説得され、その度引き上げをがまんしてきたが、ついには10%である。
しかもこれで将来の社会保障制度は安泰かといえば、そんな話では毛頭なく、最近の政府税調では先細りしていく年金を背景に国民の「自助努力」を促す方針という。
消費税率を引き上げる上に、老後のことは自分でも何とかしなさいよでは無策と無責任さに真田小僧も顔を赤らめるだろう。

消費増税表明 無駄遣いをまず止めよ - 東京新聞(2018年10月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018101602000167.html
https://megalodon.jp/2018-1016-0919-07/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018101602000167.html

安倍晋三首相が来年十月からの消費税引き上げを表明し、大がかりな景気対策を指示した。しかし、増税する以上は徹底した無駄の排除、将来不安の払拭(ふっしょく)に努めなければ、国民の理解は得られまい。
二度も消費税増税を先送りしたため、国民の間では三度目もあり得るのではと半信半疑だっただろう。実施まで一年を切っての表明は遅すぎたぐらいだ。
計四年間も先延ばししたうえ、増税分の使途も財政再建に充てる分を幼児教育・保育の無償化に流用する。つまり消費税増税の根拠だった与野党の三党合意に基づく社会保障と税の一体改革は反古(ほご)にされてしまった。
だが、国民に増税をたのむ以上は、政府は最低限国民に約束すべきものがある。第一に無駄遣いを徹底的になくすことだ。
安倍政権は財政規律を失い、政府予算を膨張させてきた。典型的なのは二〇二〇年東京五輪パラリンピックの開催費用だ。国費は千五百億円のはずが、すでに八千億円が計上されたと会計検査院が指摘した。
五輪関連と銘打てば予算化が広く認められたためで、同じようなことが成長戦略をつくるたびに繰り返された。無駄の温床のようないいかげんな予算の使い方である。これでは国民は到底納得できるものではない。
次に税制のあり方である。消費税は景気に左右されず税収が安定的という利点がある。だが、豊かでない人の方がより負担が重くなるという決定的な欠点がある。
税の原則は、公平・中立・簡素である。公平という観点から、消費税に問題があることは言をまたない。
富裕層の課税を強化しなければとても公平な税制とはいえず、それには所得税最高税率を上げたり金融所得への課税を強化すべきだ。金持ち優遇のまま、取りやすい消費税の増税では国民多数の不信を買うばかりである。
最後に、将来の見通しである。消費税10%から先ということだ。
国民が知りたいのは、一体どこまで税率が引き上げられるのか、どこまで引き上げれば持続可能な財政、社会保障制度となるのかだ。
そのためには与野党であらためて協議体をつくり、広く合意を得ながら社会保障と税の一体改革を進めるべきだ。いったん合意したら政局にしないことだ。
公平公正な進め方でなければ国民の得心はいかないのである。

消費増税対策 何でもありは許されぬ - 朝日新聞(2018年10月16日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13724874.html
http://archive.today/2018.10.16-002026/https://www.asahi.com/articles/DA3S13724874.html

法律で決められた通り、消費税率は来年10月に10%に引き上げる。安倍首相がきのうの臨時閣議で、改めて表明した。
経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる政策を総動員して対応するとも述べた。
増税をはさんで生じる駆け込み需要と反動減をならし、景気の落ち込みを抑える必要はある。消費税には、所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」があるため、それをやわらげることも大切だ。
しかし首相が示した方針で、本当に必要な対策をつくれるのか、不安がよぎる。
対策の柱に掲げる中小小売店のポイント還元策は、消費者が商店街などでクレジットカードやスマホなど現金以外で買い物をすると、ポイントがつくことを想定する。かかる費用には国が補助金を出す考えだ。より多くの買い物ができる所得の高い人ほど得をし、カードやスマホが使えない高齢者などは、置き去りにされる可能性がある。
防災や減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策もとるというが、消費税対策として実施するのは筋違いではないか。
対策の目的を見失い、何でもありのばらまきの道へ進むことは許されない。
また、今回は食品などの税率は8%に据え置く軽減税率を入れるため、初めて消費税率が2種類になる。
買う人にも、お店で売る人にもわかりやすいしくみにできなければ、限られた財源を削って入れる措置が、かえって混乱を招くことになりかねない。
国税庁によると、コンビニエンスストアのイートインコーナーで食べる食品は外食と同じ10%だが、持ち帰りは8%で、どちらかはレジで判断する。実際に店内で食べていないかの確認や、2種類になる価格の表示法など、対応が店ごとに異なることも予想される。導入を決めた以上は円滑に進むよう、知恵を出さねばならない。
日本商工会議所の6〜8月の調査では、中小企業の約8割がレジでの対応や経理システムの変更などの軽減税率への準備をしていなかった。10%への引き上げは首相の判断で2回延期され、当初予定から4年遅れた。「今回も先送りするのでは」との見方が根強かったことと、準備の遅れは無縁ではない。
首相が改めて引き上げを表明したのは、現場に対応を促す狙いがあるだろう。
ならば首相自身がまず、国民に向かって明確に語るべきだ。
何のために増税するのか。税の将来像をどう考えるのか。

(私説・論説室から)連鎖する長時間労働 - 東京新聞(2018年10月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018101502000142.html
http://web.archive.org/web/20181015051707/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018101502000142.html

病院で働く医師や看護師ら職員にも子育て中の人はいる。働くには子どもを預ける保育所が要るが、その受け皿に施設内に院内保育所を設置する医療機関がある。全国に二千施設ほどあるとみられる。
ほとんどが認可外施設で、保育士たちは認可施設より給与はさらに低く、スキルを磨く研修機会も少ない。国の補助金も少なく運営は綱渡りだ。エアポケットのように支援が抜け落ちている。
特に心を痛めるのは休みが少なく長く働いていることである。保育士を疲弊させるばかりか、子どもたちの「育ち」にも影響する。
日本医療労働組合連合会医労連)が百二十一施設を調べた。回答したうち七割超が、通常の保育時間が「十時間以上」と答えた。「十三時間以上」も一割近くあった。
理由は、病院職員の長時間労働だ。休日や夜間も働く。災害時も病院は必要になるため保育所も開けることになる。
連鎖は続く。保育士にも子育て中の人はいる。その子どもを預かる保育所の職員にも影響する。「保育所が閉まる夜間や休日は夫や両親の助けを借りてなんとかやりくりしている」と医労連の八木沼菜穂さんは明かす。
医師の長時間労働の是正は今、議論されている。だが、医師だけの問題ではない。働き方の影響は社会全体に及ぶと理解し対策に取り組みたい。 (鈴木穣)

再審手続き 繰り返し整備を求める - 朝日新聞(2018年10月16日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13724875.html
http://archive.today/2018.10.16-002253/https://www.asahi.com/articles/DA3S13724875.html

客観的な証拠に目をつぶり、自白に過度に頼る。そんな捜査が冤罪(えんざい)を生み出したケースが、またひとつ積み重ねられた。
熊本県の旧松橋(まつばせ)町で33年前に起きた殺人事件で、懲役13年の有罪判決を受けて服役した男性(85)の裁判をやり直すことが、最高裁で確定した。無罪になるのは確実とみられる。
捜査段階で男性は、小刀に布きれを巻いて被害者を刺し、犯行後にそれを燃やしたと供述していた。ところが、その布きれと思われるものが検察に保管されているのを、再審請求の準備をしていた弁護団が見つけた。
さらに「被害者の傷と小刀の形状は一致しない」という新たな法医学鑑定が弁護側から提出され、熊本地裁福岡高裁は有罪の根拠がゆらいだと判断。最高裁もこれを支持した。
都合の悪い証拠を隠していたのではないか。そんな疑いすら抱いてしまう。客観事実に反する自白が生み出された経緯とあわせ、警察、検察は徹底的に検証する責任がある。
捜査当局が保有しながら当初の裁判には証拠提出されず、後に再審段階で無罪の決め手となる。そんな例が相次ぐ。
裁判員裁判の導入などをきっかけに、証拠開示の制度はかなり整備された。だが新しいルールは再審には適用されず、「大切な証拠が埋もれてしまっているのではないか」との懸念は、いまも拭えない。
松橋事件では、未提出の証拠を閲覧したいという弁護団の求めに検察がたまたま一部応じ、問題の布きれが見つかるという特異な展開をたどった。もし検察が違う対応をとっていたらと思うと、背筋が寒くなる。
再審手続きにおいて、弁護側はどんな権利を行使でき、検察は義務を負うのか。裁判所はいかなる権限に基づいて審理を進めるのか。朝日新聞の社説は、法令や規則ではっきり定めるよう繰り返し訴えてきたが、この事件を通じてその必要性はますます確かなものになった。
あわせて考えるべきは、検察官の不服申し立てのあり方だ。
今回、地裁が再審開始を決めた段階で、有罪の構図は明らかに崩れたにもかかわらず、検察は高裁、さらに最高裁での逆転をねらった。地裁の判断が確定するまでに2年あまりを要し、やり直し裁判はこれからようやく始まる。正義にかなう行為とはとうてい思えない。
冤罪は、人生を根底から狂わせる。それを晴らそうとする人の貴重な時間を奪い、二重三重に苦しめた責任を、検察は直視しなければならない。

(「新聞週間」に)偽情報検証 新たな責務 - 沖縄タイムス(2018年10月16日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/330433
http://web.archive.org/web/20181016002622/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/330433

9月30日に実施された県知事選はのちのち、「フェイク(偽)ニュース」が飛び交った初めての選挙として記憶されるかもしれない。
知事選は事実上の一騎打ち。辺野古新基地建設の是非を巡り、安倍政権が総力を挙げ、政府対県の構図が鮮明になった。熾(し)烈(れつ)な選挙戦になったこともあってフェイクニュースがネット上にあふれた。候補者の人格をおとしめるような誹謗(ひぼう)中傷も出回った。
今や会員制交流サイト(SNS)によって誰もが情報を発信することができる時代である。フェイクニュースを意図的に流し、それがツイッターリツイートされ、フェイスブックでシェアされる。瞬く間にネット空間に広がり、大量に拡散されていく。
真偽不明な候補者のネガティブ情報も有権者を惑わす。
これまでの知事選では見られなかった現象である。
公正な選挙は民主主義の根幹をなすことを考えればフェイクニュースは社会の基盤をむしばむ重大な問題である。
ある陣営の選対本部長が選挙中に「緊急告知」としてフェイスブックで「相手候補者にもリスペクトを払う」ことを促し、「建設的でない批判や個人攻撃したりする必要はない」と自重を求めたほどだった。野放し状態だったということである。
選挙の本来の姿は論争で政策を競い合うことだ。知事選は一方の陣営が公開討論に積極的でなく肝心な政策論争に至らず、フェイクニュースの量産につながった側面があった。極めて残念である。

■    ■

15日から「新聞週間」が始まった。本年度の代表標語は「真実と 人に寄り添う 記事がある」である。
作者で東京都の友野美佐子さん(59)は「インターネットにはない、ファクトを追求し人間の心を伝える記事をこれからも読みたい」と真実を伝える新聞への期待を語る。
知事選におけるフェイクニュースの横行は、沖縄タイムスにとってもほぼ初めての経験で専門家の意見を聞き、試行錯誤しながら検証した。ネット上からフェイクニュースの疑いのある68件を抽出。17件をピックアップし、ファクトチェック(事実確認)した3件を記事化した。
米軍基地に関するフェイクニュースもネット上に多い。事実に基づいて一つ一つ反論し『誤解だらけの沖縄基地』としてまとめている。
フェイクニュースをどういち早く打ち消していくか。新聞の新たな課題である。

■    ■

フェイクニュースは世界的現象である。2016年の米大統領選のトランプ氏当選に影響を及ぼしたと指摘されている。今も自身に批判的なメディアを攻撃。米メディアも報道の自由を訴える一斉社説の掲載で反論している。
昨年の仏大統領選では組織の枠を超え新聞社など30以上の団体がフェイクニュースの疑いのある記事について検証し公表したことがある。
メディアや専門家との連携が必要かもしれない。既存のメディア不信にも真(しん)摯(し)に向き合いながら、真実を追求し国民の「知る権利」に応える姿勢をあらためて自覚したい。

<金口木舌>新聞週間、変えたい思い - 琉球新報(2018年10月15日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-818632.html
http://archive.today/2018.10.16-002715/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-818632.html

「盗みにおびえ眠れず」「スラムは水不足、市営企業に援助求める」。見出しが躍るのはインドの首都ニューデリーの月刊新聞バラクナマ。記者たちはスラム街で暮らすストリート・チルドレンだ

▼題字の意味は「子どもたちの声」。非営利団体の考案で2003年に刊行し、ヒンディー語版と英語版がある。最新はことし5―6月号。読み書きができない子は情報提供役に徹し、収益は教科書やノートに充てる
▼子どもが薬物の運び屋をしたり、警官の指示で鉄道事故の遺体を片付けたりする。スラム街の実態を報道すると大手メディアも追い掛けた。「政府も社会も私たちを直視しない」。そう問い掛ける子どもたちは自ら伝えることで世界が変わると信じている
▼本紙は今年1―8月、連載「彷徨(さまよ)う 少年少女のリアル」を掲載し、生活困窮や虐待などに直面する県内の子どもたちの声を伝えた。「大人に話しても何も変わらない」。憤りはバラクナマと共通する
▼きょうから新聞週間が始まった。代表標語は「真実と 人に寄り添う 記事がある」。投稿者の女性は願う。「インターネットにはない、ファクトを追求し人間の心を伝える記事を読みたい」
▼子どもの目には、この世界と大人はどう映るのだろう。せめて「変わらない」との思いだけでも変えたい。一つの記事が社会を動かしたことも私たちは知っている。