【政界地獄耳】「令和の3大バカ査定」大阪万博は日本の転換期 - 日刊スポーツ(2023年10月25日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202310250000083.html

★大型予算の議論のたびに出てくる言葉がある。1987年、12月の政府予算復活折衝で当時の大蔵省主計官・田谷廣明は税金の無駄遣いを揶揄(やゆ)した「昭和3大バカ査定」だ。「昭和の3大バカ査定といわれるものがある。それは戦艦大和、伊勢湾干拓青函トンネルだ」。「もし(87年4月に民営化したばかりのJRで)整備新幹線計画を認めれば、これらの1つに数えられるだろう」と、せっかく累積赤字解消のために分割民営化したにもかかわらず、整備新幹線に着手したら元のもくあみだという意味だ。

★当時は中曽根内閣の「増税なき財政再建」「三公社(国鉄・専売公社・電電公社)民営化」が国民から支持され、そのあとを受けた竹下内閣が発足したばかりだった。田谷は整備新幹線について竹下内閣の幹事長・安倍晋太郎が推進派、政調会長渡辺美智雄が慎重派、運輸相・石原慎太郎は新幹線より関心はリニアモーターカーと政府がまとまらないことも含めてバカ査定とけん制したのだろう。それぐらい当時の大蔵官僚は政権との距離、先見性などを兼ね備え政権に対峙(たいじ)してきたのがわかる。一方、令和の3大バカ査定とは何か。大阪万博リニア新幹線、防衛費増強か。

★転じて現在、財務省は政権の増税か減税かの駆け引きの中にある。23日の日経の社説は「大阪万博は軌道修正を柔軟に」と題し「参加国を確保するために(建設費を政府が)肩代わりするのは趣旨が違う」とした上で「完成が開幕に間に合わなかったり、参加国が減ったりするのもやむを得ない」と踏み込み「万博準備の難航は、巨大事業を完遂する国力の衰えを映し出す。官民で知恵を絞り、この苦境を乗り越えることで、令和の道標を見いだす万博にしてほしい」と国力の衰え、すなわち政官財の衰えを指摘し身の丈に合うものにしろと訴えた。日本の価値観が大きく変わろうとしている転換期を見誤るな。(K)※敬称略