<金口木舌>疑わしきは被告人の利益に - 琉球新報(2024年3月2日)

https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2860498.html

米国のテレビドラマで映画化もされた「12人の怒れる男」は密室劇の名作だ。殺人罪に問われた少年の有罪・無罪を決める陪審員となった12人が一つの部屋に集められ審議する

▼判決は全員一致でなければならない。有罪を示す決定的な証拠がない中、12人は議論と評決を繰り返す。最初は11対1で有罪が多数だが、次第に無罪へと傾いていく
▼市民が陪審員となる米国の裁判制度で無罪率は0・4%、制度が異なるが日本の無罪率は0・2%だ。起訴されれば、ほとんど有罪となる裁判制度の下、那覇地裁は2月に3週連続で一部無罪判決を出した
▼関連性のない、全く異なる三つの事件。判決は、検察の主張について「曖昧で抽象的」、証言を有罪の根拠とするには「信用性に疑問が残る」などと指摘した
▼「疑わしきは被告人の利益に」という基本に忠実な判決が、逆に珍しく映る。取り調べの可視化は進むが裁判員裁判対象事件などに限られる。えん罪を生まないための刑事司法制度改革は途上だ。判決文から「歩みを進めよ」という声が聞こえる。