受け継ぐのは私たち(上) 亡き祖父の記憶を伝えたい:栃木 - 東京新聞(2015年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150820/CK2015082002000184.html
http://megalodon.jp/2015-0822-0902-55/www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150820/CK2015082002000184.html

大野さん自身が題材になり、絵本となった「少年とハト」という作品がある。市街地の宇都宮二荒山(ふたあらやま)神社の近くで育った少年と、幼少期の「遊び仲間」だった神社のハトとのエピソードが描かれている。
自分の手に乗ってくるハトの足の感触を、大野さんはよく覚えている。だが、戦争の激化とともに餌をやる人は減り、徐々にハトもいなくなった。食糧難の時代、神社に戻ったハトを捕らえる人もいた。いつからか、ハトは決して手に乗らなくなった。
言葉こそ語らないが、ハトは身をもって、戦争の忌まわしい記憶を語り継いでいるように見える。「身近な生活に目を向けて、勉強していくことが大切」。大野さんはそう助言した。
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戦争を直接知らない私たちだけど、戦争を知り、語り継ぎたい。そう決意した県内の若者たちがいる。戦後七十年の夏、戦災の記憶とともに生きてきた人々と、将来を担う若者たちとの交流を通して、世代を超えて共鳴する平和への思いに迫った。
<少年とハト> 宇都宮市在住で元小学校教員の絵本作家、小板橋武さんが制作。宇都宮空襲を描いた3部作の最初の絵本「宇都宮大空襲」を出した2007年夏、絵本を題材にした紙芝居を披露するため、市内で開催された「宇都宮空襲展」を訪れた際、語り部の大野さんから聞いた少年時代の体験談を10年に絵本化した。市内の一部の小中学校で蔵書にもなっている。

受け継ぐのは私たち(中) 抑留の記憶を埋もれさせぬ:栃木 - 東京新聞(2015年8月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150821/CK2015082102000191.html
http://megalodon.jp/2015-0822-0857-41/www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150821/CK2015082102000191.html

開拓を志し、故郷の長野県から旧満州中国東北部)へ渡った今村さんは、現地でロシア語を学んだ。終戦後、ソ連軍に中央アジアへ連行されたが、語学力を武器に、一部のソ連兵や地元住民と心を通わせていたという希少な体験を持つ。
抑留中、今村さんは収容所のソ連兵から日本人捕虜を侮辱されたことに腹を立て、取っ組み合いのけんかをしたことがあった。激高した兵士に射殺されそうになった時、ロシア系の女性看護師が「私には捕虜の健康を守る義務がある」と叫んで二人の間に立ちはだかり、一命を取り留めた。
「彼女が収容所に赴任してきた時、私が馬車で迎えにいったのが縁で、言葉を交わす仲になった。危険を顧みず助けてくれたんだ」
捕虜の中には重労働に倒れる人がいた一方、余った材木で三味線を作って弾いたり、仲間同士で短歌を詠み合ったり、帰国までの日々を前向きに過ごそうとする機運もあった。そんな回想の数々を、味方さんは身を乗り出して聞き入った。
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カザフスタンでの日本人抑留> 1945年8月上旬、ソ連軍は旧満州樺太に侵攻。60万人超の日本人が捕虜としてソ連や周辺国に連行され、強制労働などに従事させられた。当時、ソ連を構成する国の一つだったカザフスタンには約5万8900人が抑留され、約1500人が死亡したとされる。

今も続く満蒙開拓団の歴史 残留邦人2世ら夜間中学に40人 - 東京新聞(2015年8月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015082102000262.html
http://megalodon.jp/2015-0822-0829-24/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015082102000262.html

東京都内の夜間中学校では、満蒙(まんもう)開拓団として中国に渡り、戦後すぐに帰国がかなわなかった人やその二世ら四十人が現在も学ぶ。そうした生徒と交流する夜間中学の教員有志が、中国残留邦人をテーマにした映画の上映会を企画し、二十三日に都内で開く。「歴史に翻弄(ほんろう)されながらも懸命に学ぶ彼らの背景を多くの人に知ってほしい」と来場を呼びかけている。 (皆川剛)
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上映作品は、旧満州に渡りシベリア抑留後、中国残留孤児の肉親捜しに奔走した僧侶・山本慈昭(じしょう)さんの半生を描いた「望郷の鐘」(一四年、山田火砂子(ひさこ)監督)。新宿区の大久保地域センターで、二十三日午後二時と四時の二回。資料代千二百円。問い合わせは、中川さん=電090(2412)8853=へ。

満蒙開拓団 1932年、現在の中国東北部に建国された「満州国」に日本から入植した民間人。ソ連の侵攻を防ぐ国防の役割を担わされ、昭和恐慌で疲弊した農村を中心に計27万人が移住した。45年8月のソ連軍侵攻と敗戦の混乱の中で軍に置き去りにされ、飢えや集団自決などで8万人が死亡。多くの残留邦人を生んだ。