(大弦小弦)タイトルには少々どきっとさせられる… - 沖縄タイムズ(2018年5月23日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/256013
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タイトルには少々どきっとさせられる。第71回カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した是枝裕和監督の「万引き家族」。善悪が入り交じるような雰囲気が興味を引く

▼都会の片隅で、祖母の年金を頼りに暮らす「家族」の物語という。足りない分は万引で生計をつなぐ一家の日常。是枝監督の大きなテーマは「目をそむけてしまいがちの人々をどう可視化するか」だ

▼これまでもさまざまな家族の形を描いている。1988年に起きた巣鴨子ども置き去り事件を題材にした「誰も知らない」(2004年)は、育児放棄によって、社会に気付かれない子どもたちの姿を描いた

▼衝撃的な内容だが、映画化で社会に潜む問題を突きつけられた。だが、虐待の実態は後を絶たない。明らかなのは日常には気付きにくく、見えづらい問題が隣り合わせていること。気付いても目をそらしたくなる現実があること

▼「万引き家族」の製作も、年金不正受給事件がきっかけだったという。ただ、「裁く」ことだけに目を向けず、いびつながらも肩を寄せ合う家族のあり方や格差、貧困問題など社会全体を問う

▼是枝監督は映画のメッセージは「受け取る側が決めることなんじゃないかと思う」と言う。最高賞作品が映し出すのは、紛れもなく私たちが暮らす場所。直視することで家族の意味を考えたい。(赤嶺由紀子)