衆院沖縄3区補選 政権に問う3連敗の重み - 毎日新聞(2019年4月22日)

https://mainichi.jp/articles/20190422/ddm/005/070/029000c
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辺野古埋め立てを既成事実化して住民のあきらめムードを作り出す。そんな戦術が全く通用しないことを、政権はどう考えているのか。
衆院沖縄3区の補欠選挙で米軍普天間飛行場辺野古移設に反対する野党系無所属の屋良朝博(やらともひろ)氏が、自民党公認の島尻安伊子(しまじりあいこ)氏を大差で破り、初当選を果たした。
玉城デニー氏の知事選出馬に伴う補選だった。沖縄3区は辺野古のある名護市など沖縄本島北部をエリアとする。2014、17年の衆院選自民党候補を破った玉城氏の後を継ぎ、移設反対派が議席を守った。
この半年余りを振り返れば、昨年9月の知事選、今年2月の県民投票に続き「辺野古ノー」の民意が三たび示されたことになる。
安倍政権としては、沖縄の民意を無視する形で埋め立ての土砂投入に踏み切った上での3連敗である。
選挙戦の構図は昨年の知事選と同じく、野党勢力が一致して支援する「オール沖縄」陣営と、自民、公明の与党に日本維新の会が協力する「自公維」陣営との対決だった。
知事選で自公維は辺野古問題への言及を避ける戦術をとり「争点隠し」と批判された。その際、経済や福祉などさまざまなテーマが争点だと主張したのが菅義偉官房長官だ。
今回の補選で島尻氏は、辺野古移設容認をあえて明言して敗れた。もはや論点をずらして結果をぼやかしたり、特殊な地域事情と片付けたりするようなことは許されない。
島尻氏は参院議員を2期、沖縄・北方担当相も務めた知名度がありながら、全く及ばなかった。安倍政権がこの結果を真摯(しんし)に受け止めないなら、選挙という民主的手続きが何の意味もないことになる。
自民党内には沖縄3区の負けを織り込み済みと強がる空気があった。第2次安倍政権以降の国政選挙で自民党は沖縄で敗北が続いても全国的には勝利を重ねてきたからだ。
その結果、政権運営に支障さえなければ沖縄の民意は軽んじても構わないという、倒錯した意識が生まれてはいないだろうか。
政府の正統性は国民に由来する。権力行使の正統性も時々の選挙によってチェックされる。安倍政権は直ちに工事を中止し、沖縄の民意と向き合うべきだ。

 

衆院補選屋良氏当選 新基地断念しか道はない - 琉球新報(2019年4月22日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-906835.html
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昨年9月の県知事選、今年2月の県民投票に続いて、名護市辺野古の新基地建設に反対する民意が示された。
21日に投開票された衆院沖縄3区の補欠選挙で、フリージャーナリストの屋良朝博氏(56)=無所属=が元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)=自民公認、公明、維新推薦=を大差で下し、初当選したのである。
今回の選挙は、玉城デニー氏の知事選出馬で生じた欠員を埋めるもので、屋良氏は玉城氏の後継候補だった。
最大の争点である米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設に対し、屋良氏は反対、島尻氏は容認する姿勢を表明し選挙戦に臨んだ。
名護市を含む沖縄3区で屋良氏が当選したことは、新基地に反対する有権者の切実な思いの表れと言えよう。
政府は選挙結果を尊重し、新基地建設を速やかに断念すべきだ。ここまで再三再四、民意が示されている以上、県内移設を伴わない普天間飛行場の返還に大きくかじを切る以外に道はない。
昨年の県知事選で自民、公明などが推した候補者は、辺野古移設を推進する安倍政権の全面的な支援を受けながらも、その是非について最後まで言及しなかった。
今回、島尻氏が新基地建設への旗幟(きし)を鮮明にしたのは、政治家として当然の態度である。政権側の候補が賛否を明らかにしなかった最近の事例を考慮すると、ようやく正常な形で選挙戦が行われたことになる。
屋良氏は「普天間飛行場は米軍の運用を変えるだけで辺野古の海を壊さなくても返還可能だ」などと選挙戦で訴えてきた。
辺野古の埋め立て中止と普天間飛行場の即時運用停止のほか、日米地位協定が定める施設管理権の日本への移管、基地の立ち入り権などを定めた基地使用協定の締結などを掲げている。
基地問題以外では、離島県沖縄の不利性を補う輸送コストの低減、北部を走る路面電車(LRT)構想の提起、北部の医療体制の充実、児童保育の拡充などを公約した。
有権者に約束したこれらの政策課題の実現に向けて全力を挙げることは、屋良氏に課された使命だ。
県選出・在住国会議員は衆院7人、参院3人の10人となり、屋良氏を含む5人が「オール沖縄」系である。玉城知事を支持しない国会議員は自民、維新の5人。このうち4人は比例代表選出であり、沖縄の有権者から直接信任を得ているわけではない。
国会議員の構成を見ても辺野古新基地建設に反対する民意が大勢を占めていることは明らかだ。駄目押しとなる屋良氏の当選だった。政府は今度こそ沖縄の民意に沿った判断をすべきだ。
選挙結果は玉城知事に対する信任とも言える。自信を持って政府との交渉に当たってほしい。

 

[衆院補選 屋良氏が当選]政権のおごりの結果だ - 沖縄タイムス(2019年4月22日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/411800
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まるで昨年の知事選を再現したような選挙だった。
衆院3区の補欠選挙は「オール沖縄」勢力が推すフリージャーナリストの屋良朝博氏(56)が初当選を果たした。
オール沖縄」勢力は、急逝した翁長雄志前知事から玉城デニー知事へのバトンタッチに成功し、玉城氏が知事に転じたことで実施された補選にも勝利し、県内における政治基盤を固めたことになる。
屋良氏は新聞記者として長く基地問題に取り組んできた。しかし政治経験はなく、一般的にはほとんど無名。知名度不足や組織体制の不備は明らかだった。
相手候補の島尻安伊子氏(54)は沖縄北方担当相まで経験し、国政与党が全面的にバックアップ。菅義偉官房長官が来県し支援を訴えたほか、3区14市町村のうち13市町村長が支持するなど強大な組織力を誇った。
一騎打ちの戦いで、屋良氏が勝利を収めた要因は何か。
昨年の知事選を含めこれまでの選挙と決定的に違ったのは、島尻氏が米軍普天間飛行場辺野古移設について「容認」の姿勢を鮮明に打ち出したことだ。
有権者は「新基地ノー」「辺野古埋め立てノー」の意思を明確にしたのである。
選挙期間中、本紙などが実施した調査で、安倍政権の基地問題への姿勢を「評価しない」と答えた人が68%にも上った。
選挙結果は、2月の県民投票で辺野古埋め立てへの「反対」が投票者の7割超に達したにもかかわらず、政府が工事を続行したことへの抗議の意思表示でもある。

    ■    ■

昨年の知事選がそうであったように、今回の選挙も「新しい政治の始まり」を予感させるものがあった。
新基地建設を巡る屋良氏の主張は、海兵隊の運用見直しによる「辺野古不要の普天間返還プラン」だ。
単に反対を訴えるのではなく、辺野古とは異なる選択肢という新たなアプローチで無党派層を含む有権者の幅広い支持を得た。
振興策についても、政府とのパイプを強調する島尻氏に対し、屋良氏は県を通さず市町村に直接交付する補助金創設など国の関与の強まりを問題視した。
一方、島尻氏の敗因は無党派層に支持が広がらなかったことにある。子どもの貧困対策に直接タッチしてきた実績を打ち出したが浸透せず、辺野古を巡る過去の言動のマイナスイメージも付いて回った。

    ■    ■

補選の結果、沖縄選挙区は衆院議席参院議席のうち5議席が、新基地に反対する議員で占められることになる。
安倍政権は、一連の選挙で示された「沖縄の民意」に真摯(しんし)に向き合うべきである。
日米両政府は19日、ワシントンで開かれた安全保障協議委員会(2プラス2)で「辺野古が唯一の解決策」だと再確認したという。沖縄社会に楔(くさび)を打ち込むための「恫喝(どうかつ)」というほかない。
辺野古問題は、県との話し合いの中からしか解決の道を見いだすことはできない。

 

木村草太の憲法の新手(102) 夫婦別姓訴訟(下) 同姓のみ婚姻許すのは不平等 個人の選択を不当に区別 - 沖縄タイムス(2019年4月21日)

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[大弦小弦]69歳から49歳へ… - 沖縄タイムス(2019年4月22日)

 

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/411805
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69歳から49歳へ、公的に20歳若返ることを求めて裁判を起こした男性がオランダにいる。医師も「体年齢」は45歳だと言ってくれるのに、仕事や恋愛で実年齢を言うと差別される、と主張した

▼結果は敗訴。裁判所は「生年月日の修正を認めると誕生、死亡、結婚など、20年分の記録が消失する。法的、社会的に多くの問題が出る」と認めなかった

▼普通はそうだと思う。しかし、沖縄は普通ではなかった。戦争で本島住民の戸籍がほぼ丸ごと焼失した。戦後、一から戸籍を作り直す時も照合すべき資料がなく、生年月日は住民の申告通りに認められた

▼名護市の外間政吉さん(85)の誕生日は戸籍上、10月10日。実際は5月生まれらしい。戦後、学校に通うため生年月日が必要になったが、母は子だくさんで記憶があいまいだった

▼そこで、10・10空襲の日を届けた。母も同じ誕生日にした。本部町の市街地が炎上する様子を山中の実家から目撃し、脳裏に刻んでいた。外間さんは「空襲は沖縄戦の始まり。生涯忘れない日になった」と話す

沖縄戦は多数の人命を奪い、自然を破壊した。それだけではなく、人々が生きた記録を燃やし、歴史を奪った。この世に存在したことも戦没したことも、公的に証明できない人がたくさん出た。74年前の今ごろ、中部や伊江島が戦火に包まれていた。(阿部岳)

 

文科省の「教科担任」構想 小学校にも変化の大波が - 毎日新聞(2019年4月21日)

https://mainichi.jp/articles/20190421/ddm/005/070/049000c
http://archive.today/2019.04.21-002012/https://mainichi.jp/articles/20190421/ddm/005/070/049000c

文部科学相が小中高校の教育のあり方の総合的な見直しを中央教育審議会に諮問した。
柱となるのは小学5、6年生の授業での「教科担任制」の拡大だ。教員が専門の教科について複数のクラスを受け持つ仕組みで、今も音楽や理科などで実施されているが、一部にとどまっていた。
拡大の背景にあるのは教育改革だ。来年度から英語が正式教科となり、プログラミングも必修化されるなど、小学校でも専門的な指導による教育の質の確保が求められる。
同時に、専門性の高い英語などの授業準備に教員が時間を取られ、過重労働が指摘される中で負担がさらに増えることも懸念されている。
クラス担任が全教科を教える学級担任制が基本の小学校で、教科担任制の拡大を検討するのは、こうした事情がある。ただし、そのためには解決すべき課題も多い。
まず、専門教育を行える教員の確保だ。英語やプログラミングなどに精通した小学校教員をどう養成するのか。教員免許の仕組み、採用や研修の方法などを、この拡大に合わせて考えていく必要がある。
また、少子化に伴い増えている小規模校では、教員の数が少なく、教科担任制への対応は難しいことも指摘せねばなるまい。
小中学校を一つに統合した「義務教育学校」の設置が2016年4月から認められており、こうした小中一貫化の推進で対応を図る考え方もある。だが、現在は小学校教員と中学校教員の免許状は異なる。
都市の大規模校だけ教科担任制を推進すると、結果的に町村部との教育格差を拡大しかねない。人口減少が加速する中で、小学校の統廃合をどう進めていくかなど、総合的なビジョン作りが欠かせないはずだ。
教科担任制を広げた場合、クラス担任が児童の総合的な能力・特徴をつかみにくくなるのではないか、との指摘もある。
それでも、少子化などの社会の変化を踏まえ、小学校でも教育改革の大きな流れを受け止めていかざるを得ないだろう。
中教審は来年末に答申を取りまとめる予定だ。課題を整理し、議論を尽くしたうえで、小学校教育の将来像を構築していくべきだ。

 

教科担任制 大変革への予感と懸念 - 朝日新聞(2019年4月21日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13986326.html
http://archive.today/2019.04.21-002400/https://www.asahi.com/articles/DA3S13986326.html

学級担任が全教科を教えるのは小学4年生までにして、5年生からは、中学のように各教科を専門教員が指導する「教科担任制」を導入するには、どんな準備や手当てが必要か――。
文部科学相の諮問を受けて、中央教育審議会で議論が始まることになった。ひとりの先生が小学校と中学の両方で教えられるように、教員免許の制度も見直したいという。
戦後スタートした6・3制の大変革につながる可能性がある。「小中の枠を取り払い、9年間の一貫教育にしたほうが合理的だ」という意見も出てこよう。来年末の答申をめざすとしており、目が離せない審議になりそうだ。
諮問の背景にある問題意識はこうだ。
人工知能などの技術革新や国際化の進展で、子どもたちが学ぶべきことは増え、求められる水準も高くなった。一方で教員の繁忙ぶりが社会問題になっている。大幅増員して負担を減らせればいいが、財政事情は厳しく、到底期待できない。
そんな難題に対する一つの答えが、教科担任制といえる。
専門の先生に教えてもらえるのは子どもたちも歓迎だろう。典型は英語だ。来年度から必修になるが、小学校の教員の多くは指導法を学んできていない。中学の力を借りられれば人材不足の解消につながる。理数系科目の指導も同様だ。小学校の教員就職者は8割が文科系の教育専攻で、苦手意識をもつ人が多いといわれてきた。
小学校の学級担任の忙しさは改めて指摘するまでもない。給食の時間も子どもを見守る仕事がある。他の先生が引き受けてくれる教科が増えれば、心身に余裕が生まれるだろう。
ただし良いことずくめではない。予想される負の側面にも目を向けなければならない。
例えば、他教科の内容と関連づけて指導する横断的な授業はしにくくなる。終日顔をあわせなくなることで、子の異変に気づくのが遅れるリスクも考えられる。いじめなどの発見に支障を来さぬよう、教員同士の連携を密にするとともに、放課後に遊びや生活の場を提供する学童保育NPOとの協力関係についても議論するべきだ。
必要な数の先生を確保できるのか。校舎は小中一緒の方が便利だが、そうした環境がない場合はどうするか。学校の統廃合に踏みきるとしたら、通学の足をどうやって確保するか。
そうした状況は自治体によってさまざまで、解決しなければならない課題もおのずと違う。地域の事情に応じて適切な措置がとれるよう、中教審には目配りのきいた検討を求めたい。

 

外国人労働者 共生の保障はあるか - 東京新聞(2019年4月20日)

 

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019042002000153.html
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外国人労働者を拡大する新制度が始まった。新組織である出入国在留管理庁も発足した。外国人への賃金不払いや長時間労働など人権侵害が問題となっただけに共生の保障はあるかと問いたい。
「特定技能」と呼ばれる在留資格が創設されるのが、新制度の目玉であろう。今後五年間で最大約三十四万五千人にのぼる外国人労働者の受け入れを想定している。
業務にあたる法務省の入国管理局を「庁」に格上げした。出入国在留管理庁である。出入国審査などのほか、在留外国人の生活支援なども行うことになっている。
既に各国で日本語能力などの試験が始まり、やがて大勢の外国人が入国することになろう。ただ、福島第一原発廃炉作業に就く予定であることも判明した。受け入れ業種の「建設」「電気」などに該当すると判断したからだ。
廃炉作業にはむろん被ばくの恐れがあり、線量管理などが欠かせない。日本人作業員との意思疎通も不可欠だ。「慢性的に人手不足。喉から手が出るほど労働者がほしい」という現場だ。しかし、語学力の壁などで事故が起きる危険もまたある。外国人を使い捨てにするような仕組みではいけない。
そんな懸念が生じるのは、外国人技能実習生の悲劇があるからだ。失踪した実習生五千二百十八人に関する調査結果を法務省は公表している。二〇一二~一七年に事故や病気などで実習生百七十一人が死亡している。足場からの転落などの事故死が二十八人、レジャーなど実習外の事故死が五十三人、病死が五十九人、自殺が十七人、殺人や傷害致死による死亡が九人などだった。
つまり新制度に盛り込まれている外国人労働者への支援構築が適切でないと、悲劇の二の舞いになる恐れもあるのだ。
必要なのは法務省など関係する役所が外国人労働者の支援や保護、受け入れ企業の監督の強化を図ることだ。一定技能が必要な「特定技能1号」には、かなりの技能実習生が移行するとみられる。
相談窓口設置や送り出し国との協力態勢など課題はなお残っている。人手不足解消の労働力としてのみ期待するなら人権侵害は続きかねない。外国人労働者の人権を重く見て、その保障がなされなければならない。
法案成立から四カ月弱。準備不足の感があるままスタートした。目指すべきは共生社会である。悲劇の連鎖だけは避けたい。

 

集まらない福祉職 この仕事の大切さ共有を - 毎日新聞(2019年4月20日)

https://mainichi.jp/articles/20190420/ddm/005/070/114000c
http://archive.today/2019.04.20-003323/https://mainichi.jp/articles/20190420/ddm/005/070/114000c

介護施設や障害者のグループホームを新築したが、職員がいないため半分の居室を閉めている。どれだけ職員を募集しても応募者が来ない。そんな悲鳴が各地で上がっている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は発症後2~5年で全身の筋肉が動かなくなる深刻な神経難病だ。最近は人工呼吸器や胃ろうの管を付けて生きる患者がメディアで紹介されるようになり、発症しても生きる希望を持つ人が増えてきた。
ところが、身体介助やコミュニケーションができるヘルパーが足りないため、人工呼吸器の装着を断念する人が相次いでいる。家族の負担が増えることへの懸念からでもある。
兄弟姉妹の数が以前より少なく、親の介護をひとりで背負う現役世代は多い。子どもの育児や障害のある親族の介助も含めて「ダブルケア」の状態の人もいる。
介護のために仕事を辞める人は年間10万人に上る。職を失うことで収入はなくなり、企業活動にも悪影響が出る。その経済損失は6500億円というのが経済産業省の試算だ。このままでは「介護離職」は増え、各企業は貴重な中堅・ベテラン社員を失うことになるだろう。
厚生労働省の推計によると、医療福祉分野で働く人は2018年は823万人だったのが、25年には930万人、40年には1070万人が必要となる。
同省は健康寿命を延ばすこと、人工知能(AI)などによる省力化に力を入れている。高齢になっても健康で働くことができれば、介護の必要な人は減り、逆に働き手は増えることになる。
同省によると健康寿命が現在より3年以上延び、AIの導入が進めば、40年ごろの必要な医療福祉職は926万~963万人へと圧縮できるという。それでも、まだ100万~120万人が足りない。
政府が取り組んでいる外国人労働者の受け入れ拡大策で、介護は重要な分野の一つだ。5年で最大6万人の受け入れを計画しているが、それだけでは到底カバーできない。
福祉の仕事の意義や魅力を伝える教育が必要だ。待遇改善にも努め、負のイメージを一掃しなければならない。政府はあらゆる政策を動員して福祉職の確保を急ぐべきだ。

 

空自F35A墜落 欠陥あれば調達見直しを - 琉球新報(2019年4月20日)

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航空自衛隊三沢基地の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが9日に青森県沖の太平洋に墜落してから10日余が経過した。依然として原因は明らかになっていない。機体の欠陥、人為的ミスのいずれかに起因するとみられる。
航空自衛隊は事故後、同型機の飛行を停止した。万一、陸上に落ちていれば大惨事を引き起こすところだ。自衛隊員の命を守るためにも、機体の欠陥による事故でないことがはっきりするまでは、飛行停止を継続する必要がある。
消息を絶ったのは、操縦士の3等空佐が「訓練中止」と無線で連絡してから1分後のことだ。緊急時に座席ごと飛び出しパラシュートで降下する脱出装置があるが、使用された形跡はないという。
行方不明の操縦士は総飛行時間が約3200時間のベテランだ。F35Aでは約60時間だという。経験豊富なパイロットでも致命的なミスを犯すことがあるのか。機体に問題がないとすれば体調に異変が生じた可能性もあるだろう。
墜落したとみられる海域は水深が1500メートルもある。位置を特定し、機体を引き揚げるには相当な困難が予想される。だからといって諦めるわけにはいかない。事故機を回収し、フライトレコーダーを解析しなければ、原因を解明できないからだ。
F35はレーダーで捉えにくいステルス性に優れ、政府が次期主力戦闘機と位置付けている。短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bと合わせ、計147機を米国から購入する方針だ。取得価格は1機約116億円(2018年度の契約ベース)に達する。
安全性が確認されないまま、導入することがあってはならない。機体の欠陥が明らかになった場合は、調達計画を根本から見直すべきだ。
F35を巡っては、米政府監査院(GAO)が昨年、966件の技術的問題が見つかったと指摘していた。これらの欠陥のうち111件は安全性や重要な性能を危険にさらす問題だという。
空軍仕様のF35Aは、これまでに13機が三沢基地に配備された。このうち事故機を含む5機は、計7回、国内を飛行中に不具合が発生し、緊急着陸している。墜落との関連性はないのだろうか。
F35は対外有償軍事援助(FMS)を利用して購入する。米国の見積額に基づく前払いが特徴だ。取得額はほぼ米国の「言い値」とみられる。
昨年11月末の日米首脳会談の際、トランプ米大統領が記者団の前で「日本は『米国から数多くのF35を購入する』と約束してくれた。感謝を表したい」と述べ、安倍晋三首相との協議の中身を暴露したことは記憶に新しい。米大統領の求めに応じた「爆買い」との批判も根強い。
防衛費を押し上げる高額な新装備の導入には疑問がある。まして欠陥を抱えた可能性があるものに莫大(ばくだい)な国費を投じることは許されない。

 

<金口木舌>生活者の視点で - 琉球新報(2019年4月20日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-905925.html
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小林多喜二の小説「蟹工船」は、洋上でカニを捕り、船内で加工する労働者の物語である。長時間働かされ、体調不良でも休めない。貧しさなどから労働者は過酷な環境から抜け出せない

総務省が2012~17年に事故や病気などで171人の外国人技能実習生が死亡したと3月に発表した。死因は事故死、病死が多いが、自殺もあった。過酷な労働環境も一因にあるだろう。「蟹工船」を想起する
少子高齢化に伴う深刻な人手不足を理由とし、外国人労働者が増え続けている。沖縄労働局によると、18年10月末現在の外国人労働者は8138人に上り、ネパール人が1998人で最多、ベトナム人が1186人と続く。宿泊業・飲食サービス業、卸売業・小売業で働く人が多い
▼4月1日に改正入管難民法が施行された。技術移転が目的の「外国人技能実習生」と留学生のアルバイトに制限していた就労を単純労働にまで幅広く門戸を開く
▼さらに増える見込みだが、外国人相談窓口の設置、生活支援などの制度は十分ではない。言語や文化の違いも壁になるだろう。雇用の場でも弱い立場に置かれやすい
▼結婚し子どもが生まれても、ふるさとから家族を呼び寄せても、セーフティーネットは十分ではない。さまざまな職種で働く外国人を見かけるたびに心配になる。外国人は単なる「労働力」ではない。一緒に暮らす生活者である。

 

「すわ、衆参ダブル選か」 永田町騒然の萩生田氏『消費税増税延期論』 有本香氏「過剰反応に『政界の劣化』感じた」 - zakdesk(2019年4月19日)

 

www.zakzak.co.jp

自民党萩生田光一幹事長代行による「消費税増税の延期論」が、永田町内外を激震させている。消費税率10%への引き上げ判断は、安倍晋三首相による衆院解散のタイミングや、自民党総裁4選をめぐる動向にも影響を与えるためだ。この発言を引き出したのは、インターネット番組「真相深入り! 虎ノ門ニュース」のコメンテーターで、夕刊フジで人気コラム「以毒制毒」(毎週木曜)を連載するジャーナリストの有本香氏だった。