<金口木舌>32軍壕財源は慎重に議論を - 琉球新報(2023年4月26日)

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南風原町の小高い丘に日本軍第32軍が使った沖縄陸軍病院南風原壕がある。2007年6月18日、保存状態が良かった20号壕の公開が始まった

▼この日は豪雨だった。南風原文化センター元館長の大城和喜さん(74)は式典の後、元ひめゆり学徒の本村つるさん、元軍医見習士官の長田紀春さんと並んで歩いていた。他界した2人の会話が今も心に残る
▼「あの日もそうでしたね」。本村さんの言葉に長田さんが応えた。「死者たちの涙なんでしょうね」。1945年5月下旬、陸軍病院に撤退命令が下り、動けない重傷兵らが青酸カリで自決を強いられた
▼国のため兵士の命さえも粗末にする戦争の過ちや悲惨さを伝えようと、元軍医や看護婦らが動き、町が保存公開につなげた。それから15年、県は沖縄戦を指揮した第32軍司令部壕の保存公開を進める
▼知事は国への財源要請も視野に入れる。ただ戦争体験に根ざした沖縄のこころは国策にからめとられた住民の反省と誓いでもある。32軍壕公開で国に頼ってよいか。財源論議は慎重に進めたい。