【政界地獄耳】日米韓の新時代は朗報か - 日刊スポーツ(2023年5月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202305090000093.html

★韓国国民も韓国野党もわかってはいただろうが、これほどスムーズに事が運ぶとは思わなかったのではないか。4月26日、韓国・尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は国賓として米国に迎えられワシントンで米バイデン大統領と会談。米国は「1980年代初頭以来行われていない、弾道ミサイルを搭載可能な米原子力潜水艦の韓国派遣を含む、戦略資産の定期的な配備を通じて、抑止力をより可視化する」とする一方、朝鮮半島核兵器を配備しないとした。

★いわゆる米韓ワシントン宣言だが、これには幾つかのシグナルが埋め込まれていた。1つは当然ながら北朝鮮に対しての強いけん制だ。ICBMの開発、潜水艦からの核弾頭発射などが現実のものとなりつつある昨今、新たなガイドラインを米韓で結ぶ必要があることはいまだ休戦中の朝鮮半島には必要だ。まして中国の判断を仰ぐ北朝鮮は米国にとっても新たな脅威を呼ぶ。「宣言」は慎重に米韓で練られた。もうひとつは米韓の関係には日本を抜きに議論するなという米国の日韓関係の安定への期待と必然だ。そのタイミングに来たという判断だろう。

★加えて米国は日韓に対して見えない警告を発したのだろう。それは両国が持つ核開発への憧憬(しょうけい)だ。一時期日本でも「核保有の議論もしてはいけないのか」と自民党保守派の議員が騒いだことがあったが、世界では日韓両国は潜在的保有国とカウントされている。つまり作る気になれば作る技術と経済力のある国と見なされていることから、いったんナショナリズムが高揚し両国で核保有論が高まれば、東アジアは世界の火薬庫になりかねない。米国の中長期的戦略が米韓、そして今回の日韓首脳会談が実現させた。韓国与党「国民の力」の劉相凡(ユ・サンボム)首席報道官は「『歴史問題が完全に整理されなければ未来協力に向け1歩も踏み出すことができないという認識から抜け出さなければならない』」という尹大統領の言葉を引用し首相・岸田文雄の言いなりだと反発する国内世論を収めようとする。日米韓の新時代は朗報か。(K)※敬称略