【政界地獄耳】優先順位は総裁選よりコロナでは - 日刊スポーツ(2021年8月27日)

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★コロナ対策で「できることはすべてやる」と言っていた菅政権だが、この期に及んで政党の都合を押し通し、総裁選の日程が9月17日告示、29日投開票と決まった。今後は首相・菅義偉衆院の解散を総裁選挙の前に行うか、後にするかの攻防が続く。そもそも首相は本当に続投の意欲があるのか。25日には首相と党幹事長・二階俊博が会談した。党内を取り巻く菅・二階包囲網への対応策など党内情勢と解散した場合の党勢についてなどが話し合われたのではないかと思われる。

★首相と幹事長がすり合わせれば政局の大枠が固まったと考えられるが総裁選は来月17日。まだ時間がある。東京など21都道府県に出されている緊急事態宣言は来月12日までで、17日までに首相が解散を決めれば、否応(いやおう)なしに総裁選挙の日程は選挙後に変更される。つまり首相は解散権を使い、すべてをひっくり返す権限を持つ。ただ、コロナ禍は首相が言う「明かりははっきりと見え始めている」(25日の会見)にはほど遠い。首相の「明かり」はワクチン供給量さえ増えればとの期待と国民への希望を述べたのだろうが、ワクチン接種の状況や重症者数、病床使用率など首都圏ではしばらく厳しい状況が続くだろう。

★総裁選挙になり首相が続投しようが、新たな候補者たちが政策論争を仕掛けようが、国民は健康で安心安全な日常が取り戻せて、経済力がコロナ前水準にまで回復することだけを望んでいる。優先順位はそこにある。しかしその前に医療提供環境の改善と安定が求められる。国会も開かず党内で政策論争を叫ぶのは国民の感覚と相当な乖離(かいり)があるのではないか。そもそも党の選挙や自らの身分を決める衆院選挙は何事もなく、普通に行われる事態を異様な状態と感じない党幹部やそれを支える党員たちが黙認していることに国民は同調しかねる。何か知恵を出すなどの提案はどこからも出ないのか。(K)※敬称略