(天風録)PISAの読解力 - 中国新聞(2023年12月7日)

https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/394273

ジャーナリストの池上彰さんは大学でも教壇に立ち、教育にも一家言ある。3年前に出した著書で、約80カ国・地域の学力を測る学習到達度調査(PISA)で重視すべきポイントを挙げていた。読解力である。
「不条理な世の中を生き抜くために欠かせない力」との説明だ。おととい公表された昨年分の結果では、日本の高1の読解力は世界3位となり、前回15位からV字回復したのが目を引く。
そもそも読解力をどう問うのか。例えば、ある商品の安全性をPRする企業のサイトと別の見解を示した雑誌記事を比較して考えさせた。情報リテラシーが求められる今、事の真偽を読む力が本当に育っているなら頼もしい。
ただ手放しでは喜べない。コロナ禍で比較的、休校が少なかった日本のアドバンテージを指摘する声やコンピューターによる出題と解答に生徒が慣れたとの分析も。一喜一憂せず、浮かび上がった課題に向き合いたい。
学ぶ意欲の低さや伸びぬ探究心がそう。「PISAショック」という言葉がある。調査結果を受けてカリキュラムの改革が叫ばれ、その分現場にしわ寄せも。師走の文字通り、課題解決に走り回る教師の姿を生徒たちはどう読み解くか。