【政界地獄耳】ジャッジするのは国民であるべき 総務省が電波の権限を持つ放送法自体がおかしい - 日刊スポーツ(2023年3月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303160000152.html

放送法は首相・岸田文雄の言うように歪(ゆが)められていないのか。多くの政権に厳しいコメンテーターやキャスターたちがテレビ局によって降板し、その後、表向きは政権に食い込んでいるという御用記者たちが「さっき官房長官と電話で話したんですけどね」とか「電話でのやりとりが日課と化していた。多いときは1日に複数回、取材のために電話をかけるときもあれば、安倍が情報収集や雑談するためにかけてくることもある」と月刊誌で「近さ」を披歴する者もいた。聞いた話をそのまま電波に乗せることが取材だとか報道だと勘違いする広報のような“専門記者”が政府の言い分を垂れ流し、代わりに番組を政府寄りに仕切るようになっていった。

★歪めたのは御用記者たちを出しておけば政権から咎(とが)められないと考えたテレビ局の方で、放送を歪めたのはテレビ局自身ではなかったか。そもそも総務省が電波の権限を持つことを是とする放送法自体がおかしいのではないかという議論に広がらないことが残念だ。国会は総務省の行政文書が本物か捏造(ねつぞう)かの議論だが、役所もテレビ局も自分の都合のいい解釈をしているに過ぎない。国会の承認人事をかませぬ独立組織の必要性は双方に都合が悪いのか。

★テレビ局は御用政治記者すらお払い箱にして“バズレば”どんな暴言でも「議論のきっかけとして」盛り上げてくれればいいという風潮に変わっていった。それでいて「公平」を担保するために両論併記や判断を視聴者に委ねる技法だけは守り続け放送法にかなう公平な放送を創出しているという。NHKに至っては総合テレビ、EテレBS1BSプレミアム、BS4K、BS8Kと6波も持ちながら、総務委員会どころか、予算委員会すら放送しないことも多い。お手盛りの公平と政権に寄り添う放送をジャッジするのは政治や行政でなく国民であるべきだ。(K)※敬称略