<金口木舌>支援を遠ざけるもの - 琉球新報(2023年1月7日)

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「どこに相談すればいいのか分からない。消えてしまいたい」。体調の悪化で働けず、困窮する60代の女性を10年余前に取材した。女性の娘はひとり親で精神的に不安定だった

▼1歳の孫は手術が必要な病気を抱えていたがお金がなかった。娘と4人の孫と共に途方に暮れていたが、支援団体の助けで生活保護を受給すると暮らしは一変した。孫は手術を受け、女性も通院して体調が改善した。支援につながり6人の命が救われた
厚生労働省によると昨年10月の生活保護申請は1万9700件で前年同月と比べ5.2%増えた。増加は6カ月連続だという。コロナ禍や物価高が一因のようだ
▼同省のホームページは「生活保護の申請は国民の権利」と相談を呼び掛ける。受給者へのバッシングや自己責任論が支援を困窮者から遠ざけている
▼冒頭の女性は生活保護に「負い目を感じる」と話していた。コロナ禍の中で今も声を上げることをためらっている人がいるかもしれない。弱者を孤立させない社会をつくる責任が、私たち一人一人にある。