安保法廃止法案 まだ決着はついてない - 東京新聞(2016年3月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016033102000148.html
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安倍政権はなぜ安全保障関連法廃止法案の審議に応じないのか。専守防衛を転換し、憲法違反とも指摘される法律だ。国民の理解が十分得られたとも言えない。「決着」はまだ、ついていない。
自民、公明両党の幹事長らがきのう会談し、民進党に合流する前の旧民主、維新両党と共産、社民、生活の計五党が共同提出した安保関連法廃止法案の審議には応じないことを決めた。「決着のついた議論を再び蒸し返すだけ」(佐藤勉自民党国対委員長)というのが理由だという。
安保関連法は昨年、衆参両院で計二百十六時間の審議を行い、参院では野党の一部の賛成も得て成立。二十九日に施行された。
しかし、国内外で多くの犠牲を強いた先の大戦の反省から、戦後日本が貫いてきた「専守防衛」政策を転換し、他国同士の戦争に加わる集団的自衛権を行使できるようにする法律だ。
ましてや歴代内閣が長年、憲法違反だとして禁じてきた集団的自衛権の行使を一転、安倍晋三首相が、一内閣の判断で認めた新しい憲法解釈を反映したものである。
国の在り方や国民の命運を大きく左右する安全保障政策は国民の大方の理解を得ることが必要だ。成立後でも、問題点が指摘されれば、とことん審議するのは国会の役割である。審議時間が長ければいいというものではあるまい。
共同通信社が安保関連法施行直前に行った世論調査では、関連法を「評価しない」との答えがほぼ半数を占めた。首相がいくら関連法について「廃止すれば、日米の同盟の絆は大きく毀損(きそん)される」と強弁しても、国民の理解が十分に得られないことの表れだろう。
旧民主、維新両党は民進党への合流前、日本領域での事態には迅速に対応する一方、海外での自衛隊活動には歯止めをかけるため、領域警備法案など三法案を共同で提出した。廃止法案と合わせて安保関連法の対案を成すものだ。
野党には対案がないと批判し、「全体像を一括して示してほしい」と挑発していたのは首相自身である。たとえ成立の見込みがない対案でも、提出を促しながら提出されたら審議に応じないというのでは、不誠実極まりない。
安倍政権は廃止法案の審議に堂々と応じるべきだ。審議すれば安保関連法の問題点が次々と明らかになり、夏の参院選や四月の衆院補選に影響が出ることを政権は恐れている−。審議を避けるのならそう思われても仕方があるまい。