外国人労働者 共生の保障はあるか - 東京新聞(2019年4月20日)

 

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外国人労働者を拡大する新制度が始まった。新組織である出入国在留管理庁も発足した。外国人への賃金不払いや長時間労働など人権侵害が問題となっただけに共生の保障はあるかと問いたい。
「特定技能」と呼ばれる在留資格が創設されるのが、新制度の目玉であろう。今後五年間で最大約三十四万五千人にのぼる外国人労働者の受け入れを想定している。
業務にあたる法務省の入国管理局を「庁」に格上げした。出入国在留管理庁である。出入国審査などのほか、在留外国人の生活支援なども行うことになっている。
既に各国で日本語能力などの試験が始まり、やがて大勢の外国人が入国することになろう。ただ、福島第一原発廃炉作業に就く予定であることも判明した。受け入れ業種の「建設」「電気」などに該当すると判断したからだ。
廃炉作業にはむろん被ばくの恐れがあり、線量管理などが欠かせない。日本人作業員との意思疎通も不可欠だ。「慢性的に人手不足。喉から手が出るほど労働者がほしい」という現場だ。しかし、語学力の壁などで事故が起きる危険もまたある。外国人を使い捨てにするような仕組みではいけない。
そんな懸念が生じるのは、外国人技能実習生の悲劇があるからだ。失踪した実習生五千二百十八人に関する調査結果を法務省は公表している。二〇一二~一七年に事故や病気などで実習生百七十一人が死亡している。足場からの転落などの事故死が二十八人、レジャーなど実習外の事故死が五十三人、病死が五十九人、自殺が十七人、殺人や傷害致死による死亡が九人などだった。
つまり新制度に盛り込まれている外国人労働者への支援構築が適切でないと、悲劇の二の舞いになる恐れもあるのだ。
必要なのは法務省など関係する役所が外国人労働者の支援や保護、受け入れ企業の監督の強化を図ることだ。一定技能が必要な「特定技能1号」には、かなりの技能実習生が移行するとみられる。
相談窓口設置や送り出し国との協力態勢など課題はなお残っている。人手不足解消の労働力としてのみ期待するなら人権侵害は続きかねない。外国人労働者の人権を重く見て、その保障がなされなければならない。
法案成立から四カ月弱。準備不足の感があるままスタートした。目指すべきは共生社会である。悲劇の連鎖だけは避けたい。