沖縄県が埋め立て承認を撤回 再び国と法廷闘争へ - 琉球新報(2018年8月31日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794236.html
http://archive.today/2018.08.31-064758/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794236.html


米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り県は31日午後、仲井真弘多前知事による辺野古公有水面埋め立て承認を撤回した。
政府は2013年の埋め立て承認を受けて辺野古新基地建設を進めている。撤回でその法的根拠が失われ、工事が止まる。政府が当初17日を予定していた辺野古海域への土砂投入は当面不可能となる。
政府は、撤回の効力をなくす執行停止を裁判所に求めるなど法的な対抗策を検討している。県が「最大の切り札」としていた撤回に踏み切ったことで、辺野古新基地を巡る県と国の対立は再び法廷闘争に入り、重大局面を迎える。
県の渡嘉敷道夫基地対策統括監と松島良成土木整備統括監が31日、沖縄防衛局を訪れて撤回通知書を提出した。その後、富川盛武、謝花喜一郎の両副知事が記者会見を開き、判断の根拠などを詳しく説明した。
政府が法的措置に訴えて仮に執行停止が認められた場合、数週間から数カ月で工事が再開されるとみられる。
当初、早ければ17日に予定されていた埋め立て予定海域への土砂投入は、政府が開始時期を遅らせている。県が知事選や国の土砂投入よりも前に撤回を実行したことで、今後の政府の出方や裁判の行方が知事選にどう影響するのかも注目される。
8日に死去した翁長雄志知事は、亡くなる直前の7月27日、県庁で記者会見し、撤回手続きに入るよう関係部局長に指示したことを発表した。
会見で翁長氏は「20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に推し進めようとする政府の姿勢は到底容認できるものではない」と強い決意を示していた。
翁長知事の強い思いを受け、知事が亡くなった後も県は撤回手続きを進めてきた。【琉球新報電子版】

県、きょう承認撤回 埋め立て根拠消滅 国と県、再び法廷闘争へ - 琉球新報(2018年8月31日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794022.html
http://archive.today/2018.08.31-063122/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794022.html

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り県は31日午後、仲井真弘多前知事による埋め立て承認を撤回する。政府は2013年に仲井真前知事が埋め立てを承認したことを受けて辺野古新基地建設を進めている。撤回により承認の法的根拠が失われ工事が止まる。当初は8月17日から開始を予定していた辺野古海域への土砂投入は当面できなくなる。県が「最後の切り札」としていた撤回に踏み切るが、政府は工事再開へ法的対抗措置を講じる構えだ。辺野古新基地を巡る国と県の対立は再び法廷に入り、重大局面を迎える。
県は30日、31日に撤回に関する記者会見を開くと発表した。31日午後、県土木建築部の担当者が撤回処分の通知書を沖縄防衛局に提出する。提出後の午後4時から、富川盛武、謝花喜一郎の両副知事が会見し、詳しく説明する。建設予定海域に軟弱地盤の存在が明らかになったことや事前に決めた環境保全対策を実行していないことなどを処分の根拠にするとみられる。
県幹部は29日に協議し、31日に埋め立て承認を撤回する方針を確認した。翁長雄志氏の知事在任中の急逝や台風の影響で国が土砂投入を先送りしたことも踏まえ、県は慎重に撤回の時期を検討してきた。任期中に撤回すると明言していた翁長氏の遺志を尊重し、必要な手続きを終え、撤回処分に踏み切ることを決めた。
沖縄防衛局は対抗して撤回の効力をなくす訴訟を起こすなど対抗策を取る方針で、国と県は再び法廷闘争に入ることになる。国が裁判所などに執行停止を求めて認められた場合、数週間から数カ月で工事が再開される見通しだ。
翁長氏は7月27日、埋め立て承認を撤回する方針を表明し、8月8日死去した。翌9日、県は防衛局から撤回処分に関する意見を聞き取る「聴聞」を実施した。

(政界地獄耳)パラリンピック開く資格すらない - 日刊スポーツ(2018年8月31日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808310000262.html
http://archive.today/2018.08.31-015514/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808310000262.html

★ご記憶の方も多いだろう。駆け出しの記者の頃は日比谷公園前の合同庁舎のエレベーターには障がい者のエレベーターガールがいた。その時の感想は政府の中央官庁が率先して障がい者雇用を守り推進するという断固たる覚悟だった。中央省庁による障がい者雇用の水増し問題は国の33の行政機関のうち、障害者手帳などの証明書類を確認せずに職員を雇用率に算入していたのは、昨年6月時点で27機関の計3460人に上る。

障害者手帳を持っている人か医師の診断書で障害が認められた人に限られるが、各省庁は厚労省による制度の周知が不徹底だったとか、「個人情報ということで手帳を確認しづらかった」と姑息(こそく)な言い訳で自らの不作為を肯定化している。だがこれらの対応は我が国の障がい者の雇用のチャンスを妨げ障がい者への理解に目を背けたに他ならない。この国は2年後にパラリンピックを主催する。障がい者スポーツと障がい者雇用は一体だ。彼らは仕事をしながらパラリンピックを目指す。その彼らから雇用を奪い、大臣の言い訳と陳謝で事が済むと思っているのか。公文書を改ざんすることも昔からやっていたとうそぶく中央官庁の腐り具合はパラリンピックを開く資格すらない。

★09年。第173回国会における首相・鳩山由紀夫所信表明演説で「『人と人が支え合い、役に立ち合う『新しい公共』の概念』、あるいは『人を支えるという役割を、『官』と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかかわっておられる方々1人1人にも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観』ということになる」と訴えた。その時にはまだ官がここまで堕落しているとは思っていなかった国民も、今、鳩山の指摘に理解を示すのではないか。公の崩壊が止まらない。(K)※敬称略

第173回国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説 - 首相官邸(2009年10月26日)
https://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/26syosin.html

(「新しい公共」)

働くこと、生活の糧を得ることは容易なことではありません。しかし、同時に、働くことによって人を支え、人の役に立つことは、人間にとって大きな喜びとなります。
私が目指したいのは、人と人が支え合い、役に立ち合う「新しい公共」の概念です。「新しい公共」とは、人を支えるという役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかかわっておられる方々一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観です。
国民生活の現場において、実は政治の役割は、それほど大きくないのかもしれません。政治ができることは、市民の皆さんやNPOが活発な活動を始めたときに、それを邪魔するような余分な規制、役所の仕事と予算を増やすためだけの規制を取り払うことだけかもしれません。しかし、そうやって市民やNPOの活動を側面から支援していくことこそが、二十一世紀の政治の役割だと私は考えています。

新たな国づくりは、決して誰かに与えられるものではありません。政治や行政が予算を増やしさえすれば、すべての問題が解決するというものでもありません。国民一人ひとりが「自立と共生」の理念を育み発展させてこそ、社会の「絆」を再生し、人と人との信頼関係を取り戻すことができるのです。
私は、国、地方、そして国民が一体となり、すべての人々が互いの存在をかけがえのないものだと感じあえる日本を実現するために、また、一人ひとりが「居場所と出番」を見いだすことのできる「支え合って生きていく日本」を実現するために、その先頭に立って、全力で取り組んでまいります。

民法規定 二審も合憲 「嫡出否認訴え 夫のみ」 - 東京新聞(2018年8月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018083102000130.html
https://megalodon.jp/2018-0831-0915-42/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018083102000130.html


生まれた子どもの父親であることを法的に否定する「嫡出否認」の訴えを起こす権利を、夫のみに認めた民法の規定は男女同権を定めた憲法に反し、無戸籍となり不利益を受けたとして神戸市の六十代女性らが国に計二百二十万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は三十日、「規定は父子関係を早期に確定させ、子に利益がある」とし、憲法違反には当たらないと判断した。
その上で、請求を退けた昨年十一月の一審神戸地裁判決を支持、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
高裁判決は現行の嫡出推定制度の当否について「家族の在り方の問題で、伝統や国民感情を踏まえ立法裁量に委ねられるべきだ」とし、国の対応の必要性に言及。法務省は既に嫡出推定を否認する訴えを、夫だけでなく妻や子も起こせるよう、制度見直しの検討を始めている。
江口裁判長は、早期に父子関係を確定し子の身分を法的に安定させる利益は、生物学上の父子関係を一致させることより優先されると判断。嫡出推定の否認権は限定的であるべきで、扶養義務や相続関係が生じる夫にのみ与えた制度には一定の合理性があると認めた。
一方で、夫の不当な要求などで不利益を被ることがあり得る妻や子に否認権を認めることも不合理ではないと指摘した。
原告は六十代女性のほか、三十代の娘と八、四歳の孫二人の計四人。判決などによると女性は一九八〇年代、暴力を理由に当時の夫と別居し、離婚成立前に別の男性との間に娘を出産。民法の「婚姻期間中に妊娠した子どもは夫の子と推定する」との規定で、夫が法律上の父となるのを避けるため出生届を出さず、娘と、娘が産んだ孫二人が無戸籍となった。
娘は法的に結婚できず、孫には就学通知や健康診断の案内が届かなかった。三人の無戸籍は夫の死後、認知調停などを経て一六年に解消された。

「政治家発言 記録残すな」 経産省、公文書管理で指示 - 東京新聞(2018年8月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201808/CK2018083102000148.html
https://megalodon.jp/2018-0831-0928-55/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201808/CK2018083102000148.html


政治家や首相官邸、各省庁とのやりとりについて、経済産業省の複数の職員が「三月に上司から『今後は発言を一切記録に残すな』と指示された」と本紙に証言した。本紙が入手した経産省の内部文書にも、省内外の打ち合わせの記録について「議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と明記されていた。職員によると、四月以降、省内では公文書となる打ち合わせ記録には詳しい発言内容を残さなくなったという。 (望月衣塑子、藤川大樹、中沢誠)
森友学園加計学園などの問題を受け、改正された政府の公文書管理のガイドラインでは、行政の意思決定の過程を検証できるよう文書の作成を求めている。経産省の運用では十分な検証ができない恐れがある。
文書を作成した情報システム厚生課の担当者は「(公文書管理を所管する)内閣府に確認して決めた。一言一句残しておく必要がないという趣旨で、『一切残すな』という意味ではない」と主張。内閣府公文書管理課の担当者は「経産省には、後付けの検証ができれば全ての詳細な記録はなくてもいいと回答したが、『記録を一切残すな』との指示が併せて出ていたらガイドラインの趣旨からも外れており、問題だ」と指摘する。
本紙が入手した複数の文書には、「公文書管理について」との表題が付き、「平成30年3月 情報システム厚生課」と経産省で文書管理を担当する部署名が記載されている。いずれもガイドライン経産省の規則の改正を受け、四月から運用される文書管理の新たなルールを解説している。
複数の経産省職員によると、文書は三月に省内の会議で説明されたり、職員に配布されたりしたものだという。会議で文書の説明を受けた職員は、「上司から、今後は他省庁との会合や政治家など偉い人の前では一切メモを取らないように指示された」と明かす。
本紙が入手した文書には、「政策立案や事務・事業の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録」について、「『記録』は『いつ、誰と、何の打合せ』かが分かればよく、議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」「議事録のように、発言の詳述は必要はない」と記載していた。
加計学園の問題では、関係機関の協議が記録に残っていなかったため真相究明が阻まれている。

◆決定過程検証できず
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話> 行政文書は発言まで記録しなければ意思決定に至る過程を十分に検証できない。経産省の運用では、公文書管理の制度そのものが形骸化してしまう。森友・加計問題で政治家や省庁間のやりとりの文書が出てきたことが、政権にとって痛手になったため、自分たちに望ましい記録だけ残そうという意図を感じる。

<行政文書の管理に関するガイドライン> 行政文書の作成や保存の基準を定めた政府の方針。森友・加計問題などを受け、2017年12月に改正され、省庁内や外部との打ち合わせ記録は行政文書として作成するよう明記された。意思決定過程の検証に必要な文書は1年以上保存としたが、どの文書が該当するかは各省庁が決めるため都合の悪い文書を残さない可能性は残る。ガイドライン改正に基づき各省庁は規則を見直し、4月から新たな運用を始めている。

慰安婦問題「被害者目線で解決を」 国連委 日本に勧告 - 東京新聞(2018年8月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201808/CK2018083102000145.html
https://megalodon.jp/2018-0831-0916-51/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201808/CK2018083102000145.html

【パリ=竹田佳彦】国連人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)は三十日、旧日本軍の慰安婦問題で、日本政府に人権侵害として責任を認め、被害者目線で最終的な解決を確実に履行するよう勧告する報告書を発表した。二年後の定期報告書に解決に向けた詳細な取り組みを盛り込むよう要請した。勧告に拘束力はない。
報告書では、二〇一五年の日韓政府間合意が「被害者中心の解決策になっていない。生存している元慰安婦の意見が適切に反映されておらず、旧日本軍による女性への人権侵害の責任も明確に示されていない」と指摘。公人による慰安婦問題を矮小(わいしょう)化する発言へも懸念を表明した。
十六、十七日の審査で日本政府側は、日韓合意が慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決された」としていると指摘。着実に履行すると説明したが、委員から「不十分だ」などの発言があった。
昨年五月に誕生した韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、朴槿恵前政権が結んだ日韓合意について元慰安婦に対し「意見を聞かず、意図に反する合意をした」と謝罪。日本側に誠意ある対応を要求しており、報告書が日韓の新たな懸念材料になる可能性がある。
報告書では、日本のヘイトスピーチ対策に一定の評価を示したが、集会などで朝鮮半島出身者らに対して差別的な発言が続いていると言及。沖縄では米軍基地の存在により、女性暴行事件や民間区域での軍用機事故が起きていることにも懸念を示した。

<国連の人種差別撤廃委員会> 「人種差別撤廃条約」の履行状況を監視する委員会。条約締約国は差別撤廃へ具体的措置の実施を義務付けられ委員会の定期的な審査を受けなければならない。日本は過去3回、審査対象となり、2014年の前回審査では慰安婦問題やヘイトスピーチ問題で勧告を受けた。同条約は1965年に採択され、日本は95年に加盟。現在179カ国・地域が加盟している。 (共同)

(筆洗)夏休みの終わり - 東京新聞(2018年8月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018083102000144.html
https://megalodon.jp/2018-0831-0917-49/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018083102000144.html

多くの小中学校で夏休みの終わりが近づき、図書館がいつもの年のようににぎわっていた。およそ四十日間の自由の代償ともいえる宿題と最後まで格闘する子も多いはずだ。
作家安岡章太郎にも格闘の経験がある。小学生の時、夏休みの最終日まで宿題に手を付けなかった。白紙の宿題帳を見た母は驚きと怒りで<お前、死になさい、お母さんも死にます>と口走った(『まぼろしの川』)。そこから母子による宿題との闘いが始まる。
でたらめな答えを二人で書き込み続けた。<その夜のことを、私は一生忘れまい>。作家は初めての徹夜に大人になったような興奮も覚えた。話は傑作の短編小説『宿題』にもなる。
夏休みの終わりと手付かずの宿題。文学に昇華可能なテーマだろう。ネット上での宿題代行の出品をめぐり、文部科学省が規制に乗り出したというニュース。読書感想文なる商品が定着していたことに加え、格闘しないという選択肢が普通になっていたのに驚く。
時間を受験勉強にあてるという言い分には考え込んでしまうが、正面突破は悪くない。本や自然との出合いが宿題にはあった。苦しみが鮮明な大人としてはそう言いたくもなる。
世の中は解決に代行不可能な問題ばかりである。例の障害者雇用率の水増し問題。省庁は、再発防止に正面から取り組まないといけない。大人の宿題も思う夏休みの終わりだ。

児童虐待が13万件超える 救出と共にケアの拡充も - 毎日新聞(2018年8月31日)

https://mainichi.jp/articles/20180831/ddm/005/070/025000c
http://archive.today/2018.08.31-001657/https://mainichi.jp/articles/20180831/ddm/005/070/025000c

2017年度に児童相談所が対応した虐待は13万3778件(速報値)で、過去最多を更新した。統計を始めた1990年度から27年連続の増加だ。
政府は緊急対策として、児童相談所で働く児童福祉司を22年度までに約2000人増員し、子どもの安全が確認できない場合には強制的な立ち入り調査をルール化することなどを打ち出している。
虐待防止や救出に努めるのは当然だ。同時に子どものケアや安心できる環境の確保も急ぐべきである。
厚生労働省の別の調査では、虐待で病院に1カ月以上入院した子どものうち、治療が終わっても退院できなかった子が年間63人に上ったという。受け入れ施設に空きがないことが主な理由だ。治療後も1年以上病院内にとどまっていた子もいる。
親との接触を避けるため、病院から出られないケースも多く、子どもの発育にマイナスの影響を与えることが指摘されている。
一方、児童養護施設は集団生活によるストレスもあって子ども同士の暴力や性的虐待が各地で起きている。虐待された子が保護された施設でさらに傷つけられる、という事態は早急に改善すべきである。
厚労省は施設よりも家庭的な環境の中で傷ついた子どもの養育を進める方針を掲げている。里親の登録者数も増えている。そうした流れは評価したい。だが、子どもが被虐待のトラウマから暴力や暴言をすることがあり、里親が育てきれなくなって施設に戻る子も少なくない。
本来は委託する側の児童相談所に里親や養親を支援する責務があるが、人手不足で十分な活動ができていないのが実情だ。せっかく里親や養親となってもうまくいかず、児童相談所はますます委託するのに慎重になるという悪循環を生んでいる。
17年度の虐待対応の中では、配偶者への暴力で子どもがストレスを受ける「面前DV」などの心理的虐待が全体の54%を占めた。子どもの心に深い傷を残し、さまざまな問題行動を引き起こす原因とされる。
児童相談所と養護施設や里親が連携し、傷ついた子を手厚くケアできる居場所を拡充していかねばならない。専門職の増員も含め、政府による一層の支援が必要だ。

宝塚市 「難病児、養護学校が合う」 発言の教育委員辞職 - 毎日新聞(2018年8月31日)


https://mainichi.jp/articles/20180831/k00/00m/040/179000c
http://archive.today/2018.08.31-001857/https://mainichi.jp/articles/20180831/k00/00m/040/179000c

兵庫県宝塚市教育委員の男性(72)が市内の公立小学校を訪問した際、難病で人工呼吸器を利用しながら通学する4年生女児(9)の母親らに「養護学校の方が合っているんじゃないの」と発言していたことが分かった。周囲の児童が女児を通して思いやりの心を学んでいるとの説明を受けると「みんな優しいんやね。中には『来んとって』という学校もあるからね」と述べた。一連の発言について市教委は「差別」と認定、委員は辞職した。
障害者差別解消法が2013年に制定されたのを受け、文部科学省は、子供の就学先について、障害の種類で振り分ける「分離別学」を改め、「保護者の意向を最大限尊重する」と通知している。
女児は全身の筋力が低下する脊髄(せきずい)性筋萎縮症を患い、人工呼吸器を手放せず、たん吸引などの医療的ケアが必要。
女児は幼稚園の友達らと一緒の学校に行きたいと訴え、両親も同様に希望したが、市の就学指導では「養護学校が適当」と判定された。その後、両親が小学校に看護師を配置するよう市長に直接要望するなど、市側と交渉を続けた結果、15年に同市で初めて看護師を配置した小学校に入学した。
元委員は6月1日、小学校が地域に向けて開いたオープンスクールを訪問。教室で女児が看護師のケアを受けている様子に「大変やねえ。環境も整っている養護学校の方が合っているんじゃないの」と話した。母親が「本人がこの学校に行きたいと言っているので」と答えると、元委員は「本人はそうかもしれないけど周りが大変でしょう」と発言した。 市教委の聞き取りに、元委員は発言をほぼ認め「安全面で養護学校の方がより良い対応が可能ではないかと思い、発言した」と釈明。「ご家族の心情を傷つけたことに対して申し訳ない」と謝罪し、先月25日、辞表を提出。26日受理された。2010年から委員を務め、2期目だった。
市総合教育会議の議事録によると、元委員は昨年12月の会議で、「障害の度合いに合わせて、教育委員会からも養護学校に通学した方が子どものためになるということを強く指導していかないと、普通学校にいる先生の負担も増える」と発言していた。
市教委は今月1日の教育委員会協議会で「一連の言動は、(障害の有無で区別しない)インクルーシブ教育に対する理解が不十分で配慮に欠けた差別発言だ」との結論をまとめた。【桜井由紀治】

もんじゅ廃炉 長く険しい道を着実に - 朝日新聞(2018年8月31日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13658038.html
http://archive.today/2018.08.31-002246/https://www.asahi.com/articles/DA3S13658038.html

日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅで、核燃料の取り出しが始まった。
これから30年にわたる廃炉作業の本格的な一歩である。長く険しい道のりを、着実に進んでいかねばならない。
もんじゅはウランとプルトニウムをまぜたMOX燃料を使い、水の代わりに液体ナトリウムで冷却されている。20年あまりの間ほとんど動かず、16年末に廃炉が決まった。
廃炉の作業は、燃料を取り出しつつナトリウムを抜き、機器類を撤去した後、建物を解体するという流れで進む。高速炉の廃炉は海外でも米英仏などで10例ほどしかない。慎重に作業を進めてもらいたい。
プルトニウムは原爆の材料にもなる。核拡散の面で不要な懸念をもたれぬよう、燃料の取り出しに当たっては、国際原子力機関IAEA)との情報共有を心がけることが大切だ。
計画では22年度までに、炉心と炉外貯蔵槽に残る530体の燃料をナトリウムの中から取り出して洗浄し、水を張ったプールに移すことになっている。
ナトリウムは不透明で、取り出す際、中の燃料を目視することはできない。もんじゅでプールまで移した燃料は過去に2体だけで、作業の経験者は10人ほどだという。
8年前の試験運転では、燃料交換装置が炉内に落下するトラブルがあった。今回も各種の装置の不具合が相次ぎ、7月下旬の予定だった作業開始が1カ月も遅れた。今後も念には念を入れた点検が欠かせない。
燃料の取り出し以外も気を抜けない。ナトリウムは水や空気に触れると激しく反応する性質があり、95年のナトリウム漏れの際には火災が起きた。放射能を帯びたナトリウムは、特に慎重に扱う必要がある。
原子力機構は過去にさまざまなトラブルを起こし、安全意識の低さや気の緩みが批判されてきた。もんじゅと同時に東海再処理施設の廃止作業も70年かけて進める。長い期間、緊張感と士気を保たねばならない。
もんじゅにはすでに1兆1千億円が投入され、廃炉には少なくとも3750億円がかかる。これらの大部分は税金だ。トラブルやミスで廃炉費用が大きく膨らむようでは困る。
普通の原発廃炉と同様の難問が待ち受けていることも忘れてはならない。取り出した燃料やナトリウム、解体で出てくる各種の放射性廃棄物の処分法はまだ決まっていない。政府は問題を先送りにせず、解決に取り組むべきである。

(学校の安全)学びの環境整備を急げ - 沖縄タイムズ(2018年8月31日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/306990
https://megalodon.jp/2018-0831-0921-42/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/306990

文部科学省が実施した全国の公立小中学校の耐震化調査によると、県内では1597棟のうち138棟で、震度6強の揺れに耐えられないことが明らかになった。
文科省が年1回実施する校舎や体育館などの耐震化を調べたもので、沖縄の耐震化率は91・4%だった。前年より1・4ポイント改善したが、全国平均は99・2%で、沖縄は全国で最も低く、耐震化の取り組みの遅れが目立った。震度6強以上で倒壊の危険性が高い建物も19棟あった。
全国にある未耐震化の建物は978棟で、うち約14%の建物が沖縄にあることになる。24市町村にまたがり、最も多いのは那覇市の45棟で、全国の市町村でも3番目に多かった。大きな揺れを伴う地震が発生してからでは、取り返しがつかないことになりかねない。同市を含む各自治体では、児童・生徒の安全を最優先にし、耐震化を急ぐべきである。
文科省によると、全国の未耐震化の建物について、学校統廃合などを予定しているため、耐震改修に踏み切れないケースが多いという。
県内でも同様の理由での耐震化の遅れがある一方で、塩分濃度の高い海砂が使われた建物の老朽化という要因もある。そのため耐震化には改築を優先する傾向があり、耐震補強で完了できる県外との差につながった。
「予算が確保できない」「危機意識が薄く、取り組みが遅れた」との理由を挙げた自治体もあった。悠長に構えてはいられない。万全な学習環境整備に尽くしてほしい。

■    ■

学校の安全では、ブロック塀の安全性も懸念されている。6月の大阪府北部地震で学校のブロック塀が倒れ、小学4年生の女児が死亡したことが契機となった。
教育委員会が県内公立幼稚園や小中高校、特別支援学校のブロック塀を調査した。塀のある438校のうち68・5%に当たる300校の917カ所で、建築基準法に適合しないとみられる塀があった。ひび割れなどの劣化が確認されたのは322校、954カ所あった。
県教委は今後、補強や取り壊しの必要性を判断するため、詳しい調査をするという。建築基準法不適合の塀がある学校が最も多かった那覇市では、幼稚園、小中学校のブロック塀を全部撤去し、フェンスなどに変更する方針を固め、事業費を予算化する。
他の自治体でも対策に乗り出す動きもあり、安全策は今後も追求してもらいたい。

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県民の間には、地震津波被害への現実感が乏しいと言われてきた。しかし、政府の予測では、沖縄で強い揺れの地震が起こる確率は決して低くない。大阪北部地震のような震度6弱地震は、いつ起こってもおかしくない。
実際、石垣島沖を震源地とする1771年4月の「明和の大津波」では、八重山宮古で約1万2千人が犠牲になったといわれる。地震津波へ備えは意識しておきたい。
学校の安全、子どもを守るための課題を洗い出し、念には念を入れて安全対策を講じていく必要がある。

「ヤンキー」消えた…夜の定時制高校は今 まるで大学?けど給食あり - withnews(2018年8月15日)

https://withnews.jp/article/f0180815000qq000000000000000W07z10401qq000017745A

夜間定時制高校。10年ほど前に高校生だった記者の時代には、少しやんちゃな生徒が行くようなイメージがありました。それよりも昔は、だいぶ荒れていたという話も聞きます。全国的に夜間の定時制が縮小する傾向にありますが、そういえば現在はどうなっているのか。ちょっと怖い、と思いながら何度か通った福井の定時制高校はイメージと全く違いました。どちらかというと大学に近く、自由でのんびりした感じ。生徒たちとおいしく食べた給食を中心に定時制高校での半年ほどの取材を振り返ります。全日制だけでなく、定時制も進路の良い選択肢ではないでしょうか。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)

荒れていた人たちは?

取材をしたのは、記者が2018年の春まで赴任していた福井県。募集を停止する学校が相次ぎ、県内で募集を続けるのは1校だけになっています。2017年春ごろから半年近く取材をさせてもらいました。
テレビ朝日系の「アメトーーク!」では、2017年9月に「定時制高校芸人」が放映されていましたが、その中を見てもヤンキーっぽい芸人は皆無でした。
いつも高校に行くと教頭先生が案内してくれました。教頭によると、この高校には定時制通信制があります。そして、定時制は午前・午後・夜間の三つのコースに分かれています。基本は4年で卒業できるようにカリキュラムが組まれているそうです。
夜間に話を絞ると、ここ数年の入学者数は1桁。人数は少ないです。また、取材当時の最年長は22歳でした。これもイメージと違い、若い人が多い高校でした。
一方、経済的な理由や社会勉強の観点からアルバイトが推奨されていて、働きながら学ぶ生徒は8割強に上るなど、昔の役割も維持しています。
中学時代に対人関係がうまくいかずに、不登校だった生徒も多いといいます。
教頭は30年ほど前に新卒で勤務したのが定時制でした。「昔は体を張って生徒に対応することもありました。けれど、久しぶりに戻ってきた定時制は穏やかな感じになっています」
担任の教諭は「働きながら学ぶ生徒にとって役割はますます大きなものになります。人が多いところが苦手という子にも夜間は必要な存在です」と強調しました。

教師と生徒が一緒に給食

話を聞いたのは夜間の3年生たち(当時)。語ってくれた場所は主に食堂です。食堂では、学年関係なく食べます。グループで食べている子がほとんどで、大学の学食と変わりません。変わるのは教師陣も同じテーブルで食べていることでしょうか。
授業は午後5時55分に始まり、9時5分まで。授業の前に給食の時間が設けられているのも、夜間ならではです。1食350円。ある日のメニューはチャーハン、ギョーザ、カボチャのスープ、牛乳などが並びました。これがおいしい。その場で調理したできたてを大量に食べることができます。誰かが持ってきた野菜の漬物が提供されることも。
高校やめ「出て行け」怒鳴られた

生徒はどのような子たちがいるのでしょうか。

3年生の中でも一目置かれていたのが、おしゃれな茶髪の中尾圭佑さん(22)です。中学校を卒業した後、全日制の高校に進学しました。けれど、夢中になったのは勉強よりも遊ぶこと。授業に出るには出ましたが、日に日に出るのがしんどくなっていき…。16歳のとき、冬休みが明けた1月に、勢いにまかせて高校を退学しました。

「出て行け」。母親に退学を伝えた瞬間、怒鳴られたといいます。このまま家で暮らすには家賃を払わなければならず、遊ぶのにもお金はかかる。ということで仕方なく職を探しました。

入学前の評判は悪い…でも

見つけたのは家の近くのスーパーマーケット。その年の3月から、アルバイトとして働き始めました。朝から一日中働く日々。久しぶりにやりがいを感じたといいます。そして、仕事を2年ほど続けた努力が認められ、別の店舗に異動するのを機に、正社員になるように社長から勧められました。
そのとき、社長が知ったのが中卒だということ。「働きながらなら、どれだけの時間がかかってもいいから高校に行かせてやる」。この社長の言葉で、もう一度高校に行こうと決めました。
19歳の秋、夜間の定時制編入。と言っても、退学した前の高校での在籍は1年にも満たなかったため、単位はゼロからのスタートでした。
「散々遊んだツケが回ってきた。(前の高校で)単位を取っておくという頭はなかったです」
退学という同じ失敗は繰り返せません。通信制ではなく定時制を選んだのは、学校に行くように自分を仕向けるためでした。
入学前、高校の評判をインターネットで検索してみました。すると、「夜間に来る人はガラが悪い」と決していい評判ではありませんでした。ですが、入ってみると拍子抜けするほど落ち着いていました。「コミュニケーションが苦手な子もいるが、色んな子を受け入れる土壌があるんだと思いました」

午前7時から仕事は「慣れ」

仕事は午前7時にスーパーに出勤していました。青果部門を担当し、商品の仕入れやカット野菜への加工、陳列も全部自分でやっていました。接客もするし、市場からの電話も受けるなど何でも屋です。
午後5時ごろに仕事を終えたら、急いで登校し、給食を食べます。授業を終え、家に帰るのは午後9時半に。なかなか自由に使える時間はありません。
「慣れですよね。慣れると大したことはない」。大人びた表情を見せてくれます。
スーパーが休みの日は、趣味の魚釣りに行きます。自分でさばき、刺し身に。腕前は店で出してもおかしくないほどのレベルまで上達しました。部活動の卓球も大好きで、いくら仕事で疲れていても参加すると決めています。

全日制との違いは?

前に通っていた全日制高校と変わったことは何でしょうか。「行かされるのと、自分で決めて行くのは違いますから。今はさぼろうにも、さぼれません」と笑います。
家賃や食費として最低月2万円を家に入れています。しかし、学費を払ってくれているのは母親。「これは出世払いで返します」
今の学校生活に特に問題は感じていません。「夜間は人が少ないので寂しい」。たまにそう思うくらいです。
自分より年下の生徒と接すると、言動に「常識ないな」と感じることもあります。ですが、よく考えれば自分も前の高校では同じでした。だから気付いたことがあれば、その都度伝えています。
授業は出席者が少なければ、教員と2人きりになることもあります。大人数ではない分、無理して授業が進むこともありません。「先生は授業での態度もしっかりと見てくれます」
取材時は、卒業後にやりたいことをじっくり考えているところでした。

全国で減る夜間定時制

夜間定時制が減っているのは福井だけの話ではありません。
東京都教育委員会によると、都立高校4校の夜間定時制課程廃止を盛り込んだ計画を2016年2月に決定しました。担当者は「不登校の生徒や高校中退者向けのチャレンジスクールの増設などで(減った部分を)対応します」と話しています。
愛知県では、私立の豊川高校で夜間定時制が2017年に88年の歴史に幕を下ろし、私立高校から夜間定時制がなくなりました。
夜間の定時制に特有の給食をやめる動きも出ています。千葉県教委は2017年11月、18年度から県内17校で全面廃止する案を発表しました。担当者は「働きながら学ぶ生徒が多かった時代と比べて、ライフスタイルが多様化しています。食事の方法を自らが選択できるようにしていきたいです」と説明しています。
次回は、現在の定時制に多い海外出身や不登校だった生徒との思い出を語れればと考えています。