自民党の「9条加憲」論議 空文化を狙っていないか - 毎日新聞(2017年5月27日)

https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/005/070/071000c
http://archive.is/2017.05.26-234825/https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/005/070/071000c

自民党憲法改正推進本部の体制を見直し、自衛隊の存在を明記する「9条加憲」へ動き始めた。年内に自民党案をまとめるという。
私たちは、戦争放棄を定めた9条1項と戦力不保持を定めた同2項を維持したまま、自衛隊の保持を明文化するという安倍晋三首相の提起をすべて否定はしていない。
しかし、自民党内で取りざたされる条文案を聞くと、加憲の意図に疑念を覚えざるを得ない。
首相に近い党幹部は「9条の2」を新設する案に言及している。それが「前条の規定にかかわらず、自衛隊を設置する」「前条の規定は自衛隊の設置を妨げない」などの表現であれば、自衛隊は9条1、2項の制約を受けないとの解釈につながる。
そうした意図を裏付けるような考え方が昨年の参院選後、右派団体「日本会議」の中から出ている。
日本会議の有力メンバーで、首相のブレーンとされる伊藤哲夫日本政策研究センター代表は同センターの機関誌(昨年9月号)で、9条に第3項を加えて「前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない」とする加憲案を提起した。
国際法に基づく自衛権には集団的自衛権も含まれる。この案の狙いは9条の制約外しにあるのではないか。機関誌(昨年11月号)には「自衛隊を明記した第3項を加えて2項を空文化させるべきである」との主張まで掲載されている。これでは9条の堅持どころか全否定になる。
自衛隊を合憲とする政府の憲法解釈は、自国を防衛するための武力行使を合憲とした1954年の政府統一見解で確立している。
他国への攻撃を自国への攻撃とみなして防衛するのが集団的自衛権だ。その行使については、自衛のための必要最小限度を超えるとして、政府は長く違憲と解釈してきた。
安倍政権は2014年にこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定的な行使を可能とする閣議決定を行った。9条加憲の狙いが集団的自衛権の制約を解くことにあるのだとすれば、9条の空文化であり、再び国論を二分するだけだ。
自民党は条文案の検討に入る前に9条加憲の目的を明確化すべきだ。議論の順番を間違えている。

(政界地獄耳)「前川を否定」=官邸人事の失敗 - 日刊スポーツ(2017年5月27日)

http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1830341.html
http://archive.is/2017.05.27-005528/http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1830341.html

文科省の事務方トップを務めた前文科事務次官前川喜平。一連のメディアでの発言や記者会見で、官邸の圧力が中央官庁を覆うさまの一端を暴露した。日本の政治には建前と本音があるといわれる。また官邸の意向という、見えない命令系統が中央官庁を縛ることもあるだろう。前川は「まっとうな行政の方針に戻すことができなかった私の責任は大きい。おわびしたい」「職員は気の毒だ。十分な根拠なく規制緩和され、本来、赤信号を青信号にさせられた」。
★前川が“本物”と認めた文書を官房長官菅義偉は「怪文書」との位置付けを変えておらず、「地位に恋々としがみつき、最終的にお辞めになった方」と断じた。また前川の一連の発言に対しては、「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」と批判した。
★しかし、各府省の審議官級以上の幹部約600人の人事異動を管理する「内閣人事局」が官邸の中にできたことで、首相や官房長官主導で幹部人事が決定することは、官僚が幹部になればなるほど官邸の“顔色”を見たり、忖度(そんたく)する力が要求されることと同じ。また官邸の意向に逆らうことは人事の敗北を意味する。その人事権を駆使して権力を掌握する官房長官が、「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」ということには違和感がある。また前川を任命したのは官邸ということを考えれば、前川を否定することは官邸人事の失敗に他ならない。
★官僚は国のために尽くすのであって、官邸の家来ではない。今回の前川の“反乱”は、中央官庁職員にいくばくかの動揺を与えただろう。無論、ここぞとばかり官邸にご注進して、すり寄る官僚もいるだろう。だが分かったことは、内閣人事局制度が、官邸に権力を集中させた問題の中心にあるということだ。(K)※敬称略

(余録)「おれも力が抜け果てた… - 毎日新聞(2017年5月27日)

https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/001/070/173000c
http://archive.is/2017.05.27-011504/https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/001/070/173000c

「おれも力が抜け果てた。これではもう酒ばかりのんで死ぬだろう」。これは鬼平(おにへい)こと長谷川平蔵(はせがわへいぞう)が一向に昇進できぬ塩漬け人事を嘆息した言葉だ。このグチ、時の老中、松平定信(まつだいらさだのぶ)にひそかに報告されている。
「よしの冊子(ぞうし)」とは定信が家臣の隠密から集めた幕府の役人らの動静や風聞、世相一般の極秘記録である。なかには収賄などの情報や醜聞もあるが、摘発が主な目的ではなく、情報は政治的に利用されて定信の権力を裏側から支えた。
もしや今も似たような冊子があるのか。「総理のご意向」文書は実在すると語った前文部科学事務次官の奇怪な醜聞だ。その出会い系バー通いが新聞で唐突(とうとつ)に報じられると、当人はすでに昨秋首相官邸から注意されていたと明かした。
その官邸は文書をろくに調べる気配も見せずに官房長官怪文書扱いし、来歴を明かした前次官を口をきわめて攻撃した。文書の信頼性を否定したいのだろうが、そうまですれば逆に「なぜ?」との疑問をばらまいているようである。
そもそも政策決定がゆがめられた疑惑に対し、文書が「ない」やら「確認できない」のがありえない。役所の文書主義は意思決定の合理性・公平性を担保(たんぽ)する大原則で、今ではデータ保管に場所は要らず、削除後も多くは復元できる。
どんな怪しい意思決定も余人が後日検証できる策がなく、役人は政権中枢の意向のそんたくに必死で、逆らう役人は弱みを握られて葬られる……念のため言い添えるが、「よしの冊子」の時代のことである。

岡山・加計学園 獣医学部新設手続き「早く」 首相補佐官、前次官に要求 昨秋 - 毎日新聞(2017年5月27日)

https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/001/100/186000c
http://archive.is/2017.05.26-233119/https://mainichi.jp/articles/20170527/ddm/001/100/186000c

安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計(かけ)学園(岡山市)が国家戦略特区で獣医学部を新設する計画について、文部科学省前川喜平事務次官が在職中の昨年秋、首相補佐官に呼ばれて開学の手続きを急ぐよう働きかけられたと省内に伝えていたことが関係者の話で分かった。開学を巡っては内閣府文科省に「総理のご意向」と伝えたことを記録したとされる文書の存在が明らかになっているが、同時期に、首相周辺からも同省に迅速な対応を求めていた可能性が浮上した。
関係者によると、前川氏は昨年秋ごろ、官邸の和泉洋人首相補佐官に呼ばれて、特区での獣医学部の新設について協議。文科省は2003年3月に「獣医学部の新設は認めない」との告示を出していたことから新設に慎重な姿勢を示していたことを踏まえ、和泉氏は告示改正の手続きに向けて「(大学を所管する)高等教育局に早くしてもらいたい」と要求したという。前川氏は「(文科)大臣が判断されること」と明言を避けたとされる。こうした経緯は前川氏から文科省の複数の幹部に伝えられた。
一方、松野博一文科相は文書の存在が発覚した17日の衆院文部科学委員会で「官邸、首相から直接の指示があったのかということであれば、指示は全くない」と官邸側の働きかけを否定し食い違いを見せている。
文科省の告示は今年1月に「国家戦略特区で18年4月に開校できる1校に限り認可する」との例外規定を加えて改正された。
前川氏は25日の記者会見で、「文書は真正なもの」と証言。文科省に「総理のご意向」と伝えたとされる内閣府の藤原豊審議官は18日の衆院農林水産委員会で「内閣府として『総理のご意向』などと申し上げたことはない」と否定している。
和泉氏は13年1月、首相補佐官に就任。「地方創生」担当を務める。和泉氏は前川氏への要求について「面会については記録が残っておらず、確認できません」と文書で回答した。【杉本修作】

■ことば

獣医学部新設の規制緩和

政府の国家戦略特区諮問会議は2016年11月、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」との規制緩和を決めた。当時、京都産業大京都市)も学部新設を希望していたが、大阪府内に獣医師養成課程を設ける大学があり、京産大側は「『広域的に存在しない地域』と限定されると関西圏では難しい」として断念。一方、加計学園愛媛県今治市で新設を計画。四国には獣医学部がなく、同学園は17年1月、獣医学部を設置する事業者として認定された。

加計学園 「個人PC調べれば…」文科省調査に強まる疑念 - 毎日新聞(2017年5月26日)

https://mainichi.jp/articles/20170527/k00/00m/040/175000c
http://archive.is/2017.05.26-142903/https://mainichi.jp/articles/20170527/k00/00m/040/175000c

事務次官「文書は本物」受け野党から「不十分な調査だ」
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計(かけ)学園(岡山市)が獣医学部を新設する計画で、内閣府文部科学省に「総理のご意向」などと早期開学を促したことを記録したとされる文書を巡り、「存在を確認できなかった」とする文科省の調査を疑問視する声が強まっている。前川喜平事務次官が「文書は本物」と断言したことを受け、26日の衆院文部科学委員会で野党は「不十分な調査だ」と批判した。
「海に行ってコイが釣れない、『だからコイはいない』という論理だ」。文科省は問題の文書を行政文書とは認めていない。にもかかわらず、調査の対象を実質的に行政文書に限定していることを、社民党の吉川元氏は委員会で皮肉った。
文科省は高等教育局の幹部ら7人に一連の文書を示して作成・共有したかを聞き取ったほかは、担当部署の職員がパソコン(PC)で利用できる共有フォルダー内に絞って調査を実施。文科省の義本博司総括審議官は吉川氏に「共有フォルダーに入ったものは行政文書と認識している」と答弁し、行政文書しか調べていないことを認めている。
吉川氏は文科省天下りあっせん問題の調査を引き合いに出し、「職員間の引き継ぎメモは行政文書以外から出てきた。個人(PC)のフォルダーを調べるべきだ」と主張した。
一方で、専門家からは一連の文書は個人的メモではなく行政文書に該当するとの指摘が出ている。公文書管理法は職員が職務上作成し、組織的に用いるものと定義。前川氏は25日、担当課から報告を受けた際に見た文書と同じで幹部間で「共有していた」と述べており、NPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「前川氏の言う通りなら行政文書。日付や作成者の氏名が書かれていなくても関係がない」と指摘する。
ただ、「ファイルに残し、保存期間を決めるなどの行政文書としての管理をしていなかったとみられ、情報公開請求しても出ないだろう」と推測する。【伊澤拓也、青島顕】

加計学園問題 国民に真実を知らせよ - 東京新聞(2017年5月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017052702000157.html
http://archive.is/2017.05.27-011333/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017052702000157.html

学校法人加計学園獣医学部新設には、安倍晋三首相の意向が働いたのか。文部科学省前川喜平前次官はそう記載された文書の存在を認めた。政府と国会は、国民に真実を知らせねばならない。
加計学園の理事長は、安倍首相の友人が務めている。その系列大学の獣医学部を国家戦略特区に新設する計画に絡み、「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などと記された文書の存在が明るみに出た。
先日、前川氏は記者会見し、内閣府から文科省に伝えられたことを示すその記録文書について「確実に存在していた」と証言した。
昨年九月から十月にかけて、獣医学部新設を担当する文科省専門教育課から受け取り、幹部間で共有したと説明した。「あったものをなかったことにはできない」と述べ、文書の信ぴょう性をかたくなに否定する政権を批判した。
「公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられたと認識している」とさえ語っている。
国家戦略特区制度を隠れみのにして、加計学園への利益誘導を強いられた。言外にそうした重大な疑義を差しはさんだ形である。
当時の事務方トップの身を賭しての実名証言は極めて重く、文書の存在は裏づけられた。前川氏は、国会での証人喚問の機会があれば応じるという。国民の疑問に対して、政府と国会は事実をつまびらかにする責務がある。
二年前に閣議決定された日本再興戦略では、生命科学などの新分野の獣医師が求められ、既存の獣医学部では間に合わない場合に限り、獣医師の需要の動きを考えて新設を検討するとなっていた。
にもかかわらず、どんな獣医師がどの程度必要なのか見通しすら示されないまま、加計学園を前提とした「暗黙の共通理解」のもとで物事が運んだという。前川氏はそうした経緯を証言している。
天下りあっせん問題の責任を取り、辞職した前川氏について、菅義偉官房長官は「地位に恋々としがみついていた」と攻撃し、記録文書を「怪文書」扱いしている。卑劣なレッテル貼りによる問題のすり替えというほかない。
松野博一文科相は、職員七人への聞き取りとパソコンの共有フォルダーの調査だけで文書の存在を否定した。再調査を拒み、明らかに幕引きを図ろうとしている。
森友学園問題に続き、真相を隠ぺいしようとするような政権の姿勢は、国民感覚から懸け離れ、政治不信を深めるばかりである。

特区担当入る庁舎、記者の入館を許可制に 内閣府 - 朝日新聞(2017年5月27日)

http://www.asahi.com/articles/ASK5R4RZZK5RUTFK007.html
http://archive.is/2017.05.27-004359/http://www.asahi.com/articles/ASK5R4RZZK5RUTFK007.html

内閣府地方創生推進事務局などが入る永田町合同庁舎について、内閣府が4月10日から、取材記者の入館を許可制に変更している。同事務局は、安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園岡山市)の獣医学部新設を認めた国家戦略特区を担当しており、取材規制に専門家から疑問の声が出ている。
この庁舎はこれまで、官庁や国会を取材する記者が持つ国会記者証があれば許可なしで庁舎内に立ち入ることができた。だが、4月10日以降、庁舎入り口の警備員が取材部署に約束の有無を確認し、ない場合は入館を認めない対応に改めた。対応の変更は週刊誌などが加計学園の問題について「第2の森友疑惑」などと報じ始めた後。事務局は「取材攻勢が原因ではない」と説明し、「記者を含めいろんな人が来るので、いま一度管理を徹底しようと考えた」としている。
安倍政権のもとでは、経産省が庁内執務室を施錠している。瀬川至朗・早稲田大大学院教授(ジャーナリズム論)は「政府が都合のいい記者にだけ取材に応じる可能性もある。特区の問題での情報漏れを念頭にやっているのではないのか。ルールを厳しくするなら、理由を示すべきだ」と指摘する。(関根慎一)

玄海原発仮処分申し立て 来月判断へ 佐賀地裁 - NHKニュース(2017年5月26日)


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170526/k10010996361000.html
http://archive.is/2017.05.27-004607/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170526/k10010996361000.html

佐賀県にある玄海原子力発電所3号機と4号機の再稼働を認めないよう住民が求めた仮処分の申し立てについて、佐賀地方裁判所は来月13日に判断を示すことになりました。
佐賀県にある玄海原発3号機と4号機の再稼働に反対する佐賀や福岡などの住民は、平成23年、再稼働を認めないよう求める仮処分を申し立て、これまでに「大地震によって重大な事故が起きるおそれがある」などと主張しました。

これに対し、九州電力は「想定される最大の地震の大きさを合理的に算出し、原発の安全性は確保されている」などと反論していました。

佐賀地方裁判所は、双方の意見を聞く手続きをことし1月に終え、来月13日に判断を示すことになりました。

玄海原発3号機と4号機は、ことし1月、原子力規制委員会の新しい規制基準に合格したあと、地元玄海町に続いて、先月には佐賀県の山口知事も再稼働に同意し、残る検査などが終わったうえでことしの秋以降に再稼働する見通しです。

仮処分の決定はすぐに効力が生じることがあり、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。