集まらない福祉職 この仕事の大切さ共有を - 毎日新聞(2019年4月20日)

https://mainichi.jp/articles/20190420/ddm/005/070/114000c
http://archive.today/2019.04.20-003323/https://mainichi.jp/articles/20190420/ddm/005/070/114000c

介護施設や障害者のグループホームを新築したが、職員がいないため半分の居室を閉めている。どれだけ職員を募集しても応募者が来ない。そんな悲鳴が各地で上がっている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は発症後2~5年で全身の筋肉が動かなくなる深刻な神経難病だ。最近は人工呼吸器や胃ろうの管を付けて生きる患者がメディアで紹介されるようになり、発症しても生きる希望を持つ人が増えてきた。
ところが、身体介助やコミュニケーションができるヘルパーが足りないため、人工呼吸器の装着を断念する人が相次いでいる。家族の負担が増えることへの懸念からでもある。
兄弟姉妹の数が以前より少なく、親の介護をひとりで背負う現役世代は多い。子どもの育児や障害のある親族の介助も含めて「ダブルケア」の状態の人もいる。
介護のために仕事を辞める人は年間10万人に上る。職を失うことで収入はなくなり、企業活動にも悪影響が出る。その経済損失は6500億円というのが経済産業省の試算だ。このままでは「介護離職」は増え、各企業は貴重な中堅・ベテラン社員を失うことになるだろう。
厚生労働省の推計によると、医療福祉分野で働く人は2018年は823万人だったのが、25年には930万人、40年には1070万人が必要となる。
同省は健康寿命を延ばすこと、人工知能(AI)などによる省力化に力を入れている。高齢になっても健康で働くことができれば、介護の必要な人は減り、逆に働き手は増えることになる。
同省によると健康寿命が現在より3年以上延び、AIの導入が進めば、40年ごろの必要な医療福祉職は926万~963万人へと圧縮できるという。それでも、まだ100万~120万人が足りない。
政府が取り組んでいる外国人労働者の受け入れ拡大策で、介護は重要な分野の一つだ。5年で最大6万人の受け入れを計画しているが、それだけでは到底カバーできない。
福祉の仕事の意義や魅力を伝える教育が必要だ。待遇改善にも努め、負のイメージを一掃しなければならない。政府はあらゆる政策を動員して福祉職の確保を急ぐべきだ。