<金口木舌>安心できる家庭のような社会に - (2024年1月5日)

https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2655513.html

「この家庭でなかったら、この子には違う未来があったのかもしれない」。20年余にわたり保護司を務めてきた読谷村の玉城栄子さん(74)は、支援する人の家庭環境を見て複雑な思いを抱くことがあるそうだ

▼元受刑者の社会復帰に大切なのは本人の努力だけでなく周囲の支え。だが刑務所や少年院で規則正しく生活して出所した人でも、戻る家庭の状況が悲惨な場合、孤立を深めて再犯に走ることがあるという
▼保護司になる前は、読谷高校のPTA会長を務めていた。「頑張っている親」ばかり見ていたが、保護司になって初めて「見たことのない光景」に接し、現実を知った
▼支援してきた元受刑者の多くが運転免許も持っていなかった。これでは就職のハードルも高い。生活再建ができないと再犯のリスクもある。そのため自ら経営する会社で雇用したこともあった
▼人は生まれる家庭を選べない。荒れている家庭にも背景があるだろう。だからこそ「支え合う社会」が不可欠だと玉城さんは言う。新しい年が始まった。彼女の言葉を胸に刻もう。