【政界地獄耳】ジャーナリズムの最後の砦は映画になるのか - 日刊スポーツ(2023年3月14日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303140000028.html

総務省行政文書の中で当時の首相補佐官礒崎陽輔から「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」と名指しされたTBSの「サンデーモーニング」の12日の放送で、前法大総長・田中優子は「多様性を理解することができないことになる。放送法の問題だけでなく多様性が理解できないという事実がいろんなことにつながっているのではないか」と解説した。まさに「差別の意味を理解しない」など自民党の持つ価値観の不寛容さが元凶だろう。

★思えばNHKの「クローズアップ現代」キャスター・国谷裕子、TBS「NEWS23」コメンテーター・岸井成格テレビ朝日報道ステーション」キャスター・古舘伊知郎がいずれも16年3月に降板した。当時の総務相高市早苗が同年2月に政治的公平などを定めた放送法4条違反を理由に放送局へ停波を命じる可能性に言及した直後の話だ。そしてその半年前には安保法制の危険性や疑義を彼らは盛んに唱えていた。

★映画「新聞記者」などを手がけた映画製作会社スターサンズと「パンケーキを毒見する」の内山雄人監督がタッグを組んだドキュメンタリー「妖怪の孫」が17日から公開される。映画は元首相・安倍晋三の過去から母方の祖父である元首相・岸信介に至る日本の政治について考察したドキュメンタリーで、「新聞記者」などを手掛け、昨年死去した河村光庸プロデューサーの遺作でもある。祖父の教えを受け継ぐ安倍のタカ派外交政策と成果が問われる「アベノミクス」などがよく整理されて描かれているが、この「政治的公平」の問題も扱われているという意味では極めてタイムリーな公開となる。ただ、もうこの手のドキュメンタリーは放送局では「放送法」がゆがめられずとも制作できないだろう。映画が最後のジャーナリズムのとりでになるかもしれない。(K)※敬称略

 


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