<金口木舌>見て見ぬふりもいつか - 東京新聞(2023年11月16日)

https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2480180.html
多様な考え方を国家が邪魔者扱いする。それを自分には関係ないと傍観しているとどうなるか。神学者で牧師のマルティン・ニーメラーが詩で伝えた

ナチス共産主義者社会民主主義者、労働組合員を次々と攻撃した。この事態を関係ないと黙って見過ごしていたら、ナチスは自身に迫ってきた。詩の結句はこう。「私のために声をあげる者はもう誰一人残っていなかった」
▼映画「ヤジと民主主義」(山﨑裕侍監督)を見た。ニーメラーの警句で始まる映画は2019年7月の安倍晋三元首相の遊説を映す。「安倍、辞めろ」。ヤジを飛ばした市民を法的根拠もなく、警官が排除した。日本はここまできた
▼映画は各地の異論排除の動きも追う。20年には国の特別機関「日本学術会議」で学者6人が任命拒否された。政府方針への露骨な異論封じと見られた
▼市民を思想や階層などで分別し、団結を妨げる。そして支配者への批判をそらす手法を分断統治という。ニーメラーが言うように、見て見ぬふりはいつか通用しない時も来る。警句がやけにリアルだ。


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