(政界地獄耳)「前川を否定」=官邸人事の失敗 - 日刊スポーツ(2017年5月27日)

http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1830341.html
http://archive.is/2017.05.27-005528/http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1830341.html

文科省の事務方トップを務めた前文科事務次官前川喜平。一連のメディアでの発言や記者会見で、官邸の圧力が中央官庁を覆うさまの一端を暴露した。日本の政治には建前と本音があるといわれる。また官邸の意向という、見えない命令系統が中央官庁を縛ることもあるだろう。前川は「まっとうな行政の方針に戻すことができなかった私の責任は大きい。おわびしたい」「職員は気の毒だ。十分な根拠なく規制緩和され、本来、赤信号を青信号にさせられた」。
★前川が“本物”と認めた文書を官房長官菅義偉は「怪文書」との位置付けを変えておらず、「地位に恋々としがみつき、最終的にお辞めになった方」と断じた。また前川の一連の発言に対しては、「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」と批判した。
★しかし、各府省の審議官級以上の幹部約600人の人事異動を管理する「内閣人事局」が官邸の中にできたことで、首相や官房長官主導で幹部人事が決定することは、官僚が幹部になればなるほど官邸の“顔色”を見たり、忖度(そんたく)する力が要求されることと同じ。また官邸の意向に逆らうことは人事の敗北を意味する。その人事権を駆使して権力を掌握する官房長官が、「自身が責任者の時に、そういう事実があったら堂々と言うべきではなかったか」ということには違和感がある。また前川を任命したのは官邸ということを考えれば、前川を否定することは官邸人事の失敗に他ならない。
★官僚は国のために尽くすのであって、官邸の家来ではない。今回の前川の“反乱”は、中央官庁職員にいくばくかの動揺を与えただろう。無論、ここぞとばかり官邸にご注進して、すり寄る官僚もいるだろう。だが分かったことは、内閣人事局制度が、官邸に権力を集中させた問題の中心にあるということだ。(K)※敬称略