<海外便り>「4.3事件」悲しき歴史の共有を 韓国・済州島 - 東京新聞(2023年5月2日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/247429

「韓国の沖縄」。そんな触れ込みで知られる韓国南部の済州島チェジュド。本土より温暖な気候に、多くの観光客が集まるリゾート地のイメージが強いが、つらい歴史を経験してきたという面も沖縄との重要な共通点だ。

「昔は罪人の流刑地で言葉も通じない未開の地。本土からは『変な外国』と映る」。韓国紙ハンギョレの記者で、済州島で30年以上取材を続ける許湖峻ホホジュンさんはそう語った。「アカ(共産主義者)の島」と軍が決め付け、罪のない多くの島民を虐殺した1948年の「4.3事件」の背景には、こうした差別意識もあったとみる。

事件当時、島民が身を隠した洞穴の一つを訪れた。大人1人がやっと通れる入り口の奥に、数十人が身をかがめて入れる空洞が広がる。ひんやりとした地下の空気を吸い、恐怖におびえる人々を想像しながら、戦争中に同じように人々が隠れた沖縄のガマを思い起こした。

軍事政権の間「4.3事件」の真相は隠され続け、今も一般に浸透しているとは言い難い。「観光は楽しみつつ、少しでも島民の痛みを知ってほしい」。訪問者に対する許さんのささやかな願いだ。(上野実輝彦)