(私説・論説室から)連鎖する長時間労働 - 東京新聞(2018年10月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018101502000142.html
http://web.archive.org/web/20181015051707/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018101502000142.html

病院で働く医師や看護師ら職員にも子育て中の人はいる。働くには子どもを預ける保育所が要るが、その受け皿に施設内に院内保育所を設置する医療機関がある。全国に二千施設ほどあるとみられる。
ほとんどが認可外施設で、保育士たちは認可施設より給与はさらに低く、スキルを磨く研修機会も少ない。国の補助金も少なく運営は綱渡りだ。エアポケットのように支援が抜け落ちている。
特に心を痛めるのは休みが少なく長く働いていることである。保育士を疲弊させるばかりか、子どもたちの「育ち」にも影響する。
日本医療労働組合連合会医労連)が百二十一施設を調べた。回答したうち七割超が、通常の保育時間が「十時間以上」と答えた。「十三時間以上」も一割近くあった。
理由は、病院職員の長時間労働だ。休日や夜間も働く。災害時も病院は必要になるため保育所も開けることになる。
連鎖は続く。保育士にも子育て中の人はいる。その子どもを預かる保育所の職員にも影響する。「保育所が閉まる夜間や休日は夫や両親の助けを借りてなんとかやりくりしている」と医労連の八木沼菜穂さんは明かす。
医師の長時間労働の是正は今、議論されている。だが、医師だけの問題ではない。働き方の影響は社会全体に及ぶと理解し対策に取り組みたい。 (鈴木穣)