<金口木舌>沖縄は信託統治領だった? - 琉球新報(2023年3月27日)

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3月も最終週に入った。進学や就職などで、沖縄を離れる家族や友人を那覇空港で見送る人も多いだろう

▼復帰前、旅立ちの場所は那覇港だった。当時の見送り風景を収めた映像では、大勢の人で港はごった返し、船と岸壁をつなぐ紙テープがきらめいていた。東京まで船で3日。沖縄と本土は遠かった
▼今は飛行機で2時間半。価格も安くなり便数も多い。県外からの観光客や移住者も増えた。沖縄と本土は近くなったようにみえるが、果たしてそうか
▼米軍嘉手納基地と普天間飛行場の騒音被害に関する行政訴訟で、国は準備書面に「沖縄が米国の信託統治下にあった」などと記載していた。誤りである。沖縄は信託統治に置かれず、米国は国連の定期視察を受けることもなく基地を拡大した
▼1955年には国会で当時の首相が同じ誤りをした。復帰50年が過ぎても、気軽に行き来できるようになっても政府にとって沖縄は遠いままのようだ。空は今日も米軍機が飛ぶ。沖縄ファンは増え、情報も増えたのに、沖縄の現実が伝わらないのはなぜだろう。