<金口木舌>生活保護は生存権 - 琉球新報(2021年5月8日)

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貧困問題を取材していた頃、食料品が買えないほど困窮していても「生活保護だけは恥ずかしい」「周りに迷惑をかけたくない」という声を聞いた。助けを求められない背景に生活保護を「恥」と捉える文化があると感じた

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて解雇や雇い止めが見込まれる県内労働者は3月26日時点で1864人に上った。雇用環境は深刻さを増している
▼県内の生活保護の利用者が5カ月連続で過去最多を更新している。しかし、各福祉事務所はコロナ禍にあって「想定したほどは増えていない」と見る。生活に窮する人々が必ずしも支援に結び付いていない
生活保護の利用をためらう要因に親族への「扶養照会」がある。当事者の親族にまで支払い能力があるかどうかを尋ねる仕組み。支援者によると「知られたくない」と申請を見送る人がいる
▼2012年、芸能人の母親をめぐる生活保護の受給問題を機に「生活保護バッシング」と言える現象が起きた。自民党はこの動きに乗じるかのように衆院選挙の公約に生活保護費の給付水準の引き下げを掲げその後、実行している
菅首相の唱える「自助、共助、公助」を聞くと「まず、自分で何とか」と言われているような気がする。生活保護憲法25条で保障された生存権。今求められるのは生活に窮する人が気兼ねなく利用できるような後押しだろう。