東京医大不正 経営効率による排除だ - 東京新聞(2018年8月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018080802000165.html
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経営効率優先のあらわな排除だ。東京医科大が得点操作で合格を抑制していたのは女子だけでなく三浪以上の受験生も対象だった。入試は大学病院で働かせやすい人を選ぶ手段ではないはずだ。
七日公表された、弁護士でつくる内部調査委員会の報告書によると、今年の入試の一次試験では、受託収賄罪で起訴された文部科学省前局長の息子を含む六人に加点していた。二次試験の小論文では全員に〇・八を掛けて減点したうえで、男子の現役受験生などに加点。女子と三浪以上の男子の合格を不正に抑制していた。贈賄罪で在宅起訴されている前理事長や前学長が主導していたという。
そこから浮かびあがるのは、教育や研究といった大学本来の責務よりも、系列病院の経営効率ありきの姿勢だ。病院の運営は、若手医師の当直や待機時間を含めた長時間労働を前提に成り立っており、年齢が上がるに従って労働時間が減ることは、厚生労働省の調査などでも明らかになっている。
出産などで労働時間が制限されたり、離職の可能性がある女子よりも男子の方が、そして年齢も若い方が、病院経営の視点から見れば望ましいという判断が働いていたと考えるのが妥当だ。
実際、大学側は三浪以上の合格を抑制した理由について、「年齢が高いと病院を短い期間で辞めて独立してしまう」などと調査委に対して説明したという。
罪深いのは大学が、女性研究者の育児と仕事の両立を支える補助金まで受けていたことだ。
調査委の弁護士は会見で「本学の体質に根差す構造的、根深い所に原因があるのではないか」「周回遅れで二、三十年遅れた発想だ」と厳しく断じた。
調査結果の報告を受け、文科省は今後、具体的な処分の検討に入るとしている。同省が大学を設置する最低基準として定めている大学設置基準には「入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適切な体制を整えて行うものとする」とある。現状では、その最低の基準すら満たしているとは言い難い。
炎暑の中、受験生は勉強に集中するのに四苦八苦していることだろう。この事態に医学部を目指す女性や浪人生活を重ねている受験生は心を痛めているはずだ。誰もが憂いなく勉強に専念できる公正な入試を担保し、二度と同様の事態が起こらぬよう、文科省はあらゆる手を尽くす責務がある。