【政界地獄耳】つじつま合わない財政規律派・岸田首相の理屈 - 日刊スポーツ(2023年3月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303010000095.html

★それが少し国民の考えとは違っても元首相・安倍晋三には政治家として、長期的な視野や目標と覚悟があった。憲法改正を唱え幾つかの改正案を国民に提示、国民が乗ってこなければ「機が熟していない」とひっこめ、改めて懲りずに新たな改正案を示した。当初から長期政権を持つ覚悟の中での安倍の政治手法だったといえる。無論それが暴走したこともあったから権力をひとつにくくることはできないが、今の首相・岸田文雄のように、安倍・菅政権の積み残しの後始末が必要だといっても、展望なくいきなり案件を持ち出し、まとめようとする手法は政権が1つの仕事をまとめるということより、政権がある間に片づけてしまいたいというビジョンのない政権の焦りだ。

★首相は7日の衆院予算委員会で政府が掲げる子ども予算倍増のベースとなる基準について重ねて明示を避けた。だが15日の予算委で家族関係社会支出が20年度に「GDP比2%を実現している」とし「それをさらに倍増しようではないか」と答弁。「中身を決めずして最初から国内総生産GDP)比いくらだとか今の予算との比較でとか、数字ありきではない」と言うが、倍増を掲げたのは首相だし、その理屈は防衛費議論では数字ありきの議論だった。

★23日、自民党政調会長萩生田光一は党会合で、少子化対策をめぐり「新婚で最初に困るのは新居だ。全国の公営住宅に20万戸の空きがある。貸してあげたらいい」。児童手当の所得制限撤廃に関しては「検討の価値はあるが、1500億円の財源が必要になる。1500億円あるなら(新婚家庭が入居する公営住宅の)畳やお風呂、トイレを新しくしてあげたい」と述べた。政府与党の幹部が勝手なことを言っていても、首相は気にならないようだ。元々つじつまなど合わせる気もないのだろう。それでも財政規律派というのだからあきれる。(K)※敬称略