【政界地獄耳】ストで賃上げ待遇改善、米の健全な労使関係うらやましい 比べて日本では… - 日刊スポーツ(2023年11月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202311030000098.html

★全米大手自動車企業「ビッグ3」に賃上げや待遇改善などを求めて約1カ月半に及ぶストライキを行ってきた全米自動車労組UAW)は先月30日、ゼネラルモーターズGM)と新たな労働協約で暫定合意に至ったと発表。「歴史的な合意で労働者は記録的な経済的進歩を勝ち取った」とし、UAWのフェイン会長はSNSで「我々は企業に米国の大衆に、そして世界に労働者階級の闘いは終わっていないことを示した」と訴えた。スト参加者は最大5万人にまで膨らんだ。また米バイデン大統領は同日、暫定合意は「労働者が受け取るべき賃金、待遇、リスペクトを与えるもの。歴史的協定だ」と称賛した。

★この合意では生活費高騰に合わせた手当を支給し、4年半で25%賃金を引き上げる。初任給は70%増の時給30ドルとなり、派遣社員は最高で115%の賃上げとなる。交渉開始時の会社側の賃上げ提案はステランティス(旧クライスラー)が14・5%、GMとフォードが9%。これが暫定合意では全3社で25%にまで引き上げられた。24日、GMの主力組立工場1カ所での新たな約5000人の従業員のストライキがとどめとなった。同社はこれまでのストで約1200億円の損失が発生したと公表している。

アメリカでもストは十分有効な手段だということがわかるが、連合を筆頭とする日本の労組ではもうこんな闘いをすることも出来ないだろうし、ここまでの合意を会社とまとめることも出来ないだろう。2日の会見で首相・岸田文雄は「来年の春闘に向けて私が先頭に立って今年を上回る賃上げを働きかける」と胸を張ったが、来年の春闘で労組が一定の成果を上げたとしても政府と握り合った結果でしかない。連合会長・芳野友子との蜜月がそうさせたのなら労働運動も地に落ちたといえる。米国の健全な労使関係がうらやましい。(K)※敬称略