【政界地獄耳】政倫審の数少ない意義は「野田」VS「岸田」- 日刊スポーツ(2024年3月1日)

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★この程度の政倫審のやりとりをライブは嫌だとかぐずぐず言っていた5人は、いずれも閣僚経験のある将来の首相候補を自任する面々だったと考えると、もうポスト岸田などと名乗るのは辞めていただきたい。首相・岸田文雄の政倫審出席は違和感があったものの、立憲民主党の元首相・野田佳彦とのやりとりはさすがに重みと迫力があった。既に2人は政治とカネの問題について衆院予算委員会で対決しているが、野田が予算委員会での繰り返しでは意味がないと冷静に詰めると、岸田も覚悟を決めた様に議論が推移した。

★さすがに岸田も予算委員会のようなかわし方では通用しないと感じたのだろう。首相に「22年に7回もパーティーを開いているのは異常ではないか、月に3回も東京、大阪、広島でパーティーをやるのはいかがか」と野田が問うと、当初は勉強会と抗弁していたが「もう、内閣総理大臣としては政治資金パーティーはやらないと明言できないですか」と問われ「内閣総理大臣としてパーティーを開催すること、これは今は考えておりません」と答弁。野田が「今は考えてないっていうのは、ほとぼりが冷めたらやるってことじゃないですか。やらないと言って下さい、在任中は」と畳みかけると「結果的に在任中はやることはないと考えております」との答弁まで引き出した。また、政倫審に出てこない自民党議員たちはとがめられずそのままか、政治的、道義的に処分を決める時期ではないかと問われ「党として処分をはじめとする政治責任についても判断を行っていく」と認めさせた。2人の対決は野田の圧勝だった。

党首討論のような迫力のあるやりとりはこの政倫審の数少ない意義と感じるが、首相の口から自民党の調査結果以上のものは出なかった。ただ、首相の政倫審出席で事態が動き、首相(自民党総裁)としてできる、判断、決定でイニシアチブをとった意味は自民党内でも評価せざるを得ず、鈍感力首相の火事場の底力を見せられた思いだ。岸田の賭けは吉と出たか。(K)※敬称略